どの作物を重点支援するのか見えない基本法
まず改正基本法から見てみよう。農政の根幹にある法律の改正にこの連載で触れる必要があると考え、以前その内容を紹介した。そのときは、できるだけ農家に直接関係のあるテーマをと思い、輸出の振興を軸に解説した。
輸出に力を入れるのは、改正基本法で食料安全保障の確保を基本理念として位置づけたからだ。だが食料安保の大切さを言うのであれば、本来なら輸入に頼る食料、特に穀物の増産を目指すべきだろう。ところがその規定がない。
関連する項目として第17条で「食料自給率の向上」に触れているが、これは1999年にこの法律を制定した当初から掲げていた目標だ。そして四半世紀が過ぎても、自給率が低迷したままなのは誰もが知る通りだ。
自給率を高める手立ては2つある。1つは輸出。もう1つは、輸入に依存する農産物の国内での増産だ。なぜ前者を後押しする方針は改正基本法で明確にしたのに、輸入依存の是正を打ち出さなかったのだろうか。
農林水産省に問い合わせてみると、要は