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生産量日本一!白神山地の麓で育つ“食べるエメラルド”じゅんさい【ファームジャーニー :秋田県三種町】

連載企画:ファームジャーニー

生産量日本一!白神山地の麓で育つ“食べるエメラルド”じゅんさい【ファームジャーニー :秋田県三種町】

太陽の光を受けるとヌメリがキラキラ輝くため、“食べるエメラルド”と呼ばれているじゅんさい。日本のじゅんさいの9割が生産されているという、日本一のじゅんさいの栽培地として知られているのが、秋田県山本郡三種町です。「流しじゅんさい」などのイベントも行われているという三種町から、じゅんさいレポートをお届けします。

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生産量日本一!白神山地の麓で育つ“食べるエメラルド”じゅんさい【ファームジャーニー :秋田県三種町】
写真提供:近藤大樹さん

つるりとした食感が特長の、高級食材として珍重されている「じゅんさい」。日本料理店などで、初夏の碗ものなどで提供されます。
今回は、日本一のじゅんさいの産地である秋田県三種町(みたねちょう)を訪ね、この地で100余年、じゅんさいを栽培している安藤食品の安藤賢相(あんどう けんすけ)さんに、じゅんさいについておうかがいしました。町をあげてじゅんさいを盛り上げる取り組みについても、併せてご紹介します。

「食べるエメラルド」と呼ばれるじゅんさい

「食べるエメラルド」と呼ばれるじゅんさい

じゅんさいは水面に葉を広げる水草の一種で、きれいな淡水の沼や池で育ちます。食用となるのは、その新芽や茎の部分。ゼリー状のヌメリに覆われており、つるりとした食感が楽しめます。
「じゅんさいは虫や水質悪化に弱く、このヌメリで外敵や病原菌からガードしているのです」と、安藤さん。太陽の光を受けるとヌメリがキラキラ輝くため、“食べるエメラルド”と呼ばれているそうです。

「食べるエメラルド」と呼ばれるじゅんさい
写真提供:近藤大樹さん

深さ1メートルほどの沼底にじゅんさいは根を張り、そこからたくさんの茎を伸ばして楕円形の葉を水面に浮かべます。 じゅんさいの古名は「蓴(ぬなわ)」。ぬなわとは、「沼縄」からきた言葉で、沼の中で茎が縄のように絡まりながら育っていく様子に由来しているそうです。古事記や日本書紀に、じゅんさいに関する記述があり、日本では昔から食用とされてきたことがうかがえます。

毎年6月の中旬になると、じゅんさいの花が咲き始めます。写真提供:近藤大樹さん

じゅんさいの収穫期は4月下旬から9月上旬。最盛期は6月です。毎年6月の中旬になると、じゅんさいの花が咲き始めます。葉と葉の間から顔を出す小指の先ぐらいの小さな赤い花で、日中に開き夕方に水没し、結実します。茎の部分はゼリー質で覆われており、赤い雄しべの部分が伸びて花粉を出し、受粉をします。
「花が咲くころになると収穫量が減少するため、収穫を早めに行う合図にもなるんですよ」

じゅんさい生産日本一!秋田県三種町

かつて日本各地で生育していたじゅんさいですが、47都道府県のうち、今や4県で絶滅、21県で絶滅または準絶滅危惧種となりました(*1)。そんな中、日本一のじゅんさいの栽培地として知られているのが、秋田県山本郡三種町です。日本のじゅんさいの9割が、三種町で生産されているのだとか。

じゅんさいは、きれいな水でしか育ちません。生活排水や農薬・除草剤などが生息沼に流れ込むと、じゅんさいは枯れてしまいます。

秋田県北部に位置する三種町は、世界自然遺産の白神山地と出羽丘陵に囲まれており、山々からの清らかな伏流水が豊富です。こうした環境が、じゅんさい生産日本一を支えているのです。

じゅんさいの収穫

じゅんさいの収穫

安藤食品のじゅんさい栽培用の沼は全部で5つあり、広さは合計で2.1ヘクタールになります.。
じゅんさいの栽培・収穫は、一つ一つが手作業。除草も収穫も小船に乗って、葉をかきわけながら行います。不安定な小船の上でバランスを保ちながら、冷たい水の中に手を入れて行う作業は、見た目以上に手間がかかります。

親指の爪をじゅんさいの茎に当て、人差し指の第一関節と上手く挟んで摘み取ります

親指の爪をじゅんさいの茎に当て、人差し指の第一関節と上手く挟んで摘み取ります。じゅんさいのつるんとしたヌメリが滑りやすいため、経験がないとなかなか掴みづらいそうです。
また、じゅんさいの葉の下には新芽と若芽がくっついているため、それを傷つけないように摘み取る必要があります。

親指の爪をじゅんさいの茎に当て、人差し指の第一関節と上手く挟んで摘み取ります
写真提供:近藤大樹さん

さらに収穫後も手作業で大きさ別に選別し一つ一つ茎をカットしていかなければなりません。安藤食品では、大きさやカットの方法で、10から15ミリの極小若芽の「特選」、15から35ミリの中サイズを「上級」、余分なところを取り除いた「無選別」の3つのクラスに分けるなど、てまひまをかけて商品化しています。

三種町におけるじゅんさい活性化の取り組み

三種町は日本一のじゅんさいの産地ですが、その生産量は1991年に記録した1,260トンをピークに、2016年には440トンにまで減少しています。

そこで、三種町森岳じゅんさいの里活性化協議会(三種町役場 商工観光交流課)では、「流しじゅんさい」など、町をあげてじゅんさいを盛り上げる取り組みを実施しています。「流しじゅんさい」とは、流しそうめんのじゅんさい版で、水の中を流れてくるじゅんさいを上手にすくって食べるイベントです。子どもにも大人にも人気が高く、各地でこのイベントを開催しているそうです。

流しじゅんさい

写真提供:三種町森岳じゅんさいの里活性化協議会
写真提供:三種町森岳じゅんさいの里活性化協議会

安藤さん自身も、「じゅんさい生産日本一の呼び名が途絶えぬようにしたい」と、じゅんさいをもっと世に広めていくための活動を行なっています。その活動については、「若きじゅんさい栽培者の取り組み【ファームジャーニー:秋田県三種町】」でご紹介します。

安藤食品
住所:秋田県山本郡三種町森岳泉八日138
電話:0185-83-2165

三種町森岳じゅんさいの里活性化協議会(三種町役場 商工観光交流課)

参考
※1 じゅんさいJAPAN 
※2 三種町
※3 上田賢悦・清野誠喜「じゅんさいの産地マーケティングの実態と課題-加工業者を中心に」(『農林業問題研究』第191号・2013年9月)

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