乾田直播栽培の最大の課題は、雑草管理!?
湛水していない乾いた圃場に直接播種をする「乾田直播栽培」は、代かきや移植作業が不要ですが、入水を始める時期までの乾田期間が長いため、移植栽培と比較して雑草が発生しやすく、生産者の皆さんを悩ませてきました。近年では、播種前にバイオスティミュラントを活用することで、従来必要とされてきた水管理さえも省力し、最小限の通し水のみで稲の栽培が可能な「節水型乾田直播栽培」が登場しています。
この「節水型乾田直播栽培」は、栽培期間中に湛水することがないため、移植栽培や湛水直播栽培と比較してメタンガス排出量を削減でき、農林水産省が主導する“超低コスト・低メタン輸出米官民タスクフォース」の中でも推進されている技術です。
しかし、従来の乾田直播栽培同様に、雑草害は大きな課題であり、導入のハードルの主要因となっていました。その課題を解消すべく、このたび登場したのが、BASFが提供する農業の成果保証型サービス「ザルビオ® ヘルシーフィールド」です。
AIを活用して雑草防除管理。成果はBASFが保証
「ザルビオ® ヘルシーフィールド」は、衛星画像とAIを活用した栽培管理支援システム「ザルビオ® フィールドマネジャー」(2021年よりサービス開始済み)の中の雑草管理プログラムを活用し、「節水型乾田直播栽培」における雑草防除管理全般をBASFが請け負うサービス。BASFが生産現場で培ってきた膨大なデータや技術をベースに、雑草の草種に応じた除草剤のセレクトや散布時期・タイミングを管理し、散布代行業者による散布作業を実践することで、今まで難しかった雑草管理をアウトソーシングすることができます。

プレスリリースでサービスの詳細を紹介するBASFジャパン株式会社xarvio & CDEX部 xarvio® HEALTHY FIELDS責任者 鑓田啓亮氏
本サービスの大きな特長は、雑草防除の成果をBASFが保証すること。「播種~分げつ期まで」「播種~幼穂形成期まで」「播種~乳熟期まで」と保証期間を選ぶことが可能で、雑草防除の成果が得られなかった場合には返金を行うというシステムです。
さらに、こうした作業省力化による労働負荷軽減だけでなく、移植栽培と遜色のない収量・品質の確保を実現することで、「移植栽培や従来の乾田直播よりも収益性が向上する」とBASFは試算しています。
バイオスティミュラントで発芽が安定。力強い根を張るのが特徴

「ザルビオ® ヘルシーフィールド」の実証実験に参加した株式会社ヤマザキライスの山﨑能央 代表取締役
去る2025年1月30日、BASFではメディア向けに本サービスのプレスリリースを実施。アグロソリューション事業部 事業部長 野田信介氏、xarvio & CDEX部 xarvio® HEALTHY FIELDS責任者 鑓田啓亮氏より、サービスの概要や生産者のベネフィット、経営拡大のサポートについてのプレゼンテーションが行われました。
プレスリリースには、埼玉県で110haの水稲を手がけ、「ザルビオ® ヘルシーフィールド」の実証実験(2024年)に参加した株式会社ヤマザキライスの山﨑能央 代表取締役も登壇。「従来の移植栽培では今後の面積拡大、事業承継は難しいと感じていました。今回の栽培法のベースとなる『節水型乾田直播栽培』では、まずバイオスティミュラントを播種前に使用することで、発芽の安定化が図れます。湛水をしないことで、従来の乾田直播と比べて非常に力強い根を張るのが大きな特徴の一つ。また、今回はドリルシーダーで播種しましたが、バイオスティミュラントが発芽をサポートしてくれるので、ドローンでの散播も可能です」と導入の背景とメリットについてお話がありました。
シーズンを通じてしっかりとした除草効果を実感。収量も移植栽培と同等
また、「ザルビオ® ヘルシーフィールド」による雑草防除への貢献についても確かな手ごたえを実感された山﨑代表。「以前の乾田直播では雑草に負けることが非常に多かった。しかし、このサービスの雑草管理プログラムはAIの活用で、雑草の草種に応じた除草剤を選択し、最適な散布タイミングを決めてくれる。播種後はもちろん、シーズンを通じてしっかりとした除草効果を実感できました。実際の反収も“にじのきらめき”が9.2俵、“ほしじるし”が8.5俵と移植栽培と同等の収量が得られ、粒の大きさや色のきれいさでは移植栽培を上回っていると感じています。弊社の場合、移植栽培と比較して、設備機械のコストは60%、労働時間は70%、メタンガス排出は87%とそれぞれ削減することができました」と力を込めます。
担い手に“安心”を提供してくれるサービス
「3~7月は作業が重なるので、その雑草管理を『ザルビオ® ヘルシーフィールド』でアウトソーシングすることにより、現在の設備・スタッフのままでも、あと60haは拡大することができると考えています。私たち生産者が培ってきた技術、そしてBASFさんが持つ製品やサービス、デジタル技術のシナジーが大きなパラダイムシフトを生むと確信しています。私たち担い手は、今まで地域の生産者の受け皿になり地域に“安心”を提供してきましたが、『ザルビオ® ヘルシーフィールド』は、私たち担い手に“安心”を提供してくれるサービスと言えるのではないでしょうか」と評価する山崎代表。今後の本格導入についても見据えていらっしゃいました。
「節水型乾田直播栽培」という新たな栽培方法をベースに、課題だった雑草管理をAIの活用で成功に導く成果保証型サービス「ザルビオ® ヘルシーフィールド」。今後、規模拡大を考えている水稲生産者の皆さまにとって、有力な選択肢になるかもしれません。