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しぶとすぎる「最強雑草」スベリヒユ。 抜いても生えてくる驚異の生命力の秘密と、農家が実践する防除の鉄則

久保田 夕夏

ライター:

しぶとすぎる「最強雑草」スベリヒユ。 抜いても生えてくる驚異の生命力の秘密と、農家が実践する防除の鉄則

畑や畦、道ばたで見かける、ぷっくりと肉厚な葉をもつスベリヒユ。山形県では「ひょう」と呼ばれ、食用にもされてきた身近な植物です。一方で、畑に生えると非常に厄介な雑草でもあります。乾燥に強く、抜き取ったあとも茎や株元から再生することがあり、さらに多くの種子を落として翌年以降の発生源になるという生命力の高さから、巷では「最強雑草」と呼ばれています。この記事では農家の目線から、スベリヒユの生態や見分け方、しぶとい生命力の理由、そして畑で増やさないための防除と管理のポイントを解説します。

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農家を悩ませる「スベリヒユ」とはどんな植物?

スベリヒユの基本情報と分類

スベリヒユは畑、畦、道ばた、庭、荒地などに生息する一年生草本です。地を這うように生育するため、背は低く、20cm程度のものが多くみられます。5月上旬頃から発芽し、6月から9月下旬まで開花を続けます。日向を好む植物で、日陰ではあまり見られません。

雑草名(漢字名) スベリヒユ(滑莧)
分類 スベリヒユ科
学名 Portulaca oleracea L.
繁殖 種子
分布 日本全土
地上部生育期間 5~10月
開花・結実期 6~9月頃
草丈 15~30cm
生活型  一年草

なぜ抜いても枯れないのか?脅威の生命力の正体

スベリヒユは引き抜いてもなかなか枯れません。その強さは掘り上げて根を上にしておいてもなかなか死なないくらいです。実はスベリヒユは多肉質の葉を持ち、葉に水分を多く蓄えています。確かに外見からも他の雑草に比べて、葉が肉厚でぷっくりしていますよね。

そのため、葉茎がしばらく水分を保ち、耕うん・草削り後に残った茎片が湿った土に触れると再発根して“新しい株”のように復活することがあります。鎌で根を切って、根がついていた部分を上にしておいても、一雨降れば簡単に根が出て再生してしまうのです。また、除草剤の散布でも生き残り数週間後に再生することがあります。
 

乾燥に強く、除草剤すら弾く「クチクラ層」の秘密

一般的に、植物の葉の表面はクチクラ層と呼ばれるワックス状の膜で覆われています。クチクラ層は、葉の内部から水分が失われるのを抑え、乾燥から植物の体を守る働きがあります。また、除草剤の薬液が葉面に濡れ広がったり、植物体内へ浸透したりする際の妨げになることがあります。そのため、スベリヒユのようにクチクラ層が比較的発達した葉では、薬液がかかっても十分に効かない場合があります。

茎と根の広がり方

イネ科雑草などは立ち上がって伸びるものが多い一方で、スベリヒユは分枝して地面を這うように横に広がって伸長し、上部だけが斜めに立ちます。つまり、太く高く立ち上がる構造に頼らず、地表を覆うように広がる、匍匐性という戦略をとっています。根はイネ科雑草のような細かいひげ根だけの根系ではなく、中心に直根があり、その周囲に細かい根を広げるタイプです。根は比較的浅いため若い株なら抜き取りやすいです。

光合成能力の高さがもたらす「爆速成長」

スベリヒユの大きな特徴は、光合成のタイプにあります。一般的な植物の多くはC3型光合成を行いますが、スベリヒユは高温や強い日差しのもとで有利に働きやすいC4型光合成を行う植物です。C4型は二酸化炭素を効率よく利用しやすく、夏の強い光の下でも旺盛に生育できる要因のひとつと考えられます。さらにスベリヒユは、乾燥ストレスがかかるとCAM型光合成も行うことが知られています。

CAM型光合成では、夜間に気孔を開いて二酸化炭素を取り込み、リンゴ酸などの有機酸として液胞に蓄えます。そして昼間は気孔の開きを抑えながら、その有機酸から二酸化炭素を取り出して光合成に利用します。このため、乾燥した場所でも水分の蒸散を抑えながら生き残りやすいのです。

主な生息地

スベリヒユは温帯から熱帯まで世界中に広く分布し、日本でも全国各地で見られる雑草です。畑や道ばた、庭など、日当たりのよい場所を好み、遮光下では生育が著しく阻害されます。水田よりも野菜畑で発生しやすく、特に作物の初期生育が遅く、地表に光が届きやすい畑で多く見られます。一方で、初期生育が早く、早い段階で地表を覆う作物の畑では、比較的発生が少ない傾向があります。

スベリヒユに似ている雑草と見分け方

コニシキソウ


高さは2~10㎝で、地面を這うように生育しているとスベリヒユに似た感じに見えます。しかし葉に毛がないスベリヒユとは違い、コニシキソウには、全体に白色の軟毛が生えていますし、葉の大きさも1cm程度でスベリヒユに比べ小さめです。葉の中央に黒紫色の細長い斑紋があるとわかりやすいですが、斑紋はないこともあります。

イヌビユ


イヌビユも夏の畑で見られ、赤みを帯びた茎をもつことがあるためスベリヒユと見間違われることがあります。しかし、イヌビユはスベリヒユとは違い葉が薄く、株元から斜めに立ち上がります。また、スベリヒユの花は黄色なのに対し、イヌビユは茎先や葉腋に緑色の花穂をつける点で見分けられます。

スベリヒユを放置するとどうなる? 速やかに駆除すべき理由

地表を覆って作物の成長を妨げる

スベリヒユは、茎を地面に這わせるように伸ばし、株元から四方へ広がっていきます。放置すると地表を覆うマット状になり、発芽したばかりの野菜や、初期生育の遅い作物に光が届きにくくなります。その結果、作物の生育を妨げる原因になります。また、スベリヒユは乾燥に強い雑草です。雨が少なく、作物の生育が停滞しやすい条件でも、スベリヒユは比較的旺盛に成長を続けることがあります。乾燥で作物が弱っている間にスベリヒユが広がると、光や養水分をめぐる競合がさらに強まり、被害が拡大しやすくなります。

一株で2万粒も。非常に多い種子数

スベリヒユは、主に種子で繁殖する雑草です。小さな株のうちから開花し、約3か月にわたって次々と花を咲かせるため、放置すると多くの種子を畑に落としてしまいます。1つの果実には50~70個ほどの種子が入り、個体によっては1株で20,000粒もの種子をつけることがあります。さらに、温暖地以西では年に3~4回世代を繰り返すことができ、短期間で発生量が増えやすいのも特徴です。土の中に落ちた種子は4年以上生存することがあるため、いったん種が落ちてしまうと、翌年以降も発生が続きやすくなります。

農家が実践する「スベリヒユ」の効果的な防除・駆除方法

種子の発芽を防ぐ

スベリヒユは出芽する深さが浅く、2cm程度が限界で、0.5cm前後からの出芽が多いとされています。そのため、出芽前に使用する土壌処理剤の効果が比較的出やすい雑草です。発生を抑えたい場合は、出芽前に土壌処理剤を用いると効果的です。また、深く耕して種を地中に埋めてしまうやり方もあります。2cmよりも深いところに埋めてしまえば発芽がかなり難しくなるため、翌年の発生数を減らすことが可能です。

草かき・手取りで防除する方法


生育初期であれば草かきや中耕によって比較的簡単に防除できます。生育が進んだ株は、初期に比べると手間がかかりますが、手取りや草かきで取り除きます。除去した株は畑に放置せず、畦畔や道ばたなど圃場外へ運び出し、しっかり乾燥させるか、堆積して完全に腐らせましょう。

除草剤を使った防除

生育初期に選択性の茎葉処理剤を使用して防除すると効果的です。大きく成長してから除草剤を散布した場合、葉が落ちても茎が生き残り、そこから再生することがあります。そのため、茎まで確実に枯らすことが重要です。たとえば、グリホサート系除草剤のラウンドアップマックスロードでは、一般的には100倍の濃度で使用されることが多いですが、スベリヒユを完全に枯らすには50倍が必要とされています。

また、接触型の茎葉処理剤のうち、速効的に作用するパラコート系除草剤では、茎まで枯らしやすいとされています。茎まで枯れれば、根が残っていても再生する可能性は低くなります。ただし、除草剤は作物や使用場所、雑草の生育段階によって使える種類や濃度が異なります。使用前には必ず各製品のラベルを確認し、登録内容、使用時期、希釈倍率、使用回数を守って適切に散布しましょう。

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スベリヒユの繁殖を防ぐ管理方法

種子による繁殖を抑える

スベリヒユは基本的に種子で繁殖する雑草です。前述の通り、非常に多くの種子をつけるため、管理の基本は種子を落とさせないことが重要です。出芽後、比較的早い段階から開花・結実するため、特に生育の早い夏場は、小さな株のうちから次々に開花します。

まだ小さいから、と油断せず、スベリヒユが生え出したらすぐに対処し、圃場内に種子を残さないようにしましょう。一度種子を落とさせてしまうと、翌年以降も発生源になります。スベリヒユの管理では、「大きくなってから取る」よりも、「種をつける前に取る」ことが何より大切です。

除草した株の再生を防ぐ

除草した株が湿った土の上に置かれたり除草後に雨が降ったりすると、再び根がついて活着したり、茎から発根することもあります。そのため、除草後の株は畑に置きっぱなしにせず、圃場外へ持ち出して処分するか、しっかり乾燥させて再生できない状態にします。特に雨の前後や灌水後など、土が湿っている時期は再活着しやすいため注意が必要です。

駆除後のメンテナンス方法


庭や通路などで絶対にもう草を生やしたくないという場合は防草シートの設置が大変効果的です。光が当たらないと芽を出すことができず、たとえ芽を出したとしても光合成ができないのでそれ以上成長することができません。

畑の場合はマルチがけをしておくと発生を防ぐことができます。特に夏場の雑草の生育スピードは驚異的です。炎天下での除草作業を考えると、マルチがけにかかる時間や費用を差し引いてもあまりあるほどの効果を実感しやすいでしょう。

実は食べられる? 「栄養価」にも注目が集まるワケ

スベリヒユは、地域によっては昔から食用として利用されてきた植物です。リンゴ酸などの有機酸による酸味があり、独特のぬめりもあって料理のアクセントになります。山形県では「ひょう」と呼ばれ、おひたしにしたり、干して保存食にしたりする食文化があります。

また、「ひょう」という名前にかけて、正月に「ひょっとして良いことがありますように」と願いを込めて食べられる縁起物でもあります。海外ではスベリヒユとよく似たタチスベリヒユが栽培品種として流通しており、フランスではサラダなど、メキシコでは煮込み料理に使われています。

栄養面でも、スベリヒユはたかが雑草と侮れません。オメガ3脂肪酸の一種であるα-リノレン酸をはじめ、カリウム、ビタミンA・C、カルシウム、鉄分などを含みます。また、抗酸化に関わる成分として知られるグルタチオンも含まれており、近年は栄養価の高い野草としても注目されています。

中国では「馬歯莧(ばしけん)」という名前で知られ、薬用植物として利用されてきた歴史もあります。伝統的には、下痢や赤痢、湿疹、腫れものなどに用いられてきたとされ、食用・薬用の両面で人々の暮らしに関わってきた植物です。

まとめ

スベリヒユは、山形県などで食用にもされてきた身近な植物です。肉厚な葉や独特のぬめり、酸味を楽しむ地域もあり、単なる厄介者とは言い切れない魅力もあります。一方で、畑に生えると乾燥に強く、地面を這うように広がって作物の生育を妨げることがあります。抜き取った株や茎片が湿った土で再び根づいたり、多くの種子を落として翌年以降の発生源になったりする点にも注意が必要です。食べる場合は安全な場所で採れたものを利用し、畑で増やしたくない場合は小さいうちに取り除き、種子を落とさせない管理を心がけましょう。

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