最新テクノロジー、お役立ちアイテムが一堂に集結
14回目の開催となる今回の農業WEEKは、次世代農業を牽引(けんいん)する最新テクノロジーをはじめ、生産から加工、流通、販売に関するあらゆる製品・サービスが会場をにぎわせた。併催しているイベントも含めて計900社が出展し、3日間で延べ35921人が会場を訪れた。
イベントは「農業資材EXPO」「スマート農業EXPO」「6次産業化EXPO」「畜産資材EXPO」「農業 脱炭素・SDGs EXPO」の計5展で構成され、誰しもが知る大企業から初出展となるスタートアップまで、さまざまな企業のソリューションが一堂に会した。今回はその中でも、誕生間もない農機具・農業資材の新鋭を紹介する。
電動運搬ロボット「Adam(アダム)」
まずは、農業Week初出展の東北大発スタートアップ・輝翠(きすい)TECH株式会社のブースで展示された電動運搬ロボット「Adam」だ。同社は東北大大学院で月面探査機の研究を行っていたのが起源。農作業の省力化に応用できると考え、複数の果樹農家の協力の下実証実験を重ねて今春、製品化にこぎつけた。現在、青森県のリンゴ農家や千葉県の梨農家で活用されている。
最大積載量は300キロ。傾斜20度までの走行に対応しているため、不整地でも運用することができる。あらかじめ設定した2つの地点を自動で往復する機能や、カメラで人を認識して追従する機能を備えており、GPSが利用できなかったり、携帯電話の電波が届かない地域でも利用することができる。。これまで膨大な労力の掛かっていた収穫期の運搬作業の他、剪定した枝の収集や肥料の運搬などでも負担軽減が期待できそうだ。
営業マネージャーの岩川純也さんは「青森県のリンゴ農家さんに始まり、今年から千葉県の梨農家さんに導入いただいており、収穫作業においては人の手がほとんどかからず、省力化につながっている」と胸を張る。
「特に果樹の収穫期は短期的に多くの人手を要するものの、働き手の採用は大変。仮に人を雇うことができたとしても、ほとんどは未経験の人で、作業を教える手間が掛かっていたそうです。そうした中、Adamを導入したことで、収穫作業を自分一人で完結できるようになったという声をいただきました」と岩川さん。
収穫期のみならず、草刈りや農薬散布の場面でも同機を活用してもらおうと、外付けアタッチメントを2025年にリリースする予定だ。
ミズニゴール2025モデル
農作業の自動化に向けた製品開発を手掛ける株式会社ハタケホットケのブースでは、目新しい農業機械を多くの来場者が囲んでいた。水田除草ロボット「ミズニゴール」だ。田植え後、数日に1度の頻度で水田を走らせるだけで、雑草の成長を抑制できる。2022年から続く地道な実証実験を経て、今春からレンタル提供を開始した。
同機による除草のメカニズムは名前の通り、水田の中を大きな車輪で走行することで、泥をかき上げて水を濁らせるというもの。これにより水面下の地中から発芽しようとする雑草に太陽の光が届かないようにし、光合成を遮ることで発生を防ぐというわけだ。こうした要領で除草する手段としては、田車やチェーン除草機を引いた対策のほか、類似する方法としてアイガモを水田に放つアイガモ農法がある。
同機にはGPSが搭載されており、あらかじめ設定した範囲を自動で走行してくれる。1000平方メートル当たりの作業時間は、自動走行で1回5-6分程度。自分で操作する場合でも20分程度で済む。同社によると、前述のチェーン除草をはじめとする人力での作業と比較し、作業時間は15分の1(※)にまで抑えることができるという。
(※)チェーン除草の作業時間を1000平方メートル当たり1回90分とした場合の、自動走行との比較
「ミズニゴール」の開発を担当しているマーロン・ホフマンさんは、「2025年モデルは、今年リリースした機体よりも軽量化し、イネを踏んでも問題ない設計を実現しました」と話す。
重量は10キロほどと軽量で持ち運びしやすく、凹凸のある不安定な水田でもスムーズに走行してくれる。同社は農業WEEKに先駆け、10月7日から同機の開発、拡大に関わる資金調達をクラウドファンディングサイトで募ったが、情報公開から僅か数時間後には目標金額(300万円)に達したというから驚きだ。
生産者からの期待の高さがうかがえる「ミズニゴール」25年モデルは、来春からレンタルを開始予定。導入農家さんからのフィードバックを得て改良を重ね、26年頃には一般向けに正式リリースを目指す。小規模農家の負担を最小限に抑えるため、レンタル提供を予定しているという。
ビニールハウスクリーナー
農業資材の高騰の出口が見えない中、ビニールハウスのフィルム張り替えに変わる新たな選択肢が生まれている。
トップアスリート御用達の栄養補助食品「MUSASHI」の製造・販売で知られるインフィニティ株式会社のブースでは、昨年販売を開始したビニールハウス専用クリーナーが展示された。「ビニールハウスは、洗う次代へ」のキャッチコピーを目にした多くの来場者が足を止め、担当者の話に耳を傾けていた。
同社SAFE CARE事業部販売部の松本慧さんは「昨今の資材高騰を受け、2023年からビニールハウスクリーナーの販売を行っています。一般的にビニールハウスのフィルム張替は5年ほどとされていますが、洗浄することでフィルムを張り替えることなく、日射量の回復などにつなげていただけます」と話す。
ブラシを使用して洗浄する場合は30-50倍を目安に、汚れの程度に合せて希釈して使う。動力噴霧器で洗浄する場合は10倍希釈のため、5リットルのクリーナーで2・5アール分洗浄できる。原料は植物由来の成分で、土壌に流れ込んでも安心。塩素やアルカリ剤などの化学物質は含んでおらず、使用によってビニールハウスの金属部分が劣化する心配もないという。
ビニールハウスやガラスハウス、太陽光パネルなどに付いた塵(ちり)、樹脂、海水、藻などの汚れを強力に洗浄し、日射量を改善してくれるとあって、さまざまな作物で導入農家が増えていると話す。
SDGsや環境配慮に寄与するサービスをはじめ、最先端の技術が一堂に会した第14回農業WEEK。海外の企業出展や外国人来場者も多く、世界的な注目度がうかがえたイベントだった。