地方創生フォーラムで語られた「地方創生と農業」
北海道上川町の事例を、当事者の目線から
地方創生フォーラムのトップバッターが、「地域の資源と外とのつながりで創る地方創生~北海道・上川町の挑戦」というテーマでの基調講演でした。講演では上川町町長の佐藤芳治(さとう・よしじ)氏、そして上川町の地方創生に大きな役割を果たした上川大雪酒造株式会社 代表取締役社長の塚原敏夫(つかはら・としお)氏により、具体的な取り組みが語られました。
さらに多角的に語り合ったパネルディスカッション
続いて、「“共創”で進める農業活性化」というテーマでパネルディスカッションが繰り広げられました。株式会社日本総研 創発戦略センターのシニアスペシャリスト・三輪泰史(みわ・やすふみ)氏をコーディネーターに、パネリストは上川町の佐藤町長、塚原氏に加え楽天株式会社 インベストメント&インキュベーションカンパニー 農業事業部の梅村周平(うめむら・しゅうへい)氏、株式会社マイナビ『マイナビ農業』事業部長の池本博則(いけもと・ひろのり)の4名で、会場を大いに盛り上げました。
地方創生を照らす連携を「共創」というキーワードのもとに企業がどのように農業とかかわっていくか、そして町としてどのような希望と課題があり得るのかなど、北海道上川町という具体的な事例を軸にしながら活発に話が進められました。
北海道上川町で育まれたもの
大雪山連峰のふもと、石狩川の源流。自然豊かな上川町
上川町は、北海道のほぼ真ん中に位置する人口約3700人の町です。日本最大の山岳公園「大雪山国立公園」のほか、国内外から年間200万人が訪れる「層雲峡温泉」など、地域には貴重な資源を持っていました。特産品であるダイコンは関東圏にも運ばれています。
町の地方創生について「層雲峡温泉は町の大きな財産ですが、その魅力・価値を高めるための施策を進めなければならない」と佐藤町長は基調講演で話しました。その一つが「大雪森のガーデン」。2013年7月のプレオープンを経て、2014年4月に全エリアがオープンした、大雪高原の季節の花々を楽しめる施設です。
「大雪森のガーデンのコンセプトは『おもてなしの森』です。大雪山の景観と自然の森と、その中にガーデンが調和しています。町民の癒しの森というような施設でもあります。町内交流と、外部の交流、さらにここを層雲峡観光と連動させて発信することが非常に大事だと考えています」
大雪森のガーデンの魅力として、特筆すべきはガーデンに隣接されたレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」。フレンチの巨匠である三國清三氏がオーナーシェフを務め、地元食材を使った料理をふるまっています。一流シェフが町でレストランを開いたことにより、層雲峡にある周囲のホテルも刺激を受け、レベルアップになったとも言います。
北海道出身の塚原氏がプロジェクトに参加
塚原氏は「フラテッロ・ディ・ミクニ」を三國氏と一緒に運営しています。もともとは二人とも北海道出身。東京で知り合いました。佐藤町長が三國氏に声をかけ、三國氏が塚原氏に声をかけたと言います。レストランはオープンから5年後の2017年にはミシュランに掲載されるなど実を結び出しますが、それでも人材確保や収益は難しいものがありました。
「町おこし自体を成功させていかないと、クオリティの高いものを作っても経営が成り立たない」との課題意識から、塚原氏は日本酒の酒蔵「上川大雪酒造・緑丘蔵(りょっきゅうぐら)」を作ります。コンセプトは「6次産業化地方創生ビジネス」。インターネットでも販売していますが塚原氏は「町に来ないと飲めない酒にしたい」と話します。
このため、商品展開はインターネットで流通させてもいい酒、北海道で消費をしてほしい酒、地元に飲みに来てほしい酒の3種です。特に地元向けは、ラベルも変えて完全に地元限定。地元限定スペックのお酒を町民還元酒として販売しています。その結果、200キロ離れた札幌の飲食店の人が週末に高速道路で2時間かけて買いにやってくる酒となったそうです。
縁が広がることによる大きな可能性
2018年4月、上川町には新しい動きが生まれました。
上川町とキャンプや登山用品の製造販売を行う株式会社スノーピーク、そして塚原氏の上川大雪酒造株式会社との三者で「観光振興および地域活性化に関する包括連携協定」を結びました。アウトドアもまた、上川町が誇る”自然”というリソースとマッチングが高く、さらなる相乗効果が期待できると言えるでしょう。
「町には若者移住者が増加してきている。また、町のファン、応援団、そして人脈が広がってきている。これは今後の町にとって非常に大きい可能性を意味しています」と佐藤町長は嬉しそうに話します。さらなる動きを見せる北海道上川町。地方創生の一つのモデルとして今後の動きに目が離せません。
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