和梨には赤梨と青梨がある
日本で栽培されている梨には、日本なし(和梨)、洋なし、中国なしの3種類があります。和梨の品種を大別すると「赤梨」と「青梨」があります。果皮の色が、赤梨は赤みがかっていて、青梨は黄緑色をしていることから、それぞれそのように呼ばれています。
赤梨の品種
果皮のコルク層が厚く、赤みがかった茶色をしているものを赤梨と呼びます。本章では、特におススメしたい赤梨の品種を、それぞれ詳しく解説していきます。
幸水(こうすい)
日本なしの栽培面積の約40%(平成30年産)を占める主要品種。「菊水」と「早生幸蔵(わせこうぞう)」を交雑して誕生しました。果重は300g程度で、形状はやや扁円形。肉質は緻密でやわらかく、果汁たっぷり。甘みが強く(糖度12%前後)、酸味はほとんどありません。収穫期は8月中下旬で、ハウス栽培のものは7月下旬から出回ります。産地の直売所、産直ネット通販のほか、全国的にスーパーや青果店で購入できます。
豊水(ほうすい)
日本なしの栽培面積の26%(平成30年産)を占め、幸水に次いで2番目に多く栽培されています。果重は350g~400g程度で、甘みが多く(糖度12~13%)、やや酸味も感じられ、すっきりとした後味。肉質はやわらかで、果汁も多くジュースに最適です。収穫期は8月中旬から9月ごろまで。幸水とくらべて日持ちがよい品種です。産地の直売所、産直ネット通販のほか、全国的に出荷されスーパーや青果店で購入できます。
新高(にいたか)
幸水、豊水に次いで3番目に栽培面積が多い品種です。果重は平均450~500gで、大きいもので1kgほどの大玉になり「梨の王様」とも呼ばれています。甘みが強く、酸味は少なく、肉質は硬く歯応えがあります。貯蔵性が高いことも特徴です。収穫期は9月中旬から9月下旬ですが、貯蔵したものは12月ごろまで出荷されます。産地の直売所、産直ネット通販、スーパーや青果店で購入できます。
青梨の品種
果皮のコルク層がツルツルとして黄緑色のものを「青梨」と呼んでいます。品種ごとに、それぞれの特徴を解説していきます。
二十世紀(にじゅっせいき)
明治時代に千葉県で偶然発見された代表的な青梨品種。現在は鳥取県のブランド梨として、海外へも輸出されています。果重は300g程度で、甘みと酸味が適度にあり、肉質はやわらかく果汁が豊富です。収穫期は8月下旬から9月下旬ごろまで。産地の直売所、産直ネット通販のほか、全国的に出荷されスーパーや青果店で購入できます。
秀玉(しゅうぎょく)
主に関東・東北の一部のみで栽培され、生産量も少ない希少品種です。果重は400g程度で、肉質は緻密。甘みが多く、酸味は少なく、香気が感じられる青梨です。収穫適期になると勝手に落下してしまうため、栽培面では見極めが難しい梨です。収穫期は9月上旬ごろ。市場へはほとんど出回りませんが、産地の直売所や産直ネット通販で購入できます。
秋麗(しゅうれい)
「幸水」に「筑水」を交雑した中生(なかて)の青梨品種。果重は350g程度で、果形はやや扁平。秀玉よりも少しやわらかめで、肉質は緻密で果汁も多い品種です。糖度も比較的高く(13%)、酸味はほとんど感じらません。収穫期は9月上旬ごろ。主な産地は熊本県で、広島県、新潟県などでも栽培されています。産地の直売所や産直ネット通販、スーパーや青果店で購入できます。
硬い梨が好きな人におススメの品種
ここからは、好みの食感や食味ごとに、おススメの品種を紹介していきます。
スーパーや青果店で買える定番品種のほか、めったにお目にかかれない珍しい品種まで、品種ごとの特徴を詳しく紹介していきます。
愛宕(あたご)
果重は平均1kg。大きなものは2kgにもなる大玉の赤梨。肉質はやや粗めで果汁が多く、ほどよい甘さとシャキシャキとした食感が特徴。収穫後も熟成が進む貯蔵梨で、11月下旬に収穫が始まり、翌年1月にかけて出荷され、冬の贈答品としても需要があります。岡山県の特産品で、鳥取県、愛知県などでも栽培されています。産地の直売所、産直ネット通販、スーパーや青果店などで購入できます。
長十郎(ちょうじゅうろう)
明治時代に川崎市で発見された赤梨品種で、かつては青梨の二十世紀と並ぶ和梨の代表品種でした。果重は300g程度。肉質はやや硬めで、ジャリジャリとした食感とほどよい甘さが特徴。収穫期は9月下旬。主な産地は青森県で、宮城県、秋田県などでも栽培されています。スーパーではあまり見かけない希少品種になりましたが、産地の直売所、産直ネット通販などで購入できます。
菊水(きくすい)
昭和初期に神奈川県で育成された青梨で「幸水」や「秀玉」の親品種にあたります。果重は350g程度で、肉質はやや粗く、甘さと適度な酸味があり、ジューシーで食味がいいものの、日持ちが短いため広く普及しませんでした。生産者が少なく生産量が極めて少ない希少品種ですが、産地の直売所や産直ネット通販で購入できます。
軟らかい梨が好きな人におススメの品種
豊水(ほうすい)
甘みが多く(糖度12~13%)、やや酸味も感じられ、すっきりとした後味が特徴の豊水。肉質はやわらかで、果汁も多いため、やわらかい口当たりが好みの方におススメです。収穫期は8月中旬から9月ごろまで。幸水とくらべて日持ちがよい品種です。産地の直売所、産直ネット通販、全国的に出荷されスーパーや青果店で購入できます。
あきづき
やや晩生(おくて)の赤梨で、秋に収穫され、果実が月のように丸く見えることからその名がつけられました。「秋月」と表示されていることもあります。果重は500g程度で、果肉はやわらかく(硬度4lbs)、肉質は緻密でシャキシャキとした食感。糖度は幸水や豊水と同程度で、酸味が少なく、しっかりとした甘みが感じられます。関東、九州、東北などで栽培され、9月中下旬が収穫期です。全国のスーパーや青果店、産地の直売所や産直ネット通販で購入できます。
王秋(おうしゅう)
中国なしとの雑種に「新雪」を交雑した晩生の赤梨です。果重は650gと大きく形はやや縦長。果肉はやわらかく、甘みがありジューシーです。関東以南での栽培に適し、鳥取県が主な産地。生産量が限られている希少な品種です。収穫期は10月下旬から11月上旬で貯蔵性がよく翌年2月ごろまで出荷されます。産地の直売所や産直ネット通販で購入できます。
甘みと酸味のバランスのよい品種
豊水(ほうすい)
日本なしの栽培面積2位の赤梨で主要品種の一つ。果重は350g~400g程度で、甘みが多く(糖度12~13度)、やや酸味も感じられ、濃厚な味。収穫期は8月中旬から9月ごろまで。幸水とくらべて日持ちがします。産地の直売所、産直ネット通販、全国のスーパーや青果店で購入できます。
新興(しんこう)
晩生の赤梨品種で、日本梨では最も遅い時期に収穫されます。果重は400gから600gの大玉で、果肉はやわらかく果汁が豊富。ほどよい甘さとやわらかな酸味が調和します。収穫時期は10月下旬で、貯蔵性にすぐれているため寒冷地では翌年1月まで出荷されます。主な産地は新潟県で、千葉県や鳥取県でも栽培されています。産地の直売所、産直ネット通販、スーパーや青果店で購入できます。
新高(にいたか)
幸水、豊水に次いで3番目に栽培面積が多い品種です。前述のように、果重は大きいもので1kgほど。甘みが強く、果汁も多く、貯蔵性が高いことも特徴。収穫期は9月中旬から9月下旬で、12月ごろまで貯蔵して出荷されるものもあります。産地の直売所、産直ネット通販、全国的に出荷されスーパーや青果店で購入できます。
とにかく甘い梨が好きな人におすすめの品種
甘太(かんた)
甘太(かんた)
高糖度(糖度14.7%)で晩生の青梨品種。「あきづき」と「王秋」の交雑で誕生し、2015年に品種登録されました。果重は570g程度で大きく、果汁たっぷり。少し酸味がありますが、糖度の高さがまさり、濃厚な味わいです。収穫期は10月上旬で、南東北から九州まで全国的に栽培できますが、まだ生産者が少ない希少品種。産地の直売所、産直ネット通販で購入できます。
新甘泉(しんかんせん)
鳥取県で育成され、2008年に品種登録された同県のオリジナル品種。大玉で高糖度、酸味が少ない赤梨です。果重500g程度の大玉で、糖度が高く(13~14%)、酸味は少なく芳醇(ほうじゅん)な甘さ。果汁が多くシャリシャリ感もあります。早生品種で収穫期は、8月下旬から9月上旬。産地の直売所、産直ネット通販で購入できます。
南水(なんすい)
長野県で開発された赤梨で、1990年に品種登録されました。果重360~380gの中玉で、果形はやや扁平。糖度が高く(14~15%)、甘味が強く酸味は少なく貯蔵性に優れています。果汁が多く果肉はやわらかめでシャリ感もあります。長野県が主な産地で、東北・上越でも栽培されています。収穫期は9月中旬ごろから。貯蔵性が高く、常温で1カ月、冷蔵で2~3カ月保存できます。産地の直売所、産直ネット通販、スーパーで購入できます。
さっぱりした梨が好きな人におすすめの品種
二十世紀(にじゅっせいき)
果重は300g程度で、甘みと酸味が適度にある品種です。肉質はやわらかく果汁が豊富で、さっぱりとした味わいが人気です。産地の直売所、産直ネット通販のほか、全国的に出荷されスーパーや青果店で購入できます。
秀玉(しゅうぎょく)
主に関東・東北の一部のみで栽培され、生産量も少ない希少品種です。前述のように、果重は400g程度で、甘みが多く、酸味は少なく、渋みもありません。香気が感じられる青梨です。収穫期は9月上旬ごろ。市場へはほとんど出回りませんが、産地の直売所や産直ネット通販で購入できます。
かおり
主に千葉県で栽培されている青梨品種。生産量や出回り時期が限られているため「幻の梨」と呼ばれています。大きいものでは果重1kg以上の大玉になり、さわやかさの中に上品な甘みがあり、食べごろになると豊かな香りがするのが特徴です。収穫時期は9月上旬から下旬まで。産地の直売所や産直ネット通販で購入できます。
食べ比べてわかる、繊細な和梨の食味
持ち味のシャリ感やジューシーさも、品種によって異なる和梨。甘いかさっぱりかでも食べたい品種が違ってくるでしょう。長く栽培され広く好まれている品種もあれば、産地にしか出回らない幻の品種もあり、楽しみは尽きません。産地の土壌に根を張り、一玉一玉手をかけて育てられる梨だから、同じ品種でも作り手や産地によって食味が違ってくるのも納得です。シーズンを通していろいろな品種を食べ比べ、ときには産地の風土や作り手の思いをかみしめながら、奥深い和梨の世界を楽しんでみてはいかがでしょう。
監修:芳蔵園