アブラナ科野菜で注意したい「黒腐病」とは？　症状や原因、防除方法を農家が解説

黒腐病とは？

黒腐病は、アブラナ科の植物に発生する代表的な細菌性の病害です。高温多湿な環境で繁殖しやすく、特に梅雨明けから夏の間に多く見られます。
感染は主に雨や灌水（かんすい）による飛沫、虫の食害、傷口などから広がり、畑全体に蔓延することも少なくありません。

症状は、葉の縁から黄色く変色して次第に黒く枯れ込むのが特徴で、進行すると葉脈が黒く変色し、最終的に株全体がしおれてしまいます。被害が進むと光合成が妨げられ、生育不良や品質低下を引き起こします。

黒腐病は一度発生すると完全な治療が難しいため、発生を未然に防ぐことがもっとも重要です。健康な苗の導入、適切な排水管理、連作の回避、発病株の早期除去などが基本的な対策となります。

主な症状

黒腐病は、まず葉の縁から黄色く変色するのが初期のサインです。変色部分は次第に葉脈に沿って黒く枯れ込み、まるで黒い線を描いたように見えるのが特徴です。進行すると、葉全体がしおれてV字状の病斑が広がり、最終的には株全体の活力が低下します。

また、症状は葉だけでなく茎や葉柄にも広がり、内部の維管束が黒く変色することで水や養分の移動が阻害されます。その結果、成長が止まり、外見的にも元気がなくなります。

特にキャベツやハクサイでは、外葉から内側へと進行し内部が腐敗している場合があります。初期に発見して対処しないと、株全体が枯死することもあるため、早期の発見と除去が極めて重要です。

原因や発生しやすい条件

黒腐病は、キシラモナス属（Xanthomonas campestris pv. campestris）という細菌によって引き起こされる細菌性の病害です。この細菌は高温多湿な環境を好み、気温が25〜30℃の時期に活発に繁殖します。主に雨水や灌水のはね返り、あるいは傷口から葉や茎に侵入することで、植物の維管束に感染して病気を広げていきます。

病原菌は、土壌や作物残渣、雑草の中で越冬でき、次の栽培期にも感染源として残るため、一度発生すると継続的な対策が必要です。また、排水不良の圃場（ほじょう）や過密な植え付けによる風通しの悪い環境では、湿度が高まり発病リスクが大きくなります。

さらに、窒素肥料の過剰施用によって葉が軟弱になり、病原菌の侵入を受けやすくなることもあります。苗の段階から感染している場合もあり、健全な苗を選ぶことも重要な予防策です。

黒腐病が発生しやすい代表的なアブラナ科作物

黒腐病はアブラナ科の野菜に広く発生する病気で、特に以下の作物で注意が必要です。

まず代表的なのがキャベツです。結球が始まる前後に感染すると、葉脈が黒く変色して「V字型の病斑」が現れ、進行すると結球部分まで腐敗が広がります。市場価値を大きく下げるため、もっとも対策が重要な作物といえます。

次にハクサイも発生しやすい作物です。生育初期の苗の段階で感染すると、定植後の生育不良や枯死につながります。特に梅雨時期や秋雨の多い年は注意が必要です。

また、ブロッコリーやカリフラワー、コマツナ、チンゲンサイなどでも発生が確認されており、葉脈の黒変や生育不良を起こします。とくに葉菜類では収穫部分に直接症状が出やすいため、商品価値の低下に直結します。

さらに、ダイコンやカブなどの根菜類でも、葉に黒腐病が出ることがあります。根部には直接的な被害は少ないものの、葉が枯れると光合成能力が落ち、結果的に収穫量の減少を招きます。

黒腐病の基本的な防除方法

黒腐病は一度発生すると治療が難しいため、予防がもっとも重要です。以下のような管理を徹底することで、発生を大幅に抑えることができます。

圃場の水はけを良くする

水はけのよい土作りをすることが基本です。黒腐病の病原菌は湿った環境で活発になるため、排水の悪い圃場では特に注意しましょう。高畝にして水が滞らないようにし、過湿を避けることで発病リスクを減らせます。

連作を避ける

連作を避けることも重要です。アブラナ科作物を続けて栽培すると、土壌中に病原菌が蓄積し、発病しやすくなります。少なくとも2～3年は他の科の作物を栽培して休ませましょう。

植える苗に注意する

健康な苗を使うことも大切です。感染している苗を植えると圃場全体に広がる恐れがあるため、購入時は葉に黒い筋や変色がないか確認してください。育苗中も過湿に注意し、風通しをよくすることで病気を予防できます。また、補助的な対策として、土壌消毒や耐病性品種の導入も検討すると良いでしょう。特に、苗定植前の太陽熱消毒や薬剤による土壌処理は、発病リスクを下げる有効な方法です。

感染した株はすぐに取り除く

さらに、感染株の早期除去も効果的です。発病した株を放置すると、雨水や灌水によって菌が周囲に拡散します。見つけ次第、抜き取って焼却・廃棄することが望ましいです。

黒腐病防除に使うことができる農薬

黒腐病を発生させないためには、基本的な予防方法にあわせて農薬を散布すると、より効果的です。黒腐病は治療することが難しいため、農薬を使って発生予防を行いましょう。

カスミンボルドー

キャベツ・ブロッコリーなどの黒腐病に使うことができます。抗生物質の予防・治療効果と銅剤の接触効果を併用でき、黒腐病の基本剤として位置づけられます。

Zボルドー

接触保護剤として発病前〜初期の予防に有効です。結球期以降は薬害リスクがあるため、初期中心の散布が安全です。

キノンドー水和剤40

銅剤の中でも薬害が比較的少ないタイプで、黒腐病の予防に適しています。保護効果が中心のため、他系統剤とのローテーション散布で使用すると効果的です。

オリゼメート粒剤

植物の自己防御機構を誘導する抵抗性誘導剤タイプの薬剤で、黒腐病にも登録があります。土壌中の病原菌抑制に加え、植物の病害抵抗性を高める効果が期待できます。

まとめ

黒腐病はアブラナ科野菜に発生しやすい細菌性病害で、いったん感染が広がると治療が難しく、収穫への影響も大きくなります。高温多湿の環境や排水不良、過密栽培などが主な発生要因となるため、水はけのよい土づくりや適切な株間の確保、健全な苗の使用が重要です。

発病を防ぐには、連作を避ける、発病株の早期除去、太陽熱消毒や薬剤による土壌処理といった基本的な管理を徹底し、発病リスクを事前に下げることが効果的です。また、抗生物質剤や銅剤、土壌混和剤を組み合わせた予防主体の防除体系を構築することで、発生を最小限に抑えることができます。

とくにカスミンボルドーやZボルドー、キノンドー水和剤40などの薬剤に加え、抵抗性誘導剤であるオリゼメート粒剤を活用することで、より安定した防除効果が期待できます。これらを適切に使い分け、気象条件や栽培サイクルに応じた計画的な防除を心がけましょう。