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農業肥料革命にチャレンジ!廃棄予定のもみ殻から生まれたケイ素水で循環型農業を目指す

農業肥料革命にチャレンジ!廃棄予定のもみ殻から生まれたケイ素水で循環型農業を目指す

もみ殻には植物の有用成分であるケイ素(Si)が豊富に含まれています。しかし、水に溶けた状態でなければ植物が利用しにくいため、国内で発生する年間200万トンのもみ殻の大部分が多額の費用を払って廃棄処分に。その課題を科学で解決するプロジェクトを立ち上げた会社があります。5年に及ぶ研究でケイ素の抽出に成功した次のステップは、その有用性の実証です。循環型農業を目指すケイワート・サイエンス株式会社代表取締役社長の前ノ園晃(まえのその・あきら)さんに展望を聞きました。

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もみ殻に豊富に含まれ、あらゆる植物に有用なケイ素

ケイ素(Si)はミネラルの一種で、地殻中に酸素の次に多く含まれています。農業では、植物の成長に欠かせない有用元素のひとつです。その化合物として自然界に存在するケイ酸(SiO2)は、酸や塩アルカリを中和させる働きがあり、土壌改良にも役立つ成分として知られています。

特に水稲栽培では、ケイ酸はイネの生育や耐倒伏性、耐病虫性の向上に欠かせない成分として用いられてきました。近年、ケイ素・ケイ酸は全ての植物に対して有益な成分として注目されています。

ケイ素は、イネのもみ殻に豊富に含まれていますが、植物が吸収するには水に溶けた状態でなければなりません。家畜の床敷きにして軟化させて糞尿などの有機物と混ざり合わせて、時間をかけて堆肥化するか、燻炭や完全燃焼させて灰にする必要があります。しかし、こうしたプロセスは容易ではなく、また完全燃焼すると、ケイ素は土壌にある鉱物と変わらない状態になってしまい、植物にはほとんど吸収されなくなってしまいます。

廃棄予定のもみ殻からケイ素を抽出し、水に溶けた状態にすることで、農業に再利用できると考えたのが、SDGsに資する研究開発とものづくりを事業とするケイワート・サイエンス株式会社(埼玉県川口市)です。

同社代表取締役の前ノ園さんを中心に、もみ殻とケイ酸を分離させ、ケイ酸はケイ素水溶液として、もみ殻はバイオマス資源として活用することで循環型農業を目指す「もみ殻活用プロジェクト」を立ち上げました。

研究を重ねもみ殻からケイ素抽出に成功、実用化へ

ケイワート・サイエンス株式会社代表取締役社長 前ノ園 晃さん

2017年、ケイ素(シリコン)の植物に与える効果について世界中の論文を要約した書籍『Silicon in Plants』がアメリカで出版されました。前ノ園さんは、ケイ素は植物の細胞壁を強くし、生物的・非生物的ストレスに抵抗する力を持つことの論証に背中を押され、もみ殻からケイ素を抽出する研究に取り組んできました。

「ケイ素はシリカとも呼ばれ、ガラスの原料にもなるほど非常に硬質です。その硬さゆえに農業利用が難しい物質です」と前ノ園さんは、研究の難しさを語ります。ケイ素を豊富に含むもみ殻は、硬くて生分解されにくいため、そのままでは発酵堆肥にも家畜の飼料にもなりにくい。そのうえ、焼却には高温を要するため炉の寿命が短くなり、人体に有害な化学物質を発生させる可能性もあるため、バイオマス資源としての活用が進んできませんでした。

延べ5年をかけた研究の末、2022年に同社はもみ殻からケイ素を抽出して精製し、農業用ケイ酸水溶液の「もみ殻ケイ素水」を開発しました。製造設備を整えるためにクラウドファンディングで資金を集め、返礼として製品を提供してモニターしてもらうプロジェクトで、海外論文で発表されている作物へのさまざまな効果についての実証をスタートさせました。

もみ殻ケイ素水は、農作物の栽培にどう貢献できるか

株式会社大泉工場(川口市)は、2年前からもみ殻ケイ素水の実証実験に参加しています。約20アールの自社農場である大泉農場で、年間30~40品目の野菜を栽培し、同社敷地内で運営するオーガニックかつ植物由来(プラントベース)を
テーマにした店舗である1110 CAFE/BAKERY(川口市)で使用しています。

大泉農場 農場長 竹田 健太さん

竹田健太さんは、もみ殻ケイ素水を採用したきっかけについて、「同じ川口市の企業であるケイワート・サイエンスさんの循環型農業の取り組みに共感しました」と話します。「もみ殻ケイ素水」は200倍に希釈して、育苗時の潅水や定植後は葉面散布で、できるだけ毎日使うように心がけているそうです。

「直営店舗1110 CAFE/BAKERYへ供給する≪野菜の質と収穫量≫を上げるために、もみ殻ケイ素水もいろいろ試している資材の中のひとつですが、これまで育ちにくかったビーツの栽培がうまくいった一助になっているかもしれません」と使用感を語ります。

ケイ素水溶液以外の手入れなどの影響も含まれています

最近では、栽培期間の短いベビーリーフで、ケイ素水施用・無施用を比較試験したところ、施用したトレイのほうに芽出が良い結果が得られました。

写真左が通常、右がケイ素水散布

前ノ園さんは、「ケイ素は細胞壁の形成に使われるミネラルです」と話します。細胞壁が強くなることで、植物の保水性が良くなるため、夏場の乾きや高温の耐性が強くなると仮説を立て、もみ殻ケイ素水の施用の実証実験を加速させています。

もみ殻ケイ素を量産化、多くの生産者にその有用性を届けたい

2024年は、プロジェクトを大きく前進させる年になりました。

ケイワート・サイエンスのもみ殻ケイ素水の事業が、令和6年度埼玉県サーキュラーエコノミー型ビジネス創出支援補助金に採択されたことを大きな後押しに、製品の量産化で実証実験の規模を拡大し、水稲、野菜、果樹、花きなど、全国各地のさまざまな作物で検証のスピードを加速させています。さらに、ケイ素水は現在、「有機JAS適合資材」の申請も行っています。

また、同社がもみ殻ケイ素水を利用して開発した化粧水「いな穂の恵み・澄潤穂(ちょうじゅんすい)」が、サステナブルコスメアワード2024にノミネートされました(2025年1月15日受賞発表)。このアワードは、国内初かつ唯一の化粧品及びファイントイレタリー分野における SDGs視点での評価審査基準を制定した 「人にも地球にもやさしいコスメ」を表彰するもので、もみ殻ケイ素水の環境への配慮を裏付ける一助にもなりました。

  

各メディアでも同社の取り組みが報じられ、もみ殻ケイ素水を使用する全国の生産者からは、その効果について報告が上がってきています。香川県の農業高校では、イチゴ栽培で施用したところ、施用した株には隣の株に発生した萎黄病やうどんこ病が見られず、さらに萎黄病に罹患した株にケイ素水を施用したところ、新たな脇芽には萎黄病は見られなかったそうです。

香川県立農業経営高等学校でのいちご栽培

また、滋賀県のバラ農園「WABARA」では、バラに対して葉面散布したところ、冬の時期には太陽光が弱くなるが葉の色が濃く光合成が活発に行われており、花もツボミから硬く花びらがしっかりしているそうです。

WABARAのバラ栽培

さらに、メロンなどの日持ちが良くなった、水稲の育苗で苗が3日早く生長したなどの報告もあります。水耕栽培やドローンでの使いやすさをメリットに挙げる生産者もいます。

この他にもたくさんの検証を行って結果を得ているとのことです。詳しくはケイワート・サイエンスへ直接お問い合わせ、もしくは下記のHPからご覧ください。

土壌・肥料研究の第一人者、農学博士で京都大学名誉教授の高橋英一教授は、著書『作物にとってケイ酸とは何か』(農村漁村文化協会刊)の表紙に「それは環境適応力を高める『有用元素』」と記しています。この書籍もまた前ノ園さんの拠りどころです。

「もみ殻ケイ素水には、世界各国の論文発表にもあるようにさまざまな効果が期待できると信じています。農業の現場で実用化することで効果を実証していきたいです」と抱負を語ります。廃棄予定のもみ殻の有効利用で循環型農業を目指すチャレンジから目が離せません。

  

現在、追加研究の資金を集めるためにクラウドファンディングをCAMPFIREで実施しています。家庭菜園用・農家用のケイ素水と化粧水澄潤穂(ちょうじゅんすい)をご利用いただけるよう設定しておりますので、一度お試しいただけるとこの素晴らしさを実感していただけると思います。ぜひ、クラウドファンディングページをご覧ください。

クラウドファンディングの詳細はこちらから

【ケイワート・サイエンス株式会社 もみ殻活用プロジェクト】特設ページ

【取材協力】
大泉工場:https://www.oks-j.com/
1110 CAFE/BAKERY:https://1110cafe-bakery.com/
大泉農場 Instagram
https://www.instagram.com/oizuminojo/

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