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コメは収穫前に売る時代へ 価格固定と精米したてを届ける新サービス

コメは収穫前に売る時代へ 価格固定と精米したてを届ける新サービス

米価は収穫直前まで決まらない。そんな不安定な市場構造の中で、生産者の経営を守る新たな取り組みが始まる。生産者から、あらかじめ決めた価格で買い取る仕組み「zero The Rice」と、精米したてを届ける新サービス「Rice Stock」だ。価格の安定と消費体験の向上を両立するこのモデルは、これからのコメ流通にどのような変化をもたらすのか。

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「価格が見えない」コメ流通の課題に挑む

「コメは収穫直前まで価格が分からない。この構造が、農家の経営を難しくしていると思っています」そう語るのは、宇都宮でコメを栽培する大澤農園 代表取締役の大澤悟(おおさわ・さとる)さんだ。
コメの価格は一律に決まるわけではない。JA出荷の場合、収穫前後に「概算金」として仮の価格が示され、その後、実際の販売状況に応じて精算が行われ、最終的な手取り額が確定する。一方で、業者間での相対取引では、収穫前から収穫期にかけて価格が随時形成され、市場動向によって変動する。こうした構造のため、生産者にとっては出荷時点で収入が見通し難い。資材費や燃料費が高騰するなか、この不確実性は経営に大きな影響を及ぼしている。

生産者の現状を語る大澤さん

こうした課題に対して、ねぎびとカンパニー株式会社代表取締役の清水寅(しみず・つよし)さんが主導して立ち上げたのが、コメの買い取り・販売システム「zero The Rice(ゼロ・ザ・ライス)」だ。
収穫前に生産者と取り決めた価格で買い取り、独自の流通ルートを通じて、飲食店や小売、さらには消費者へと直接販売される。これにより、生産者は出荷時点で収入の見通しを立てることができる。「農家が安心して生産に専念できる環境をつくりたかった」と清水さんは話す。

ねぎびとカンパニーの清水さん

こうした仕組みは現場にどのような変化をもたらしているのか。大澤さん自身も「zero The Rice」に参加し、その変化を実感している。「価格が事前に決まっているので、経営の見通しが立てやすくなりました」一方で、相場との関係には葛藤もある。
「たとえば『令和の米騒動』の時のように、市場価格が急に上がる局面もありますよね」そう話すのは清水さんだ。
大澤さんも、その点について率直に語る。「正直、相場が上がると『もう少し高く売れたかもしれない』と思うことはあります。ただ、逆に価格が下がるリスクを考えると、安定して買い取ってもらえることの価値は大きいですね」

こうした安定と機会損失のトレードオフを抱えながらも、この仕組みが成り立っている背景には、確かな需要の存在がある。販路について、清水さんはこう補足する。
「コメは使用量が多い。特に飲食店では圧倒的なボリュームになります」
外食産業は日々大量のコメを消費するため、継続的かつ安定した需要が見込める。この需要の厚みが、生産者からの事前契約・買い取りというモデルを成立させる土台となっている。

消費者へ届ける新しい仕組み

生産者の経営を支える「zero The Rice」の取り組み。その価値を、いかにして消費者の食卓へとつなぐのか。そこで生まれたのが、新たなサービス「Rice Stock(ライスストック)」だ。
企画・販売を担うのは、Tylus Inc.の松浦雄一郎(まつうら・ゆういちろう)さん。昔から玄米を購入し、精米したての白米を食べてきたという大のコメ好きだ。「都心に住む人でも、精米したてのお米のおいしさを日常で楽しめる仕組みをつくりたい、という思いがありました」
その構想に重なったのが、「zero The Rice」だった。生産者から適正価格で買い取ることで持続可能な農業を支えるこの仕組みと、“精米したてを届ける体験”を結びつけることで、生産と消費の双方に新たな価値を生み出そうとした。
「Rice Stockは、単なるコメの通販ではありません。おいしさと価値を最大化して届ける仕組みです」

最大の特徴は、玄米のまま保管し、注文ごとに精米して出荷する点にある。「zero The Rice」を通じて確保した玄米を温度管理された倉庫で保管し、注文ごとに精米。精米後、2〜3日以内に消費者へ届ける。

サービスリリースの第一弾は、大澤さんのコメだ。利根川水系の一級河川である鬼怒川をはじめ、田川や姿川といった河川に恵まれたこの地域は、水資源が豊富で、古くからコメづくりが盛んな土地として知られている。
大澤農園でも、そうした恵まれた水環境を生かしながら、一つひとつの工程に丁寧に向き合い、品質を高めている。
中でも評判が高いのが、栃木県のブランド米「ゆうだい21」だ。粒が大きく、しっかりとした食感と甘みが特徴で、炊き上がりにはふっくらとした艶が生まれる。主に県内で流通することが多く、他府県の大型スーパーではあまり見かけない品種でもある。

こうして丁寧に育てられたコメは、玄米の状態で保管され、注文が入った瞬間に精米される。
「コメは精米した瞬間から劣化が始まります。だからこそ、“精米したて”を届けることに意味があります」
さらに、消費者の利便性にも配慮している。「重たいコメを運ぶ必要がなく、必要な分だけ届く。今の生活スタイルに合った形だと思います」
いわばコメを「買う」のではなく、「ストックする」という新しい発想のサービスだ。

生産・流通・消費をつなぎ直す新たなモデル

今回の取り組みは、仕組みを設計する清水さん、現場でおいしいコメを生産する大澤さん、そして消費者へ届ける松浦さん。それぞれの役割がかみ合うことで成り立っている。
改めて今後の展望について聞くと、清水さんはこう語る。
「農家が安心して作り続けられること。それが一番重要です」
価格の不確実性という課題に向き合ってきたからこそ、その言葉には重みがある。
大澤さんもまた、同じ方向を見据えている。
「安定した環境があれば、もっといいコメづくりに挑戦できます」
そして松浦さんは、消費者との新しい関係性に可能性を見出す。
「誰がどう作ったかが見えるお米を届けていきたいですね」
価格、流通、消費体験――。分断されてきたそれぞれの要素をつなぎ直すこのモデルは、コメの価値そのものを問い直す試みでもある。

 

お知らせ
Rice Stockはオープンに先駆け、本日より応援購入サービス「Makuake」にて先行販売を開始いたしました。
生産者が安心してお米づくりを続けられる環境づくりと、消費者へ精米したてのおいしさを届ける新しい取り組みです。
ぜひプロジェクトページをご覧いただき、ご支援いただけますと幸いです。
Makuakeプロジェクトページ

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