狩猟と言えばこれだ! 「大物猟」でねらう獣たち

イノシシ
イノシシ・ニホンジカ・ヒグマ・ツキノワグマ
獣猟は「大物猟」と「小物猟」に分類されます。大きな獣をねらう「大物猟」の獲物となるのがイノシシ(雑種のイノブタを含む)、ニホンジカ(ホンシュウジカ、エゾシカ等を含む)、ヒグマ、ツキノワグマです。肉がおいしく皮も活用できるため、古くから狩猟の対象とされてきました。

ニホンジカ
現代では農林業被害が深刻化し、全国で年間イノシシ約55万頭・ニホンジカ約62万頭(※1)が捕獲されています。しかし解体処理施設では、そのうちのわずか約8万頭(※2)しか処理できておらず、今後はジビエ肉の普及などで有効活用を推進することが課題となっています。
※1 環境省調べ(2015年度)
※2 イノシシとシカの処理頭数の合計・農林水産省調べ(2016年度)
ねらう狩猟者は少ないけれど……こんな動物も

タヌキ
タヌキ・キツネ・ノイヌ・ノネコ
身近な野生動物の代表とも言えるタヌキ、キツネも狩猟の対象です。「取らぬタヌキの皮算用」ということわざもある通り、昔の日本では、防寒着などにタヌキやキツネの毛皮が重宝されていました。
タヌキは畑を荒らすことがあり、被害が頻発する場合は中型獣用の箱わななどで捕獲します。狩猟者のあいだでは、タヌキもキツネも肉は非常にまずいとされています。
狩猟対象としてのノイヌ、ノネコは直接人間の助けを借りずに自然界で自活し、かつ繁殖しているものを言います。一時的に人間から離れて生活しているものは、捕ってはいけないノライヌ、ノラネコに分類されます。外見では区別できませんので、もし捕獲するときには地域住民から念入りに情報収集しなければなりません。
農業被害をもたらしている中型獣たち

アライグマ
アライグマ・アナグマ・ハクビシン・ヌートリア
狂暴な性格を持つアライグマは外来種です。野生化したものが増え続け、全国的に農業被害が深刻化しています。
アナグマは土中に巣穴を掘って生活する動物ですが、一部の地域でスイカ、トウモロコシなどの被害が広がっています。ムジナとも呼ばれ「同じ穴のムジナ」ということわざでも知られます。ちなみに、アナグマの肉はとってもおいしいそうですよ。
ハクビシンは甘いものが大好きで、糖度の高いブドウ、柿などが被害にあっています。
外来種のヌートリアは河川や沼などの水辺に生息していますが、草食性で、イネやハスなどを食べてしまうことがあります。
いずれも捕獲する際には主に箱わなが使用されますが、銃で仕留める狩猟者もいます。

ヌートリア
外見は愛らしいけれど……

イタチ(狩猟はオスに限る)
イタチ(オス)・チョウセンイタチ・テン・ミンク
見た目は可愛らしいのですが、イタチ(オスに限る)、外来種のチョウセンイタチも狩猟獣です。野生のイタチが民家の天井裏などで繁殖したり、農作物を食い荒らしたりすることも……。イタチの肛門付近には臭腺があり、激臭のする液を出すので厄介です。捕獲には小型の箱わなが使用されます。イタチのメスは捕ってはいけないので、注意が必要です。
テン、ミンクは毛皮が高級品とされています。特にテンの毛足は柔らかくて光沢があり、毛皮のなかでも最高級です。テンは全国的に分布していますが、対馬に分布するツシマテン(国の天然記念物)は非狩猟獣です。
ユキウサギ・ノウサギ・シマリス・タイワンリス
愛玩動物のイメージが強いウサギですが、実は古くから狩猟の対象とされてきた歴史があります。現在、日本で捕っていいのは全国的に分布するノウサギと、北海道のみに分布するユキウサギです。ヨーロッパではウサギ肉はジビエの定番で、クセが少なく食べやすいのだとか。

シマリス
シマリス(チョウセンシマリスを含む)と、外来種のタイワンリスも狩猟獣です。体形が似ているニホンリスは捕ってはいけませんので、要注意です。ちなみに、人気マンガ「ゴールデンカムイ」にリス肉の鍋料理が出てきますが、今の日本では狩猟者もリス肉はまず食べません。
タイワンリスは農作物を荒らすだけでなくニホンリスとの交雑も懸念されていて、小型の箱わなで捕獲を進めています。狩猟で外来種を排除することは、日本在来の野生動物の保護にも役立っているのです。
※上記の情報は2018年7月20日現在のものです。
※狩猟鳥獣については、都道府県によっては捕獲が禁止されているほか、捕獲数が制限されている場合があります。狩猟をする際には必ず登録都道府県に確認してください。
参考文献:「狩猟読本」(大日本猟友会発行)
【後編はこちら!】狩猟できる動物は48種に決められている! 後編・鳥類28種