トマト栽培の宿敵、終わりなきコナジラミと戦い
千葉県白子町は、外房・九十九里浜の温暖な気候にも恵まれ、トマトの施設栽培がさかんです。JA長生施設野菜部会の青年部長を務める田邉良太さん(田邉農園・代表)は、就農13年目のトマト生産者です。今も現役で共に農業を続ける祖父・父からハウスを受け継ぎ、自ら設備投資してロックウール栽培に切り替えました。環境制御やAI活用を取り入れながら収量・品質の向上に取り組んでいます。JAに出荷される大玉トマトは「長生(ながいき)トマト」の愛称で展開されており、田邉さんはそのブランド産地を支える一人です。

トマト栽培で最大の脅威はコナジラミです。「圧倒的に強敵で大嫌い」と田邉さんは言い切ります。コナジラミはトマト黄化葉巻病のウイルスを媒介し、発病した株は抜いて処分せざるを得ません。年1作で1株当たり約30段もの収穫が見込まれるトマトにとって、株を失うことは深刻な収量減に直結するのは言うまでもありません。
田邉さんは、トマト黄化葉巻病への耐性を持つ品種「桃太郎ホープ」を導入し、7月後半から8月頭に定植し、翌年7月上旬頃まで収穫を続けるという長期にわたる作型です。薬剤散布は定植後から収穫シーズンが終了するまで、多い時には週1回を基本としています。コナジラミの侵入を防ぐための物理的防除も徹底してきました。ハウスの天窓・サイドに目合い0.4ミリのネットを張り、株まわりには捕虫シートを設置し、入口は扇風機で送風して侵入を防いでいます。

気候変動下で被害拡大、コナジラミ大発生から得た教訓
ところが、昨年、田邉さんのハウスでは過去に経験したことのないほどのコナジラミの大発生が起きました。「去年はやらかしました、本当に」と田邉さんは振り返ります。トマト黄化葉巻病の耐性品種を導入していてもなお、被害を防ぎきれませんでした。
背景には気候の変化があります。7月後半から8月上旬に定植し、翌年7月上旬まで1年近くかけて栽培する作型のなか、これまで9月から10月ごろに大量発生していたコナジラミが、近年は暖冬の影響で11月ごろまでずれ込むようになり、対応が後手に回ったといいます。
トマト黄化葉巻病に感染した株を次々と抜かざるを得ず、収量は大幅に減少しました。被害の深刻さは、母親の言葉が物語っています。「樹がなきゃトマトは成らないんだからね」と怒られるほど、株が抜かれたハウスは寂しい状態だったと振り返ります。

この経験を受けて、2026年度はコナジラミ対策を一段と強化しました。目合いがさらに小さな防虫ネットを採用し、破れや隙間を徹底的に塞ぐため天窓のネットを張り替えました。加えて、抵抗性の観点からローテーションに使える薬剤の選択肢を広げることも課題となっていました。
現場が認めた新戦力。浸透移行性とハチへの安全性に信頼
そこへ登場したのが2026年3月に上市した新規殺虫剤「エフィコンSL」です。コナジラミ防除の新剤というだけでトマト生産者には大歓迎です。さらに作用機作の新規性とマルハナバチへの安全性の高さが、田邉さんの関心を引きました。
田邉さんのハウスではマルハナバチが受粉に欠かせません。9月中旬から翌6月まで活動するマルハナバチを守ることは経営の根幹に関わります。
「作用機作が違う。しかもハチに大丈夫となれば、間違いなく使えます」と田邉さんは話します。
同年3月、田邉さんは早速、「エフィコンSL」を防除ローテーションに投入しました。昨年の教訓から防除を強化していたこともあり、コナジラミの密度はもともと低かったものの、その後も爆発的な増加は起きませんでした。1棟目のハウスではこの1回の散布で防除が完了し、もう1棟では6月中旬に2度目の散布を予定しています。
「効いていることは間違いありません。去年と比べて確実にコナジラミを抑えています。母親も今年は最後まで樹があると喜んでいます」と田邉さんは笑顔で話します。

「手動の噴霧器散布では、どうしてもムラが生じます。コナジラミは葉の裏にいることが多く、行き届かない場所も出てきます。だからこそ、エフィコンSLの浸透移行性は非常に重要なんです」と田邉さんは強調します。エフィコンSLの浸透移行性により、散布が難しい場所にも薬剤が届くことで、効果をより確実に発揮できると評価しています。
産地全体で適期活用、長く使える剤に育てる
コナジラミ防除の新剤「エフィコンSL」の登場は、地域のトマト生産者たちの間でも大きな話題になっていました。産地の期待を受けて、青年部長である田邉さんは、BASFジャパンを部会に招いて説明を聞く機会を設けるほどでした。
エフィコンSLをどのタイミングで使うかは、農家によって考え方が異なります。農業事務所は定植直後の使用を推奨する一方、「残効が長いから定植直後よりもっと後まで取っておきたい」という生産者も少なくありません。田邉さんの場合、定植直後ではなく、コナジラミの多発が見込まれる重点防除時期に差し掛かったタイミングで投入する考えです。
「自分のハウスでは年間でも注意しなきゃいけない時期に2回使いたい。ジョーカー(切り札)的な存在になる」と田邉さんは明かします。今後の計画として、年間で多発が見込まれる11月と3月の2回、「エフィコンSL」を切り札として組み込む方針です。
「安心・安全でおいしいトマトを作って、多くの人に知ってもらいたい」と田邉さんは抱負を語ります。味への自信を強みに、長生トマトのファンを増やしていくことが収益面での目標のひとつです。

「地域全体でこの剤を信頼できるような使い方をしなきゃいけない」という田邉さんの言葉には、新剤を長く活用し続けようという産地全体への意識がにじみます。新しい作用機作の薬剤が加わることでローテーションはより柔軟になり、ウイルス媒介の要となるコナジラミを制することが、長生トマトの品質と産地の信頼を守り、田邉さんが描く未来へとつながっています。
取材協力
千葉県白子町
田邉農園 田邉良太さん
『エフィコン®SL』製品情報
有効成分: アクサリオン®(ジンプロピリダズ) 10.8%
登録番号: 第25005号
性状: 褐色~暗褐色澄明水溶性液体
毒性: 普通物(毒劇物に該当しないものを指していう通称)
危険物: 三石・Ⅲ・水溶性
有効年限: 3年
包装: 250ml×20本、500ml×20本(地域限定)
®=BASF社の登録商標
















