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猛暑からコメを守り、使用電力量を約7割削減。舞台ファームが水稲ソーラーシェアリングで示す「農エネ業」の真価

猛暑からコメを守り、使用電力量を約7割削減。舞台ファームが水稲ソーラーシェアリングで示す「農エネ業」の真価

2025年産米の統計を見ると、国内では再び「コメ余り」と「価格低迷」の様相を呈し、稲作経営の行く末を不安視する声が聞こえてくる。こうした中、コメ作りの現場に新たな価値を生み出す企業がある。農業の大規模化、農業DXをいち早く進めてきた株式会社舞台ファーム(宮城県仙台市)だ。
同社はこのほど、約3.9ヘクタールの水田に営農型太陽光発電(ソーラーシェアリング)設備を竣工し、今年4月から本格的な稼働を開始した。発電出力は約2500キロワットの計画で、総事業費は約4億5000万円。稲作の営農型太陽光としては国内最大級となる挑戦の背景について、同社取締役の針生信洋さんに聞いた。

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なぜ今、ソーラーシェアリングなのか

2003年設立の同社はグループ全体売上高65億円(2026年6月度)を誇る、国内有数の農業法人。コメや野菜の生産のほか、カット野菜など農産物の加工も手がける。21年にはロボットアームなどを導入した植物工場「美里グリーンベース」を稼働し、積極的に自動化を進めている。


今回竣工したソーラーシェアリングは、これらの経営基盤を「エネルギーの自給」という側面からさらに強固にする一手だ。農地を「コメを作るだけの場所」から「エネルギーをも同時に生産する場所」へと昇華させることで、コスト削減とリスク分散を同時に実現したのである。
さらに、機械化や自動化によるスマート農業は電力インフラを基盤とするため、提携する地域農業者にも電力を開放することで、地域全体で農業の高度化や生産性の向上を加速させていくことが可能になる。

同社の16代目で取締役の針生信洋さんは、「僕らが伸ばしていきたいのは、農業×電力のいわば『農エネ業』。ゆくゆくはこのモデルを全国展開していきたい」と、新たな農業の形を力強く語る。

約7割の使用電力量を削減。稲作とのシナジーも

近年、国内でソーラーシェアリングを導入するケースは増えつつあるが、その多くは少ない日射量でも育つブルーベリーなどの植物が中心であり、水稲での事例はまだまだ少数派だ。

「パネルの下でも美味しいお米が取れるのか」。そんな疑問が聞こえてきそうだが、検証結果は確かな事実を示していた。太陽光パネルが“日よけ”の効果を果たし、近年の猛暑から米を守る役割を果たしていることが分かったのだ。
「夏の強い光が水田に当たり高温になりすぎると、米が白く濁る『白未熟粒(シラタ)』が発生し、著しく品質が低下してしまう。そこで、水稲が光合成を行う上で必要最低限となる光の量が適切に差し込むよう、パネルの面積や配置を緻密に計算して設計しています」

本設備の発電出力は約2500キロワット(計画)であり、作られた電力はすべて隣接する「美里グリーンベース」での自家消費に充てられる。この仕組みにより、同工場の使用電力の約78%の削減が見込まれている。

作業効率を落とさない緻密な設計

水稲でのソーラーシェアリングとなると当然、水田内に支柱を立てる必要がある。水稲農家が最も気になるのは、これによる作業効率への影響だろう。この点についても、徹底して現場目線にこだわった工夫がなされている。
架台の最低地上高は約3メートル。柱間の距離も大型農業機械を加味して広く設定し、 大型農業機械がパネルの下でぶつかることなく作業を行えるよう空間を設計した。今後の大型機械の自動化も見据え、同社はあえて、パネルを支える支柱の周囲20〜30cmを空けて田植えをしない選択をしている。


「普通は支柱の周りまでびっちり植えたがるものですが、うちはあえて支柱の周りの田植えをしていないんです。支柱近くまで苗を植えて、ゆっくり作業せざるを得ない状況よりも、機械で直線的に作業できた方が効率がいいんです」

自動化に最適な区画設定にもその思想は現れている。「1ヘクタールの区画に対し、田植え機などの機械が途中で苗切れを起こさず、最も無駄なく稼働できるサイズは100m×100mではなく、80m×120mなんです」と針生さん。美里グリーンベース隣に設置されたソーラーシェアリングもこのサイズに沿って設計されており、同社はこれを今後の完全自動化モデルの「デファクトスタンダード(事実上の標準)」としていく考えだ。将来的にはこの設備に充電スポットを統合し、農機が勝手に戻って完全自動充電する構想まで描いている。

安定的に食料を供給していくための品種選定

同圃場で作付けするのは「にじのきらめき」である。舞台ファームは、良食味・多収性・高温耐性に優れる水稲品種「にじのきらめき」の種もみを生産し、全国へ販売しており、非常に高い評価を得ている。同社は「にじのきらめき」の生産を通じて圃場の収量を担保しつつ、ソーラーシェアリング環境下における効率的な栽培方法について、米の大手卸である神明ホールディングスと連携しながら検証を進めている。

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選定の主たる理由は「高温耐性」にあると、針生さんは言う。取材に訪れた6月初旬時点で、宮城県内でもすでに最高気温が31度に達するほどの急激な環境変化が起きている。30〜60年前に品種登録された従来のコメ品種では、現代の気候に適合できなくなっているのだ。
「僕たちのビジョンは、安定的に食料を供給していく会社。もちろん味も大事ですが、まずは数量が取れないと意味がないと考えています。だからこそ、美味しくて量が取れるベストな選択を、現在の環境に適応させています」

挑戦の根幹にある、デジタル先進国との“差”

針生さんがこれほどまでにエネルギーの自給と自動化にこだわる背景には、アメリカや中国などの諸外国を視察した際に抱いた強烈な「危機感」がある。
「直近では1ヶ月ほど前に中国へ行ってきましたが、ドローンでの配達やタクシーの自動運転技術はもちろん、農業ロボットに関しても日本の20倍近くは進んでいる印象でした。国内の農業界に閉じこもるのではなく、世界基準で総合的に判断し、これからの農業の姿を模索していかなくてはと考えています」

ソーラーシェアリング施設には充電ステーションも設置されている。農業機械のエネルギー自給だけでなく、地域の提携する農業者が所有する電動車両にも供給していくとしている。

このほか、同社は高額な最新農機への買い替えを迫るのではなく、農家がすでに所有している既存のトラクターに後付けできる「自動運転システム」の開発も進めている。これも、中国のタクシー自動操縦システムから着想を得ている。今ある資産を生かしながら、誰もがスマート農業の恩恵を受けられる仕組みを作ることで、業界全体の底上げを狙う考えだ。

「農エネ業」を全国へ

舞台ファームが実践する「農エネ業」のモデルは、自社内だけで完結させるつもりはない。この持続可能なモデルが全国の農業現場や他の事業者へ広く波及することで、農地の維持とエネルギー自給を両立させるインフラになることを強く願っている。
「そのためには採算が取れることが大前提。当社では電力の全量を自家消費していますが、発電した電力をどうするかはその土地、場所ごとで最適解が異なります。実態に即したモデルを提案していきたいですね」

ロマンあふれる未来を語りつつも、そろばんを弾く手は決して止めない。徹底した現実主義と圧倒的なスピード感に裏打ちされた舞台ファームの「農エネ業」は、日本の稲作が持続可能であるための、一つの明確な答えを示している。

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