根こぶ病の主な症状や原因とは?
根こぶ病は、アブラナ科植物の根に感染し、こぶを形成して植物を枯らしてしまう病気です。この病気は主に根にこぶを作って植物が栄養や水分を吸収することを妨げるため、最終的には枯れてしまいます。
根こぶ病の原因は、根こぶ病菌という微生物です。この菌は非常に耐性が強く、土壌中で数年間生存することができます。つまり、一度感染が広がると、その圃場での根こぶ病の管理が非常に難しくなります。
さらに、この菌は周囲の圃場に広がる可能性があります。例えば、長靴に付着した土や降雨を通じて、菌が他の圃場へと移動することがあります。このため、根こぶ病が発生した圃場では、土壌や水の管理に細心の注意が必要です。
原因や発生する条件
根こぶ病菌は土壌水分と深く関係しています。特に排水が悪い圃場では土壌が湿りやすく、根こぶ病菌が増殖しやすくなるため、多く発生する傾向があります。ですので、排水が良好な圃場を維持することが重要です。
また、温度も根こぶ病の発生に影響を与えます。この病気は9℃~30℃の範囲で発生し、特に20℃~24℃の温度がもっとも発生しやすくなるとされています。この範囲内の温度が続くと、根こぶ病のリスクが高まります。
さらに、根こぶ病は長日条件下で発生しやすいという特徴があります。日が長い期間、特に1カ月間の平均日長が11.5時間を超えると、病原菌の活動が活発になります。一方、日長が11.5時間以下になると、発生が著しく減少します。
発生しやすい作物の例
根こぶ病は、特にアブラナ科の作物に発生しやすい病気です。
具体的には、以下のような作物が影響を受けやすいです。
・カブ ・白菜 ・キャベツ ・小松菜 ・水菜 |
これらの作物に根こぶ病が発生すると、根に多くのこぶができてしまいます。このこぶが原因で、根からの栄養や水分の吸収が悪くなり、作物は成長不良を起こします。根こぶ病が発生した作物は、通常よりも小さくなったり、枯れたりすることがあります。
根こぶ病とネコブセンチュウの違い
主にアブラナ科の作物に発生する根こぶ病。前述の通り、この病気の原因は根こぶ病菌で、根にコブを形成し栄養や水分の吸収が妨げられ、成長不良を起こしてしまいます。根こぶ病はアブラナ科の作物に特有の病気であり、他の科の作物には発生しません。
一方、ネコブセンチュウはナス科やウリ科の作物に発生し、ナス、トマト、ピーマン、キュウリ、メロン、スイカなどが影響を受けます。この病気の原因はネコブセンチュウという線虫で、これも根にこぶを形成します。ネコブセンチュウが根に侵入し、こぶを作ることで、植物は栄養や水分の吸収が妨げられ、結果として成長不良になります。
ネコブセンチュウに対する防除方法としては、マリーゴールドを植えると良いでしょう。マリーゴールドはネコブセンチュウを抑制する作用があり、これを利用してセンチュウの発生を減少させることができます。
根こぶ病の基本的な防除法
根こぶ病は一度発生すると被害が大きいことから、しっかり防除することが大切です。ここでは、次の八つの防除(予防)方法について解説します。
・水はけを良くする ・同じ畑で連続して栽培しない(連作しない) ・おとり作物を栽培する ・雑草を抜き、原因菌の増殖と感染を予防する ・石灰資材を用いてpHを矯正する ・農薬を使用する ・石灰窒素を使用する ・イネ科緑肥作物を活用する |
それぞれどのようなやり方か、説明していきます。
水はけを良くする
圃場の水はけを良くするために、目に見える水路や地下を通る水路を作ることが大切です。これにより、過剰な水分が圃場に滞留せず、根こぶ病菌の増殖を防ぐことができます。具体的には、畑の四隅に溝を掘り、水が自然に外に逃げるような形に整えることが有効です。
さらに、畝を高畝にすることで、根の周りの水分がたまりにくくなり、水はけが改善されます。これにより、根こぶ病菌の感染リスクを低減することができます。
また、土壌改良資材を散布することも有効です。土壌改良資材を使用することで、土壌の構造が改善され、水はけが良くなります。これにより、根こぶ病菌の増殖を抑えることができます。
さらに、最初から水はけの良い圃場を選ぶことも重要です。水はけの良い土地では、根こぶ病菌の増殖が抑えられ、感染のリスクが低くなります。
同じ畑で連続して栽培しない
特に重要なのは連作を避けることです。連作とは、同じ作物を同じ場所に繰り返し栽培することで、根こぶ病の発生リスクが高まります。そのため、連作ではなく輪作をすると良いでしょう。
輪作とは、異なる科の作物を順番に植えることで、特定の病気や害虫の発生を抑える方法です。根こぶ病はアブラナ科の作物に発生するため、アブラナ科の作物を続けて植えるのではなく、次に植える作物をアブラナ科以外のものにすることが重要です。
さらに、根こぶ病が発生した場合は、できるだけ早く感染した作物を取り除き、次に植える作物をアブラナ科以外にすることが重要です。
おとり作物を栽培する
おとり作物とは、根こぶ病に感染しても根にこぶを作らない作物のことです。例えば、エンバクや葉ダイコンなどがこれに当たります。
おとり作物を植えると、根こぶ病菌はその根に感染しますが、こぶはできません。この過程で、病原菌の数が減少します。つまり、おとり作物は病菌を「おとり」として引きつけて減らす役割を果たします。
雑草を抜き増殖と感染を予防
圃場やその周囲の雑草をしっかりと取り除くことも大切です。特にアブラナ科の雑草に注意しましょう。これらの雑草が根こぶ病菌に感染することで、病原菌が増殖し、作物に伝染するリスクが高まります。
アブラナ科の雑草を防除することで、根こぶ病菌が雑草から作物に伝染するのを防ぐことができます。これにより、圃場全体での感染拡大を抑えることが可能です。
石灰資材を用いてpHを矯正する
土壌のpHを適切に調整することも効果的です。根こぶ病菌は酸性の環境を好むため、石灰資材を使って土壌のpHを上げることが有効です。
具体的には、石灰資材を使用して土壌のpHを6.5以上に矯正します。こうすることで、酸性の環境を嫌う根こぶ病菌の活動が抑制され、病気の発生リスクが低減します。
ただし、石灰資材を使いすぎないように注意しましょう。土壌のpHを過度に上げすぎると、作物にとって害になる可能性があります。極端なpH環境では、作物の栄養吸収が妨げられ、健康な成長ができなくなってしまいます。
農薬を使用する
農薬を使って根こぶ病を防除することも大切です。栽培しているアブラナ科植物に登録のある農薬を使って、効果的に根こぶ病を防除しましょう。
オススメの農薬については、後ほど説明します。
石灰窒素を使用する
石灰窒素を使うと、土壌中に含まれる水分などと反応し、加水分解して、害虫や病気の防除に効果があります。
イネ科緑肥作物を活用する
緑肥とは、栽培した作物を収穫せずにそのまま畑にすき込むことで、次に栽培する作物の肥料とするものです。
具体的には、涼しい地域では8月にエンバクを、9月上旬から中旬まではライムギを植えるのが適しています。これらの緑肥作物を収穫せずにそのまま畑にすき込むことで、土壌が豊かになり、根こぶ病菌の増殖を抑える効果があります。
根こぶ病の治療や防除に効果的な農薬4選
根こぶ病の治療や防除にオススメの農薬を紹介します。根こぶ病に有効な農薬はたくさん流通しているので、使いやすいものを選びましょう。
フロンサイド粉剤
アブラナ科作物の根こぶ病、ジャガイモのそうか病、粉状そうか病、ネギの白絹病、レタスのビッグベイン病などさまざまな病害に効果のある薬剤です。
石灰類と一緒に使うと、根こぶ病の防除効果が高まります。
ネビジン粉剤
キャベツやブロッコリー、白菜や大根など、アブラナ科野菜の根こぶ病防除に使うことができる薬剤です。
残効性が良く、長期間効果が続くのが特徴です。また年単位で継続して使っていくと、効果がより安定します。
ネビリュウ
ネビジン粉剤と同じく、幅広いアブラナ科野菜の根こぶ病防除に使うことができる薬剤です。粉粒剤なので、粉剤より散布がしやすく、ドリフトも防止できます。
ダコニール1000
ブロッコリーの根こぶ病に使えるほか、さまざまな作物の病害に使うことのできる薬剤です。液体状なので、水で希釈して噴霧器などで吹きかけて使用します。
根こぶ病防除という点で見ると、適用作物が少ないですが、いろいろな病気の防除に使えるので、持っていると便利です。
根こぶ病は予防が大切
根こぶ病は、こぶができる場所が根であるということから発見が遅れてしまうことも少なくありません。また、一度発生すると防除が難しく、周りにも広がりやすいので、予防が大切になります。
根こぶ病は水はけの悪い圃場で多く発生するので、土壌改良や高畝にするなどして排水性を高めましょう。また、アブラナ科野菜を連作しないことは徹底しましょう。
どうしても連作したい場合は、根こぶ病に耐病性のある品種を使ったり、おとり作物を活用したりするなど工夫しましょう。
ぜひ本記事を参考にして、根こぶ病を起こさない圃場づくりに挑戦してみてください。