コマツナの紹介
江戸時代、現在の東京都江戸川区小松川付近でコマツナが栽培されていたといわれています。名前がなかったこの野菜が江戸幕府に献上された際、「小松川」の地名からとって「コマツナ」と、8代将軍徳川吉宗が名付けたと伝わっています。
関東では昔から葉物野菜として需要があり、正月の雑煮などにも欠かせない身近な野菜です。現在でも関東地方で多く栽培されているコマツナですが、現在は関西でも消費が増えてきました。現在はチンゲン菜と掛け合わせた品種が主流ですが、地方品種が多い野菜でもあります。
葉物野菜の中でアクが少なく食べやすい上、栄養価も高いので、年間を通じて人気の高い野菜です。
鮮度のいいおいしいコマツナの見分け方
鮮度が良いコマツナは、葉が肉厚で鮮やかな緑色をしています。緑色は濃すぎないほうがいいとされています。葉の先端まで勢いよく伸びているもので、芯は太くしっかりしているものを選びましょう。もし根がついているときは、根が太いものが良いでしょう。
コマツナの栄養
コマツナは、骨や歯を作る材料となるカルシウムを100g中170mgと豊富に含んでいます。ビタミンKも多く含まれているため、骨の形成に関わるタンパク質も活性化させるので、成長期の子どもから大人まで積極的に摂りたい野菜です。
鉄分を含むので、貧血予防などに良く、食物繊維も多いため便通の改善や整腸作用が期待できます。まさにコマツナは栄養の宝庫です。
コマツナの保存方法
コマツナは生での保存にあまり適していません。生で保存する場合は乾燥を避けるため、湿らせた新聞紙で包み、ビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れましょう。生の場合は翌日には調理するようにしてください。長期保存したい場合には、購入した日にすぐにゆで、必要に応じて味付けをしてから冷蔵または冷凍保存するのがおすすめです。
コマツナの旬の季節
コマツナ本来の旬は秋から冬にかけてですが、市場の需要が高まっている現在では、通年で栽培され出荷、流通しています。特に、国内の都道府県別生産量でベスト3に連なる埼玉県、東京都、神奈川県では1年を通して出荷量にあまり変化はありません。
コマツナの下ごしらえ
茎が重なった部分に泥がたまりやすいため、ボウルに水をはり、茎を広げるようにしてしっかり泥を洗い流すようにしましょう。葉と茎では火の通る早さが違うので、加熱するときは茎を先に加熱し、そのあとに葉を入れるようにします。
味噌汁の具として使用したいときは、軽くゆでて小分けにして冷凍しておくと便利です。凍った状態のコマツナをそのまま鍋に入れ、出汁と味噌を合わせれば、短時間でコマツナの味噌汁が完成します。
コマツナをおいしくするワンポイント
コマツナは同じ葉物野菜のホウレンソウに比べてアクが少ないので、下ゆでの必要はありません。炒め物を作るときは、強火で短時間で炒めるようにすると、歯ごたえのいい食感に仕上がります。油揚げやちりめんじゃこなどと一緒に炒め煮にすれば、もう1品欲しいというときに便利です。
コマツナのカロテンを効率よく摂取したい場合は、リンゴなどの果物と牛乳を一緒にコマツナをミキサーにかけて青汁を作るのがおすすめです。牛乳に含まれる脂肪分はカロテンの吸収率を上げる効果があるほか、カルシウムとリンのバランスも良くなるため、カルシウムが吸収されやすくなります。
コマツナの種類
野沢菜
漬物でおなじみの野沢菜は、長野県在来のコマツナの一種。旬は11月から2月の冬の時期です。
仙台雪菜
仙台在来の漬け菜(漬物にする葉物野菜)の一種。葉が丸く縮れており、旨みと甘みがあるのが特長です。旬は12月から3月頃です。
後関晩生(ごせきばんせい)コマツナ
江戸時代から昭和40年頃の昭和中期までに確保されていた東京近郊の在来種や、在来の栽培法に由来する「江戸東京野菜」に登録されています。
三河島菜
漬け菜で江戸東京野菜の一種です。「仙台芭蕉菜」は、三河島菜の種を仙台に持ち帰り育てられた品種であることがわかっています。
鉄分を多く含み、カロテンやビタミンK、カルシウムを多く含むコマツナ。関東地方を中心に身近な野菜ですが、徳川吉宗が「コマツナ」という名前を付けたことをご存じの方は少ないかもしれません。江戸時代から現代まで日本人に愛され続けてきた野菜を、ぜひ食卓で味わってみてください。
参考:「野菜と果物の品目ガイド~野菜ソムリエEDITION」(農経新聞社)