岩手県の概要と主な取り組み
豊富な海の幸
太平洋に面した岩手県の海岸の総延長はなんと700キロメートルもあり、その沿岸や沖合は、黒潮・親潮・津軽暖流という3つの海流が交錯する、日本国内はもとより、世界屈指の環境に恵まれた天然資源の宝庫です。
一部の海岸は、外洋から打ち寄せる波を防いでくれるリアス式海岸と呼ばれる入り組んだ地形になっているため、漁場や養殖場を作る絶好の場所ともいえます。サケ・ワカメ・ウニなどを「作り育てる漁業」を積極的に進めています。
夏も涼しい気候が生み出す農産物
夏の間も冷涼な気候や、標高が高い土地などの地域特性を活かした野菜づくりも盛んです。春から秋にかけて偏東風「やませ」の常襲地帯である久慈(くじ)地方では、冷涼な気候を生かして、夏秋期に高品質の「寒じめホウレンソウ」を生産しています。
また、この「やませ」の影響を受けやすいため、コメの生産が不安定だった岩手県では、独特の「雑穀食文化」が発達してきました。近年の健康食ブームで雑穀が見直され、花巻市や二戸市、軽米町や九戸村などを中心に栽培されていて、雑穀の生産量1位を誇ります。
ブランド和牛「いわて短角(たんかく)和牛」
「いわて短角和牛」の特徴
食用牛肉は岩手県の主要農産物の一つですが、中でも有名なのが岩手が産んだブランド牛「いわて短角和牛」です。岩手県の中でも県北・沿岸地方で生産されています。
最大の特徴は、独特の「夏山冬里」の飼育方式。春から秋にかけて岩手の豊かな大自然の中で牧草を食べながらのびのびと育ち、雪深い冬は牛舎で肥育します。地元・岩手では「赤べこ」の愛称でも知られ、脂肪分が少ない赤身が主体で、牛肉本体の旨味が凝縮されていると評判です。
季節繁殖のため、出荷シーズンが集中しやすく、生産数も多くないため、希少な牛肉となっています。
名前の由来
「南部牛追い唄」にも歌われた「南部牛」に、明治初期にアメリカから導入された「ショートホーン」を交配したのがルーツです。
おいしい食べ方と加工品
いわて短角和牛は、ステーキやすき焼きはもちろんのこと、カルパッチョや煮込みのシチューなどにもぴったりな和牛です。ハンバーグやカレーなどに加工されて出荷されることもあります。
生産状況
いわて短角和牛は、県北、沿岸地域の中山間地域を中心に飼養されています。
自然・安全志向が高い生協などとの産直事業を中心に販売されている「牛肉本来の味が楽しめる赤身肉」、「素性の確かなヘルシー牛肉」として根強い人気を誇っています。特に、レストランなどの外食産業からの引き合いが強まっている和牛です。
リンゴ「きおう」
「きおう」の特徴
きおうは岩手県全域で生産されているブランドリンゴで、県の園芸試験場が開発した岩手オリジナル品種第一号の新種のリンゴです。
きおうの特徴は何といってもその鮮やかな黄色い色です。甘さと酸味のバランスが大変よく、果汁が多い早生品種のため、残暑にさっぱりとした味わいを楽しむことができます。生食のほか、ジュースなどの加工品としても出荷されています。
名前の由来
きおうは「黄色いリンゴの王様」「輝くような黄色いリンゴ」という意味で名付けられ、1994に品種登録されています。
生産状況
県内全域のリンゴ生産者に取り入れられており、きおうの市場評価が高まっていることから、急速に栽培面積が拡大してきています。
生ワカメ「春いちばん」

※画像はイメージです
「春いちばん」の特徴
岩手・三陸の外界の荒波の中で養殖され、品質の良さで定評のある重茂(おもえ)半島と田老(たろう)地区のワカメのうち、1〜2月に収穫する若い生ワカメは、香りと味がとても優れています。
塩蔵もボイルもしないため日持ちはしませんが、食物繊維とミネラルが他のワカメよりも豊富に含まれた新芽のワカメなので、海の成分がぎっしりと詰まっています。旬の時期限定の海からの贈り物です。
名前の由来
春を待つ1〜2月にかけていちばん最初に収穫するワカメであることから、この時期に吹く風に例えて名付けられました。
春いちばんのおいしい食べ方
軽く湯通しして、しゃぶしゃぶのようにして食べたり、湯豆腐に加えたり、冷やしてサラダに加えたりと、楽しみ方は無限大です。洗わずにそのまま味噌汁に入れることで、磯の香りが引き立ちます。
生産状況
従来はほとんど市場流通していないため、現在の知名度はそれほど高くありませんが、近年の健康志向の高まりから、優れた食材として業者や消費者から注目を集めるようになりました。取引量はこれから年々増加するものと予想されています。
※ 各品目の内容は、本調査時点(2014年9月~2015年)のものをベースに作成しています。一つの目安としてご理解下さい。
参考:『日本の地域食材2015年版』(NPO法人 良い食材を伝える会)