農業を取り巻く環境変化と新たな課題
「みどりの食料システム戦略」は2021年の策定以来、着実に歩みを進めてきた。近藤グループ長はこれまでの5年間を振り返り、「(食料・農業・農村)基本法の改正において『環境と調和のとれた食料システムの確立』が主要な政策として位置付けられた。みどり法の制定により環境負荷低減の取組を行う生産者や事業者の支援体制が整い、認定生産者は3万5千経営体を突破(2026年3月末時点)、地域一体で有機農業を推進するオーガニックビレッジも150地区を超えるなど、着実な進展を見せている」と成果を述べた。
その一方で、生産現場を取り巻く環境は激変している。近年における記録的な猛暑や気候変動は、農産物の品質低下や減収といった形で各地に深刻な打撃を与えている。さらに、ウクライナ危機や中東情勢の緊張化に象徴される国際情勢の緊迫化が、化学肥料原料や燃油などの急激な高騰を招いた。近藤グループ長は「生産現場や消費者の皆様から、将来にわたる食料生産や供給への懸念の声が上がっており、これらに正面から答えていく必要がある」と、プラン策定に至った背景を語る。
「みどり戦略」の目標達成と、顕在化する農業課題の解決にあたっては、生産現場だけでなく、食料システム全体の連携強化が不可欠である。民間投資を推進し、食料安全保障の確保に向けた取り組みを進めるために、今回多様な専門家の意見を踏まえて、同プランが取りまとめられた。
「GX投資の呼び込み」を横断的課題に据え、個別施策を強化
同プランは、民間企業のニーズを生産現場への投資に結びつける「GX投資の呼び込み」を横断的課題に位置づけた上で、みどり戦略を加速化するための個別施策をまとめている。
横断的課題である「GX投資の呼び込み」においては、企業側が投資を判断するための客観的な「数字の可視化」を推進する。近藤グループ長は「重要技術の開発・実装の見通しや将来的な市場展望を企業に示す必要がある。この可視化に向けたロードマップなどの整理を、今年度末を目途に進めていきたい」と説明した。
具体的には、企業のニーズと生産現場をマッチングする「自然共生サイト」の支援証明書や、農山漁村振興への貢献活動に係るインパクト証明書の活用などによるCSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)、ブレンデッドファイナンス(官民投融資)など多様な投資手法の導入、リジェネラティブ農業(環境再生型農業)の日本型アプローチの明確化などを掲げ、企業の投資ニーズをとらえた案件形成と横展開を図る方針だ。
「気候変動対策」「有機農業」「再エネ」の三本柱
みどり戦略の加速化に向けた個別施策の強化としては、下記の3つの方向性を示した。
1. 気候変動への適応策強化
気候変動はすでに「未来の脅威」ではなく「現在の課題」である。白未熟粒の発生など、温暖化によって打撃を受ける稲作などにおいては、高温耐性を持つ品種の開発を支援するとともに、産地での普及を推進する[1]。地域計画や土地改良事業と連携し、産地単位での取り組み導入を進めるほか、スマート農業技術などを活用した労働環境の改善(熱中症対策など)を併せて推進する。
2. 有機農業の面的拡大と有機産地の形成
個々の生産者への支援に留まらず、有機JAS認証の活用や地域の多様な関係者の参画を通じて、有機農業の面的拡大を図る。国内外の有機マーケットを的確に捉え、持続的に成長する有機産地の形成を目指す。
3. 国産バイオマス・再生可能エネルギーの新たな活用
海外から輸入する化学肥料原料やエネルギーへの依存を低減するため、国内資源の徹底的な活用を進める。改質リグニンや高機能たんぱく質など、農林水産物由来の国産バイオマスの新用途利用を促すとともに、新たな再エネ資材の農業用施設への導入を推進し、国際情勢に左右されない食料生産の確保につなげる。

出典:農林水産省
これらの取り組みを通じて、環境価値が付加された食品などを「サステナブルフード」として消費者に普及することで、さらなる投資の呼び込みを目指す。近藤グループ長は「サステナブルフードに投資が呼び込まれ、市場で選ばれる形を作り出すことで、生産から消費までのシステム全体を持続可能なものへと発展させたい」との展望を示した。
さらに、2027年に開催される国際園芸博覧会「GREEN×EXPO 2027」の機会も活用し、持続可能な食と農の実現に向けた国民理解の醸成を図る方針だ。
稼げる農林水産業の実現へ
「みどり加速化GXプラン」は、民間資金と市場原理を巻き込み、農業を「持続可能なビジネスモデル」へと導く試みと言える。今後の具体的なマッチング案件の形成や予算措置、官民連携の進捗に注視したい。

















