農業界にはどんな風が吹いていますか?
農業は今、クールなビジネスとしての芽が現れています。
しかし、実際はどうなのでしょう。
座談会の最終回は、農業界について。
農業界にはどんな風が吹いていますか?
(座談会 参加者)
安保 満貴(あんぼ みつたか)さん
株式会社新しい風さとやま 取締役
https://agri.mynavi.jp/2017_10_31_9171/
石川 龍樹(いしかわ たつき)さん
任意団体 夢農人(ゆめのーと)とよた 会長、いしかわ製茶
https://agri.mynavi.jp/2017_12_22_13234/3/
佐川 友彦(さがわ ともひこ)さん
阿部梨園 マネージャー
https://agri.mynavi.jp/2017_12_07_12959/
柴海 祐也(しばかい ゆうや)さん
柴海農園 代表
農業のかっこよさと実体
石川:農業は決してかっこよくはない仕事です。私は口に入る物を作る以上、清潔さは心がけていますが、イケメンになりたいとか、かっこよくありたいとかは思わない。そんなことに時間をかけている暇があったら、畑にもっと手をかけるとか、作物を作ることに労力を費やしたい。
一生懸命、汗水たらして、つらいこと、ダサいこと、きついことをやるから良い農作物ができてお金をもらえる。学生に話すときは、それが素晴らしい職業だということを、伝えるように心がけています。
佐川:農業界ではかっこいい職業にしようという派と、別にそこを求めなくていいという派が、いらっしゃると思います。かっこいい職業にしてくださるなら、どうぞと思いますが、私も石川さんと同じで、かっこよさよりも実体を取ろうよ、という派です。もちろん、昔の3Kなどのマイナスイメージを埋めることも必要だと思いますが。
柴海:「かっこいい」「楽しい」は、人それぞれの価値観ですが、「ちゃんと養える」「食っていける」といった、リアルなところが一番重要なのかなと思います。作物を育てるのは皆楽しいと思いますが、仕事として実際どうかという点は重要です。
佐川:それで言えば、農家に雇用されている従業員への光の差し方はあってもいいのかも。農家と一緒にやっている従業員も、事業主と同じサイクルで1年間同じ仕事をしていて、志も一つですし。阿部梨園でも、辞めていった方はいます。個人の自由とはいえ悲しいですし、去ってしまう選択肢があるのは何らかのまだ完成形ではない部分があるのだと思います。農家が雇用できるようになるまでの、業界の過渡期かもしれませんね。
農業の酸いも甘いもリアルに見てもらいたい
石川:スター農家に集中していると、そこだけになってしまう。裾野のほうにもスポットを当ててほしいですよね。スター農家を見て、こんな風にできるんだって思って入ってきても、なかなかできるものではない。
私は昨年、農林水産大臣賞をいただくことができました。けれど、たまたま僕が獲っただけ。他の方も一生懸命やっています。
業界が注目されているのは良いことなので、農業を支えてくれる若手をぜひ呼び込んでもらいたいですが、農業界の現状を酸いも甘いも見てもらいたいですね。
柴海:酸いも甘いも、賛成です。リアルな情報を知ってもらいたい。農家って口下手だったりしますが、ライターの方にはグイグイ来てほしい。私は農家に会いに行くことが趣味でして、他の農家を見学に行ったり、農家を紹介する動画のリポーターをやることもあります。農家見学は趣味みたいなもので、アポイント無しに他県に行くこともあって。口下手な人ほど、すごく良い情報があったりしますね。
変化の激しい時代に自らもアクションを
安保:僕自身は、農業をしようと思って育ってきたのではないんです。子どものころから生き物を採ることが好きだったくらいで。それが今、自分が農業をしている。そういう意味では農業は、実はかなり懐が深い。土作業ばかりのイメージには収まりません。昔はそう言えたかもしれないけれど、今はまとまりきれないくらい広くなっているんじゃないかな。
佐川:個人の方は特に、みんな個性があります。話を聞いていて、つまらないということはない。それをやや誇張して「めちゃくちゃ面白い」と言っていると、めちゃくちゃ面白くなってくるんですよね。僕も阿部梨園では、僕が一消費者として梨を食べたときの「うまい!」を、いかに広げて共鳴させられるかだと思って、やっています。
マイナビ農業が始まって、WEBメディアが農業に来たかというのは、津々浦々皆さん感じているところだと思います。メディアじゃなくて、農業界のプレーヤーになってもらえたらいいと思います。農業してくださいという意味ではなくて、内側に入って仲間になってほしいです。
石川:マイナビさんが参入してくることは本当に追い風だと思います。一方で、これだけ変化の激しい時代です。農業界も一昔前に比べたら注目度が上がってきていますが、まだまだ厳しい。僕たちも自ら変えていく気持ちを持ってアクションをしていかないといけない。特にそういうのは、僕ら若手の使命であるかなと感じていますね。
編集後記:座談会を終えて
農業は広く深い。
全4回の若手農家の座談会に、その一端を垣間見ていただけたのではないでしょうか。1年の始まりの月、たくさんのことを語っていただきました。作る作物も地域も立場も異なる4人が語る、それぞれの取り組みは、農業を前進させようという想いに満ちていました。
座談会を終えて、「マイナビ農業の上に何か新しい生態系が生まれている気がする」と語ってくれた方がいました。「まだ、ぐちゃぐちゃだけれど」とも。
それは何か不思議な作物なのでしょう。農業の世界もボーダーレスになっています。マイナビ農業でたくさんの人と一緒に、それを育てていきたいと思います。
(マイナビ農業編集部)
聞き手・執筆:三坂 輝
マイナビ農業特集 新春座談会 どうなる?2018年日本の農業 Vol.1はこちら
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