価格協議とエビデンス
2026年4月1日から、全面施行された「食料システム法」では、食品関連事業者は、コスト上昇に基づく価格協議に誠実に応じることが努力義務として課され、違反した場合、Gメンなどによる指導の対象となることになった。これは生産者の立場から見れば、自分の農産物の取引において、取引先に価格協議を持ち込んだ場合、正当な理由なくして相手先である食品製造業者や小売業者はそれを拒めなくなった、ということである。
しかしながら、努力義務化されたのは「協議に応じる」ことであり、「値上げに応じる」ことが義務化されたわけではない、ということに注意が必要である。つまり、価格協議のなかで、生産者は「値上げに応じてもらえる交渉」を行わなければならないのである。
この交渉のなかで重要であるのが、「なぜ値上げが必要なのか」を具体的に説明することである。単純に「原価」が上がったからだと言われ、そのまま「はい、そうですか」とはなりにくい。相手に納得してもらうだけの理由がそこには必要なのである。この理由付けとして、現在最も使われているものの1つに物価高騰に対する政府の統計資料がある。
取引先に対して具体的な原価の項目をあげ、「〇〇の原価が高騰しているから、価格を上げさせてほしい」と交渉する場合に、そのエビデンスとして政府統計の数値を使う方法である。例えば、「人件費が5%上がったから、価格を上げさせてほしい。実際に最低賃金が昨年よりも5%上がっている」と言われれば、人件費が上昇していることは疑いようもなくなるだろう。価格協議を進めるうえで、生産に必要なコスト等について、明確なエビデンスを持って示すことは値上げを成功させるために重要な要素である。

価格交渉に使える政府統計データ
では、どのような政府統計が価格協議に活用できるだろうか。ここではいくつかの政府統計について紹介したい。
まず、農業生産の原価を示すものであれば農水省の農業物価統計調査の活用を推奨する。
この農業物価統計調査は、農産物の価格の指数だけではなく、農業に必要な資材の価格指数なども細かく示されている。

農業物価統計調査の統計表。農水省ページより閲覧可能
農業生産資材総合という全体を合計した価格指数もあれば、種苗・苗木、飼料、農業薬剤、肥料(無機物、有機物)、光熱動力などの物価の水準がわかるものとなっている。農業生産に係るコスト上昇を客観的に取引先に提示するような場合、まずは農業物価統計調査を使ってみてほしい。ただ、この後に紹介する統計も同じだが、こうした物価に関する統計の多くは基準年を100とした場合の指数で示されていることが多いことに注意が必要である。なお、2026年2月の結果では、令和2年を100とした場合の農業生産資材総合の価格指数は127.7となっており、この5~6年で生産資材は全体的に3割程度、価格が上昇していることを示している。
次に価格交渉に使いたい政府統計としては、日本銀行の企業物価指数や企業向けサービス価格指数サービスが便利である。農業に限らない一般的な商品やサービスの価格動向をおさえるためには、この2つの統計が最もポピュラーである。
企業向けサービス価格指数には、例えば、輸送サービスの項目があり、物流費の高騰のエビデンスとして使える数字などがある。以下の図は、2026年2月の企業向けサービス価格指数の抜粋イメージだ。

業向けサービス価格指数の抜粋(2026年2月)
こうした政府統計で出す物価の動きは、社会全体の物価の動きを表すマクロ的なものである。これらをエビデンスとして活用することで、自分たちだけがコスト上昇しているわけではないこと、個社のコスト削減の努力だけでは対応が難しいことを客観的に示し、ロジカルに値上げ交渉を進めることができる。ぜひ、活用してみてほしい。











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