半身萎凋病とは?
トマトやナスなどナス科野菜を育てていると、「なんとなく半分だけ元気がない」「片方の葉だけしおれている」といった、片側だけ様子がおかしいといったことがあります。こうした状態の原因の1つとして知られるのが、半身萎凋病です。
半身萎凋病の原因と特徴
半身萎凋病は、糸状菌(カビ)の一種であるバーティシリウム属菌が原因となって発生する土壌伝染病です。この病原菌は土の中に長く残りやすく、感染した植物の残渣や根、菌核がそのまま次作への伝染源になることもあります。
また、この病気はナス科野菜(トマトやナス・ジャガイモなど)によく見られ、感染すると片方だけ葉がしおれたり、株全体の生育が遅れたりします。
どうして「半身」だけしおれてしまうのか
半身萎凋病の名前は、発病初期に株の片側だけがしおれるように見えることからきています。これは病原菌が植物内部の道管を塞いでしまうことが原因と考えられています。
植物は道管という水や栄養素の通り道である細い管を通して、根から株全体に水分や栄養分を送っています。根から侵入した半身萎凋病の原因菌は、この道管をつまらせて機能不全にしてしまうのです。
つまり、道管がつまった側では水分や栄養が十分に届かず、葉がしおれたり色が悪くなる一方で、反対側はまだ正常に機能している場合があるため、半身だけしおれるという症状に繋がると考えられています。なお、株の半分だけしおれている状態は病気の初期症状であり、病状が進むと株全体がしおれていきます。
発生しやすい条件
半身萎凋病の原因菌であるバーティシリウム属菌は土の中に長く残る性質があり、栽培環境によって発生のしやすさが大きく変わります。それらの条件について、1つずつ見ていきましょう。
発生しやすい時期と好む気温
半身萎凋病は、比較的涼しい時期に発生しやすい傾向があります。病原菌が活発に生育する温度帯は20~25℃前後とされ、春先から初夏にかけてと、秋口から晩秋の気温が穏やかな時期に症状が目立つようになります。また、湿度が高く日照が不足しがちな時期では、菌が感染しやすくなるとの報告もあり、単に気温だけでなく気象条件全体が影響することもわかっています。
土壌環境との関係性
気温のほかに、土壌環境も発生リスクと関わりがあることがわかっています。
特に気をつけたい2つのポイントを押さえましょう。
連作による発生リスクの上昇
バーティシリウム属菌は土壌中で微小菌核という耐久性の高い形態で長期間(数年から十年以上)生存できるため、連作を続けると土壌中の菌の数が増え、発生リスクが高まります。連作はできるだけ避けるか、耐病性のある接ぎ木苗を用いるとよいでしょう。
湿った土壌に注意
半身萎凋病は乾いた土壌よりも、排水が悪く湿潤状態にある土壌で発生しやすいとの報告もあります。土が長く湿った状態だと菌の活動が促進され、株への感染リスクが増えるため、圃場(ほじょう)全体の排水性を改善するようにしましょう。
症状の見分け方
半身萎凋病は発生初期には一見わかりにくいものの、進行とともに特徴的な症状が現れます。病気の初期から進行段階までの変化と、似た病気との違いも見ていきます。
初期症状
半身萎凋病の初期には、株の片側の葉だけがしおれるといった症状が見られます。朝はやや回復しているように見えても、日中の気温上昇とともに再びしおれるという状態になることもあります。株の下側の葉から徐々に黄色くなることが多く、全体が一度に急激に枯れるというよりは、じわじわと弱っていくような症状になることが特徴です。

葉の半分が黄化・枯死 ※引用:香川県ホームページ
進行するとどうなる?
症状が進むとしおれは片側だけでなく株全体に広がっていきます。葉は縮まり、生育が停滞し、果実の肥大も悪くなります。
決定的な見分けポイントは、茎を切ったときの維管束(道管などの組織の集まり)の褐変です。病原菌が道管内で増殖し、水の通り道が詰まっているとこのような症状が現れます。

茎部導管部の褐変症状 ※引用:香川県ホームページ
青枯病との違い
青枯病も株がしおれて枯れることから混同されることがあります。しかし、いくつかの違いがあります。
青枯病は株全体が急激にしおれ、短期間で枯死することが多いのに対し、半身萎凋病は比較的ゆっくり進行します。
また青枯病は高温期に発生しやすく、半身萎凋病のピーク時期と異なるのも特徴です。
発病を予防するには?
半身萎凋病は一度発病すると株の回復が難しい病気です。予防的な圃場管理や、発病株の早期対処が防除の基本になります。また発病後に効果のある農薬も今のところないので、予防的防除を心がけましょう。
発病株への対処方法
発病した株はそのまま放置すると病原菌の伝染源になるため、根ごと抜き取って圃場の外で処分するように心がけましょう。栽培途中で抜き取るのは名残惜しい気持ちもわかりますが、この病気は治療できません。他の株に病気が伝染する前に処分しましょう。なお、抜き取った株は菌がいるため堆肥などにはせず、しっかりゴミとして処分してください。
土壌消毒をする
土壌消毒とは土壌中に潜む病原菌を薬剤や太陽熱などを使って消毒する防除の手法です。それぞれ以下のようなものがあります。
薬剤による土壌消毒
施設栽培や大規模栽培では、登録のある土壌消毒剤を用いて消毒を行います。ガスタード微粒剤などが有名ですが、刺激臭や薬害の可能性があるため、家庭菜園などでは行いません。
土壌還元消毒
夏場にフスマや米ぬかなどを使用して、それらの還元剤が土壌に還元される際に発生する高熱を消毒に活用する方法です。土壌の微生物を活用するため環境に優しいですが、多量の還元剤が必要になること、還元時に独特な臭いがするため家庭菜園には不向きです。
太陽熱による土壌消毒
夏場に十分に灌水(かんすい)した土壌をフィルムで覆い、地温を上昇させることで病原菌を減らす方法です。原因菌や害虫・雑草の種などが高温に弱い性質を利用した物理的な対策で、家庭菜園でも比較的取り組みやすい方法です。
完全に菌をなくすことは難しいものの、発生リスクを下げる効果が期待できます。

太陽熱消毒
土作りをしっかり行う
まず意識したいのが、有機物の投入です。完熟堆肥などを適量施すことで、土の中の微生物環境が整い、根が伸びやすい状態になります。土がふかふかしてくると、水はけと水もちのバランスもよくなり、根のストレスが減っていきます。
次に、pHの管理です。ナスやトマトは弱酸性から中性付近を好みます。極端に酸性に傾いていると根の働きが弱まり、病気にかかりやすくなります。ときどき土壌酸度を確認し、必要に応じて調整することも、地味ですが大切な作業です。
耐病性品種・接ぎ木苗の活用
半身萎凋病を予防するには、抵抗性をもつ品種や接ぎ木苗を積極的に活用しましょう。接ぎ木苗のメリットは、病害に強い台木の根を利用できることです。病原菌は主に根から侵入するため、抵抗性をもつ台木を使うことで感染リスクを下げることができます。
まとめ
半身萎凋病は、土壌中に潜むバーティシリウム属菌が原因の病気で、片側だけしおれる症状が特徴です。発病後の回復は難しいため、早期の抜き取りと土壌管理が重要になります。
発生リスクを下げるためには、連作を避け、土壌消毒や太陽熱処理、耐病性品種や接ぎ木苗の活用などを組み合わせましょう。そして何より、日々の土づくりと排水管理が大切になってきます。ぜひ本記事を参考にして半身萎凋病を予防してくださいね。

















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