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トロピカルフルーツ「アテモヤ」ってどんな果物? 栽培方法や美味しい食べ方、保存方法を農家が解説

トロピカルフルーツ「アテモヤ」ってどんな果物? 栽培方法や美味しい食べ方、保存方法を農家が解説

「森のアイスクリーム」と呼ばれるほどのクリーミーな食感と濃厚な甘さを持つ「アテモヤ」というフルーツがある。緑色のゴツゴツした見た目からは想像ができないほど美味しく、多くの人に衝撃を与える数少ないフルーツである。日本では沖縄や奄美大島などの温暖地で栽培が広がり、冬の時期に楽しめる希少なトロピカルフルーツとして人気を集めている。今回の記事では、アテモヤの特徴や栽培方法、美味しい食べ頃などについて、南国フルーツを栽培する筆者が詳しく解説していく。

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アテモヤとは?食味や見た目の特徴

アテモヤを割ってみると

アテモヤ(学名:Annona × atemoya)は、バンレイシ科バンレイシ属の熱帯果樹で、果実はハート形または楕円形。重さ300~800gほどで果肉は白く滑らか。とろけるような舌触りが特徴だ。タネは多いが、果肉との離れはよく、食べにくさはそこまで感じない。

アテモヤといえば、強い甘さが特徴的である。糖度(Brix)が高いものだと30°近くでることもあり、筆者もよく驚かされる。ただ、若干の酸味もあり、ただただ甘すぎるだけではなく奥行きも感じられるような濃厚さもある。

アテモヤの歴史と近縁の果樹について

アテモヤは、同属バンレイシ(学名:A. squamosa)とチェリモヤ(学名:A. cherimola)の交配によって誕生した雑種の果樹である。

バンレイシ

チェリモヤ

アテモヤの最初の人工交配は1908年、米国フロリダの亜熱帯植物園でP. J. Wester博士によって行われたとされる。その後1911年に、フィリピンでバンレイシにチェリモヤの花粉をつけて得られた種子をフロリダで、1913年に初結実させたという歴史がある。100年以上の歴史あるハイブリッドフルーツである。

母親のバンレイシと父親のチェリモヤの原産はともに熱帯のアメリカ大陸である。アテモヤは、チェリモヤ由来の耐寒性や樹勢の強さ、バンレイシ由来の結実性・香味を併せ持つことが期待され作られた。その後フロリダやオーストラリア、イスラエルなどで選抜・栽培が広がって、多くの品種が誕生し、現在も盛んに作られている。

アテモヤを含むバンレイシ属には多くの種があるが、他にも現在食用として知られるものは、アテモヤ、チェリモヤやバンレイシの他に、トゲバンレイシ(A. muricata)やイラマ(A. macroprophyllata)、ギュウシンリ(A. reticulata)、ヤマトゲバンレイシ(A. montana)、イヌバンレイシ(A. glabra)などがある。このバンレイシ属には、別種であるが、交雑が可能なものや、接木の親和性が高いものが多い。

トゲバンレイシ

イラマの花と幼果

ヤマトゲバンレイシ

イヌバンレイシ

アテモヤの日本国内での普及

アテモヤはフロリダで開発された後、世界中の熱帯・亜熱帯地域に広まり、日本へは1980年代後半に沖縄県へチェリモヤと同時期に導入された。現在では冬の高級果実として定着している。沖縄県内では「ジェフナー」というイスラエルで作出された品種が多く栽培されており、ふるさと納税の返礼品としても人気が高い。他にも、バンレイシのような香りがある「アフリカンプライド」、大型果実「ピンクスマンモス」などの品種も出回っているが、「ジェフナー」がクリーミーな味質で比較的種子も少なく、他の品種に比べて豊産性であるという理由から特に広がっている。

名前の由来と「森のアイスクリーム」と呼ばれる理由

アテモヤはバンレイシとチェリモヤから作られた果樹

アテモヤという名称は、メキシコでのバンレイシの呼称 「アテ」と 「チェリモヤ」 の「モヤ」をシンプルに組み合わせたものに由来する。両者とも、かなり美味しいフルーツであり、バンレイシは英語圏でシュガーアップルと呼ばれる。チェリモヤは原産地よりアンデスのシャーベットと呼ばれるほど人気が高いほか、世界三大美果として知られており、世界的にも評価されている。

これらの優秀な親の遺伝子を組み合わせたアテモヤも、熟した果肉のなめらかな食感と、甘く芳醇な香りがアイスクリームを思わせることから「森のアイスクリーム」という愛称が定着した。また、英語圏ではしばしば「カスタードアップル」と呼ばれることもあるが、これは親のチェリモヤをそう呼ぶこともある。

アテモヤに含まれる栄養と健康効果

アテモヤには、ビタミンCやカリウム、銅などのミネラル分、抗酸化作用のあるポリフェノールなどが豊富に含まれることが知られている。

可食部100gあたりのビタミンC含有量は約22mg、カリウムは男性の一日あたり推奨摂取量(3000㎎)の約32%に相当する量が含まれ、銅も同じく約23%が含まれている。ビタミンCは、抗酸化作用があり、細胞の酸化ストレスを防ぐ効果や、免疫機能の強化、さらには、皮膚・血管・骨などの形成に不可欠である。

カリウムは、ナトリウムの排出を促進し、高血圧の予防に寄与するほか、細胞内外の浸透圧を安定化し、体内の水分バランスを保つ効果がある。また、銅は鉄の利用と赤血球形成に不可欠であり、免疫・神経機能の維持や、免疫細胞の成熟と神経伝達物質合成を助ける。

抗酸化作用のあるポリフェノールは、免疫力向上や老化抑制に寄与する。アテモヤは、果糖主体で吸収が緩やかであるため、適量摂取で健康的なデザートとなる。

アテモヤの栽培方法

熱帯果物カレンダー。アテモヤは冬に収穫できる珍しい果物

アテモヤは冬に収穫できる珍しいフルーツでもある。
上記の栽培カレンダーを見ると、マンゴーやパイナップル、ドラゴンフルーツなどのような多くの熱帯果物は夏付近に集中しているが、アテモヤは冬に収穫できるということで、生産者だけではなく消費者からも注目されている。
ここからは、日本でアテモヤを育てる際のポイントやコツについて解説していく。

アテモヤ栽培に適した条件

表はアテモヤの特性や増やし方について

アテモヤは熱帯から亜熱帯の温暖な気候を好み、気温22~32 ℃で良好に生育する。沖縄県では露地で栽培することができる。霜や低温に弱く、冬期は最低 8 ℃以上を保つ必要がある。

植え付けは、風避けがあり、日当たりが良い場所が適している。日陰に植えると生育不良が起きやすいため注意が必要だ。筆者も、バナナや大きい木の下など、強く遮光されたところに植えた経験があるが、あまり成長しなかった。日照確保がとにかく重要である。植え付ける土壌は、排水性に優れた弱酸性(pH 6.0 ~ 6.5)が理想である。

アテモヤの花と人工授粉のやり方

アテモヤの花

アテモヤは3枚の緑色の花びらを持つが、良質な果実を結実させるためには、人工授粉が必要である。花は雌性先熟という性質を持っており、初日は雌期、翌日午後~夕刻に雄期へ移行する性質がある。花びらが図のように適度に開いた状態になると、雌しべが機能して湿った状態になる。この時に、花びらを1~2枚外して、基部にある雄しべを耳かきなどですくいとり、中央の雌しべにまんべんなくつけておく。そうすると、しばらく経てば雄しべの葯が機能して受粉が完成する。他の花から雄しべをとっても良いが、一輪でもできる。花が多量にある場合には、事前に花粉を集めておいて、雌しべにつけてもよい。

アテモヤの花と人工授粉の方法

まれに人工授粉をしていなくても結実していることがあるが、こうしたケースはタネが中途半端に入り、果実肥大も不均一で見栄えが悪いことがほとんどだ。人工授粉を行うことで収量もあがり、良い品質の果実が作れる。
また、湿度の高い状態の方が雌しべに花粉がつきやすいため、受粉前は全体的に土壌かん水などを行っておき、栽培環境の湿度を高めておくと良い。

アテモヤの剪定から収穫まで

アテモヤの花と人工授粉の方法

アテモヤは年数回の剪定が必要である。春剪定で木を整え、夏剪定により冬収穫の結果枝を作るのが大まかな流れだ。夏剪定の後に新梢が出てきて、そこに花がつくのだ。葉っぱの基部に新芽が隠れているため、切り返し剪定をしたあとは、葉っぱを2枚落としておく。そうすると新梢がスムーズに伸びてくる。

日長12時間以上だと新梢がよく出るため、7月から8月に切り返し剪定をする。一ヶ月程度経つと、伸びた枝に花がついているため、先ほど紹介した人工授粉を行う。うまく受粉されると、1月あたりには収穫できる。収穫時期は、果実が十分膨らんで、果皮の突起が少し穏やかになり、やや淡緑色に変化した頃が収穫適期である。収穫後には、追熟が必要で、果実が柔らかくなったら食べられる。

剪定によって新梢を出す

日中の日の長さと剪定、人工授粉、収穫時期の目安

アテモヤの増やし方と苗木を選ぶ際の注意点

アテモヤは実生、接ぎ木、取り木、挿し木のいずれでも増殖可能であるが、筆者のおすすめは接ぎ木か取り木である。アテモヤはバンレイシとチェリモヤの雑種であるため、実生だと変異が多く、期待する出来栄えになるかどうかが分からない。

タネから発芽したアテモヤ

接ぎ木の場合は、樹勢の強いチェリモヤかアテモヤの台木を使った苗を植える。バンレイシだと根腐れする可能性が高いため、どうしてもバンレイシの台木で接木をする場合は鉢植えで育てると良い。苗木を購入するときは、台木の種類がきちんとわかっているものを買うこと。ちなみに、筆者はアテモヤから直接取り木で増やしているが、それでも十分育っている。

アテモヤの取り木

取り木後のアテモヤ

取り木苗を植え付けて11ヶ月後

アテモヤの旬と美味しい食べ方

アテモヤは日本で11月~2月ごろに出回り、概ねこの時期が旬とされている。アテモヤは剪定後に伸びた枝に花がつくため、剪定の時期を工夫することによって果実の収穫時期をコントロールすることができる。そのため、アテモヤは市場においても特定の時期に集中せず、長く旬を楽しめるフルーツになっている。

アテモヤは追熟が必要な果実であり、購入時は硬い状態が多い。このため、購入後に食べるまでは数日待たないといけない。購入後は冷蔵庫に入れず室温で追熟させ、収穫日から数えておおよそ1週間~2週間後に食べ頃となる。店頭では収穫日や食べ頃が記載されてることが多いため、それを目安にすると良い。

触るとわずかに柔らかく感じられると食べ頃である。冷やして食べても美味しい。半分にカットし、スプーンでタネごとすくって食べて、タネは飲み込まず出すというのが一般的な食べ方である。
色々な果実や野菜と一緒に、スムージーにしても良いし、ヨーグルトやアイスクリームと一緒に食べても美味しい。

アテモヤの保存方法

未熟果は常温で追熟し、柔らかくなったら冷蔵庫で2~3日は保存できるが、追熟が終わったら早めに食べるほうが美味しい。一気に食べられないほど量が多いという場合は、冷凍保存も可能であるが、こちらもなるべくであれば早めに食べてほしい。解凍した果実はやはり食感が水っぽくなるので、冷凍のままスムージーやアイスの材料として活用するのも良いだろう。

近年は家庭菜園でも注目

アテモヤは、南国特有の芳香と濃厚な甘味をもつトロピカルフルーツである。他のフルーツと比べてもかなり糖度も高く、ビタミンCやミネラルも豊富である。まだ一度も食べたことのない方は、この記事を読んだことを機に食べていただきたいなと感じる。一口食べれば「森のアイスクリーム」というものを体感できると思う。アテモヤは現在、沖縄を中心に冬季の果実として注目され、家庭でも鉢植え栽培が可能であるとして人気がある。一本だけでも十分に果実がつくため、ぜひ育ててみてほしい。

参考文献
Dos Santos W.N.L. et al. (2016). Mineral composition, nutritional properties, total phenolics and flavonoids compounds of the atemoya fruit (Annona × atemoya). Anais da Academia Brasileira de Ciências, 88(4): 2227-2238.

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