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シェア1%の木桶醤油が、なぜ今注目されるのか ~木桶発酵文化サミット2026現地レポ~

シェア1%の木桶醤油が、なぜ今注目されるのか ~木桶発酵文化サミット2026現地レポ~

「木桶による発酵文化サミット in 東京 2026」が、2026年6月25日(木)~27日(土)の3日間、渋谷ヒカリエ8階の8/COURTおよびd47食堂で開催されました。本イベントは、「木桶職人復活プロジェクト」とD&DEPARTMENT PROJECTが主催し、伝統的な木桶仕込み文化の継承と、その価値を次世代へつなぐことを目的としています。なぜ今木桶による醤油造りが注目されているのか。初日のキックオフトークでは、その背景にある社会的な潮流や、伝統技術をつないでいく意義について語られました。

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蔵元が手がける個性豊かな木桶醤油が一堂に

小豆島のヤマロク醤油5代目の山本康夫(やまもと・やすひろ)さんが発起人となって始動した「木桶職人復活プロジェクト」。背景にあったのは、木桶を製造・修理できる職人の消失という危機です。木桶の寿命は100〜150年とされ、現在使われている多くが戦前に作られたもの。このままでは数十年後に木桶仕込みの醤油そのものが消えてしまう可能性があります。
そこで山本さんは「使い手である醤油蔵自身が木桶をつくる」という決断をし、職人の技術継承と木桶づくりの復活に取り組んできました。現在では全国の醤油の蔵元が連携し、毎年小豆島で新桶づくりが行われるなど、新たな動きを見せています。

当日は、木桶職人復活プロジェクトに関わる蔵元が手がけた醤油の販売も行われ、会場にはおよそ10種類の醤油が並びました。濃口や淡口、うす口など、地域や製法の違いによって生まれる多様な味わいが一堂に会し、それぞれの個性が際立ちます。
中には、アイスクリームにかけることでコクと甘みを引き立てるユニークな醤油や、「塩と醤油の間」とも表現される軽やかな味わいで、カルパッチョのドレッシングにも合ううす口醤油など、新しい食べ方を提案する商品も見られました。

木桶の構造に触れる体験型ワークショップ

初日には体験型プログラムも行われました。ミニ木桶づくりワークショップでは、実際に木桶の側板を支えている箍(たが)編みを体験し、手のひらサイズの木桶を完成させるプログラムが行われました。素材の質感に触れながら、木桶の構造を理解できる内容です。 一見シンプルに見える木桶ですが、木材の組み方や締め方には高度な技術が求められます。参加者からは「木桶がどう編まれているのか興味があった。非常に楽しかった」「ミニでもとても難しい。実物で作る職人技術のすごさを感じました」といった声が上がっていました。

ワインにも通じる木桶仕込み醤油の楽しみ方

初日のキックオフトークには、ヤマロク醤油の山本康夫さんと、D&DEPARTMENTの相馬夕輝(あいま・ゆうき)さんが登壇し、若手蔵人である日東醸造の蜷川泰輔(にながわ・たいすけ)さんが聞き手を務めました。
伝統産業の多くは後継者不足に直面しています。しかし今回のサミットでは、木桶で醤油造りを続ける蔵元において、家業を継ぐために若手が戻ってきているというポジティブな兆しも語られました。外の世界で経験を積んだ後に蔵へ戻るケースも多く、蜷川さんもその一人です。
蜷川さんは、「このプロジェクトは同業他社の集まりなはずなのに、“奪い合う”という感覚がない」と話します。背景にあるのは、木桶醤油が市場全体のわずか1%にとどまっているという現実。その1%を奪い合うのではなく、「みんなで2%にしていこう」というのがこのプロジェクトの目的です。

進行役となった若手蔵人の蜷川泰輔さん

 

そんな文脈を受け、相馬さんに木桶仕込みの魅力について尋ねると、「木桶による発酵醸造が、ここまで続いてきたという事実そのものに価値がある」と語る。
さらに相馬さんは、木桶醤油ならではの面白さについてこう続ける。「同じ地域で、同じ原料を使い、ほぼ同じタイミングで仕込んだとしても、出来上がる醤油の味は大きく異なるんです」。実際に、山本さんの醤油と近隣の蔵の醤油を比べると、「全然味が違う」と相馬さんは言う。「最近思うのは、蔵元の人柄が味や香りに表れるのではないか、ということ」。これに対し山本さんも、「近隣の蔵元さんとは、大豆や種麹、産地、仕込みの条件は同じなんです。それなのに、うちの醤油はとにかく濃い。濃いものしかできないんですよ」と笑いながら同意する。実際、山本さんの醤油はうま味が非常に強く、使い方に悩むほどだと相馬さんも笑う。

ヤマロク醤油 山本康夫さん(写真左)、相馬夕輝さん(写真右)

こうした違いについて、山本さんは「ワインに近い」と表現する。優劣を競うものではなく、それぞれがその蔵、その人の味になっている——そのこと自体に価値があるという考えだ。相馬さんもまた、その点に木桶醤油の面白さを見出している。
地域の風土や桶の状態に加え、つくり手の個性までもが味わいににじみ出る。木桶醤油とは、まさに「人がにじむ発酵食品」であり、その奥深さこそが、いま改めて注目されている理由の一つといえるだろう。

伝統を受け継いだ若き蔵人たち

若手にも、山本さんの思いはしっかりと継がれています。
静岡県から参加した蔵人の深谷さんは、木桶仕込みで造り続ける理由について、「長年使い続けてくれるファンの存在が支えになっている」といいます。実際に深谷さんの造る醤油を親子何代にも渡って使い続けているお客さんがいます。
また、岐阜県の山川さんの蔵が手がける“たまり醤油”は、全国でも希少な存在。かつては「田舎くさいもの」という気持ちがあったものの、近年の木桶醤油の広がりもあり、「ローカルな食文化を深掘りしたいという人が増えている中で、たまり醤油に興味を持ってもらえる機会が増えている」と話します。
家業である醤油蔵を継ぐ立場として9年目を迎える山川さんは、醤油造りは知れば知るほど奥深い世界だと実感しているとのこと。「将来の世代には『大変だからやめておこう』ではなく、『やりたい!』と思ってもらえる環境をつくりたい」そう語る上山さんの言葉からは、木桶醤油を取り巻く環境が少しずつ変化していることがうかがえました。

岐阜でたまり醤油を作る山川さん

木桶職人復活プロジェクト

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