ヘクソカズラとは? 名前の由来と生態の特徴
基本情報と分類
ヘクソカズラは畑や草地、道ばたなどに生息するツル性の多年生です。地を這うように生育し、フェンスや樹木を見つけるとよじ登って行きます。開花期は概ね7月から10月で、真夏に白と赤紫の小さな花が咲き、秋には黄褐色の実をつけます。
| 雑草名(漢字名) | ヘクソカズラ(屁糞葛) |
| 分類 | アカネ科 |
| 学名 | Paederia scandens |
| 繁殖 | 種子、地下茎 |
| 分布 | 日本全土 |
| 地上部生育期間 | 通年 |
| 開花・結実期 | 7~10月頃 |
| 草丈 | 2〜3m |
| 生活型 | 多年草 |
名前の由来にもなった、悪臭の正体と特徴
ヘクソカズラの名前の由来ですが、まさに「屁」や「糞」のような臭いがするから、ということで名付けられました。日本人だけがこうした意地悪な名前をつけたわけではなく、英語では「スカンクのツル」を意味するSkunk vine、中国語では「鶏の糞のツル」という意味の鶏屎藤と呼ばれます。学名のPaederiaも悪臭に関係する言葉に由来しており、もはや世界各地で悪臭認定された植物といえるでしょう。
この悪臭はメチルメルカプタンという成分をはじめとする臭気成分によるものです。なぜこのような悪臭を放つかというと、確かなことは明らかではありませんが、害虫から実を守るためであると考えられています。ちなみにこの臭いは葉や実を傷つけた時に放出されるもので、傷をつけなければ普段は臭くありません。
「サオトメバナ」という別名も。花と実の見た目
ひどい名前の話ばかりしていましたが、実は「サオトメバナ」や「サオトメカズラ」という大変かわいらしい別名も持っています。早乙女というのは古くから田植えをする女性や、田の神様に仕える神聖な役割を持つ若い女性のことを指し、ヘクソカズラの花がその姿を彷彿させることが由来と言われています。

ヘクソカズラの花(出典:関東森林局)
花弁の縁は白く、内側は紅紫色。花の長さは1cmくらいで確かにとても可愛い花です。この可愛い花からオナラの臭いがするなんて、ギャップ萌えにもほどがあります。中心の赤い部分がお灸を据えた跡に見えることから、「ヤイトバナ(灸花)」という別名もあります。
ヘクソカズラが好む環境と驚異の繁殖力
ヘクソカズラは日当たりを好みますが、半日陰でも育つタフさを兼ね備えています。日本全国の道端、畑、庭、林の縁や草地、垣根などでも普通に見られます。多年草なので一年で枯れてしまうわけではありません。越冬したほふく茎の節から4月頃に萌芽し、ほふく茎やつるを伸ばします。特に成長が旺盛だった茎は木化し、翌年たくさんのほふく茎を発生させます。こうなると、刈っても刈っても毎年ヘクソカズラが生えてくることになります。
似ている植物との違いは?ヘクソカズラの見分け方
ヤブガラシとの見分け方
同じくツル性の多年草であるヤブガラシとは葉の形が全く違います。ヘクソカズラの葉は卵型で縁もつるっとしており、山芋やクズの葉を思い起こさせる形をしています。一方のヤブガラシは葉にギザギザがあります。また、一枚の葉が5枚の小さい葉から構成される「複葉」という形態をとっています。その姿が鶏の足のように見えることから鳥足状複葉と呼ばれます。形では見分けがつかないという方は、葉を手で潰して臭いを嗅いでみれば臭い方がヘクソカズラです。
アマチャヅルやカラスウリとの違い

アマチャズル(出典:環境省生物多様性センター)
アマチャヅルもヤブガラシ同様に鳥足状複葉をもつため、葉のつき方が見分ける時のポイントです。また、花は黄緑色で星形をしており花弁がとても細いので、丸くて白い花を咲かせるヘクソカズラとは全く違います。
カラスウリは「ウリ科」なので、幅広で表面に毛のはえた葉を持っています。また、夜にしか咲かない花は白く縁部が糸状に広がるという大変珍しい形をしています。実は大きく、熟すと真っ赤に染まるのでとてもわかりやすいです。
ヘクソカズラを放置するとどうなる?
1. 作物や庭木に巻き付き、日光を遮る
ヘクソカズラが作物や庭木を覆うと、下になった葉に光が届きにくくなります。光合成できる面積が減るだけでなく、ツルや葉の重みもかかります。特に植え付けて間もない果樹の若木や庭木、背丈の低い作物は注意が必要です。樹勢の弱い若木が長期間覆われれば、生育が大きく抑えられる可能性があります。太い成木がすぐに枯れるような雑草ではありませんが、放置すれば剪定、摘果、収穫などの作業をしにくくし、果樹園の管理コストを確実に増やします。
2. 圧倒的な成長スピードで周囲を覆い尽くす
ツル植物は、周囲の植物やフェンスを足場にして成長するため、条件が整うと驚くほど速く広がります。さらにヘクソカズラは多年草です。地下部に蓄えた養分を使って春から次々とほふく茎を伸ばせるため、種から発芽する一年生雑草より早く生育を始めます。周りの草がようやく発芽し始めたころに、ヘクソカズラだけが昨年までの貯金を使ってロケットスタートを切るのです。発見が遅れるほどツルの本数が増え、株元を探すことも難しくなります。
3. 収穫作業の邪魔になり、臭いが作物に移るリスクも
果樹の枝や支柱、ネット、フェンスなどに複雑に巻き付くと、剪定や収穫のたびにツルを外さなければなりません。無理に引っ張ると、作物の枝や新芽を傷つけてしまう場合があります。刈払機や管理機などを使用する場所では、長いツルが回転部や車軸に絡んで厄介です。度々エンジンを止めないといけないのは草刈り作業のストレスTop3に入る気がします。
葉や茎を大量にちぎると、一時的に手袋や衣服へ臭いがつくことがあります。特に茶畑では収穫時にヘクソカズラが混入することは悪臭による茶品質の悪化が懸念されるため早めに駆除する必要があるとされています。
4. アブラムシなど害虫の温床になりやすい


畑の周囲で雑草が密生すると、さまざまな昆虫の生息場所になります。さらに通気性も悪くなり、病気の温床となることもあります。ただし、果樹園などではすべての草を完全になくすのではなく、作物に接触させず、管理できる範囲に抑えることが重要な場合もあります。実際にツル性のヘクソカズラをカバークロップとして、地表面を覆ってマルチのように活用する人もいます。また、ヘクソカズラから多くのカブリダニが確認され、果樹園における天敵温存植物の候補として研究された例もあります。しかし、この場合も繁茂しすぎると作物に悪影響を与えてしまうため決して放置して良い訳ではなく、適切な管理が必要となってきます。
【農家が実践】ヘクソカズラを効果的に駆除するアプローチ
1.株元を探して地下部まで掘り取る
発生量が少ない場合は、手作業で地下部を取り除く方法が基本です。ツルが何重にも絡んでいると、一つの株に見えて実際には複数の株元が存在することがあります。目についたツルだけを引き抜くのではなく、地表付近をよく観察して探し出してください。
土が乾いて硬い日は地下部が途中で切れやすいため、雨の翌日や、あらかじめ土を湿らせた後に作業すると掘り取りやすくなります。古い株では株元が木質化し、手だけでは抜けない場合があります。無理に引っ張ると腰を痛めたり、ツルが跳ねて顔に当たったりするため、スコップなどを使って少しずつ掘り出しましょう。
2.除草剤を使用する
グリホサート系(吸収移行型)が効く理由
発生範囲が広く、掘り取りや刈り取りだけでは管理できない場合は、除草剤の使用を検討します。多年草のヘクソカズラは根が残っていれば再生してしまうため、葉から吸収された成分が植物体内を移動する吸収移行型除草剤が候補になります。
代表的な有効成分の一つがグリホサートです。グリホサート系除草剤は、葉や茎から吸収され、植物体内を移行して生長点や地下部へ作用します。そのため、散布直前にツルをすべて刈り取ってしまうと、薬液を吸収する葉がなくなります。葉がついている時に散布を行いましょう。また、木に巻き付いている場合は薬剤が木にかからないようにつるを外してから散布します。製品によって、使用できる作物、適用雑草、使用時期、希釈倍率などが異なります。必ず手元の製品ラベルと最新の農薬登録情報を確認してください。
【農家の裏ワザ】周囲の作物に薬害を出さない「スポット塗布法」
グリホサートなどの非選択性除草剤は、ヘクソカズラだけを見分けて枯らしてくれるわけではありません。ヘクソカズラに除草剤を散布しようとして薬剤が木にもかかってしまえば、木まで枯れる可能性があります。
そんな時、刷毛やスポンジで塗る「スポット塗布」であれば、ピンポイントでヘクソカズラだけを駆除することが可能です。やり方は簡単で、いつもは噴霧器に入れている除草剤を刷毛などで葉に塗るだけです。また、ツルを切断して切断面に染み込ませる方法もあります。ただし、農薬はラベルに記載されている使用方法でしか使えません。「雑草茎葉塗布」「注入処理」などとして記載がある製品に限り、指示倍率を守って実施してください。
もう生やさない!ヘクソカズラの繁殖を防ぐ管理方法
勝負は夏前!開花・結実の前に刈り取る
ヘクソカズラは「ほふく茎」を出して再生するため、種ができないようにすれば根絶できるというわけではありません。それでも、開花や結実の前に刈り取り、新しい種子が周囲へ供給されることを防ぐのは効果的です。花が目立ち始めてから慌てて駆除するより、春から初夏に伸び始めたツルを見つけて処理する方が、ツルも細く、株元も探しやすいため作業が楽です。特にフェンス、生け垣、果樹の株元、資材置き場の周囲など、「毎年同じ場所から出てくる地点」を重点チェックポイントに入れておきましょう。

マルチングや防草シートで光を遮る
掘り取り後の裸地では、防草シートや厚めの有機物マルチを使って新しい芽の生育を抑えます。防草シートを敷く場合は隙間が開かないようにシート同士を十分に重ね、端や穴から芽が出ないように固定します。わずかな隙間でもヘクソカズラは目ざとく見つけて伸びてくることがあります。すでに太い株元が残っている場所へシートを置くだけでは、完全な駆除にはなりません。先に株元を掘り取るか、再生芽を繰り返し処理したうえで、予防策として使用しましょう。

駆除した後のメンテナンスと定期チェック
取り残した地下部からの再生に注意
ヘクソカズラは、葉っぱや茎が見えなくなっても「ほふく茎」が生き残っていれば再生します。掘り取りの際に地下部を途中で切ってしまった場合や、複数の株を一株だと思って処理した場合は、数週間後に新しい芽が出ることがあります。駆除したら終わりではなく、春から秋まで定期的に同じ場所を確認しましょう。小さな再生芽の段階であれば掘り取りも簡単です。一度定着を許すと完全に根絶するのは簡単ではありません。「今年はツルを作らせない」「来年は再生本数を減らす」と、複数年かけて密度を下げる視点も必要です。
グランドカバー植物を植えて隙間を減らす
駆除後の地面が裸地のままだと、ヘクソカズラを含むさまざまな雑草が再び入り込みやすくなります。管理しやすいグランドカバー植物や芝を植え、地表の隙間を減らす方法もあります。ただし、グランドカバーを植えれば、すでに定着したヘクソカズラを枯らせるわけではありません。なんならヘクソカズラが我こそはグラウンドカバーとして手をあげてしまう可能性もあります。まずはヘクソカズラの密度を十分に下げ、その後の侵入や実生の定着を抑える補助的な方法として活用しましょう。グランドカバーの中からヘクソカズラが再生した場合は、見つけ次第取り除きます。
ただの悪臭雑草じゃない?ヘクソカズラの意外な一面と活用法
冬の実はドライフラワーやリース素材になる

秋から冬に黄褐色に熟した実は、乾燥すると光沢のある小さな玉のようになります。茎についた状態で長く形が残るため、リースやドライフラワーの素材として利用されることがあります。リースで一般的な赤い実も可愛いですが、渋い黄色はなかなかおしゃれな味を出してきます。葉や実は潰さない限りは臭くないので、臭いも気にせずに使えるでしょう。
薬や食用として利用してきた地域もある
ヘクソカズラは、中国などでは「鶏屎藤」と呼ばれ、伝統的に利用されてきました。日本でも、熟した果実を潰した汁を、しもやけやあかぎれに塗ったという民間利用が伝えられています。東アジアや東南アジアの一部には、近縁種を含むPaederia属の葉を食用にする文化もあります。
まとめ
ヘクソカズラは、名前や臭いばかりが注目されますが、ツル性、多年生、地面に接した茎からも発根するという、雑草としてはかなり厄介な性質を持っています。一度広範囲に広がると、見えているツルを取り除くだけでは駆除できません。可愛い花やリースにも使えるところは魅力的でもありますが、農地や庭で見つけたときはしっかり株元まで確認しておきましょう。





















