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東大卒・農家の右腕の愛読書「世界一やさしい問題解決の授業」を農業者こそ読むべき理由

佐川 友彦

ライター:

東大卒・農家の右腕の愛読書「世界一やさしい問題解決の授業」を農業者こそ読むべき理由

“東大卒・農家の右腕”として、栃木県の家族経営農家「阿部梨園」で、営業から総務、会計など生産以外の業務全般を担当、経営改善を行ってきた佐川友彦(さがわ・ともひこ)さん。そのノウハウを自作のウェブサイトで公開し、農業界内外から熱視線を集めました。外資系メーカー勤務を経て、個人農家の課題解決に尽力してきた佐川さんが、農業者にこそ読んでもらいたいという愛読書を紹介してくれました。

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自己紹介と本に出会ったきっかけ

みなさんこんにちは。阿部梨園マネージャー、FARMSIDE works(ファームサイドワークス)代表の佐川と申します。阿部梨園では農家の右腕として経営改善の旗を振り、そのノウハウを無料公開して農家の経営改善を推進する「阿部梨園の知恵袋」プロジェクトを発起しました。FARMSIDE worksとして個人事業も展開し、生産者向けのコンサルティングや企業のアドバイザーを務めています。

今回は私がいちばんお気に入りのビジネス書をみなさんに紹介します。その名も「世界一やさしい問題解決の授業」(ダイヤモンド社)です。絵本のようなテイストで簡単すぎるかなと思われるかもしれませんが、無数に読んできたビジネス書の中で、珠玉のナンバーワン、殿堂入りです。読まないと損、と言い切れるレベルの良書です。

この本に出会ったきっかけは、大学院修士1年生のときの就職活動です。当時はやりの経営コンサルティング企業の選考を受けるために書店で手にとりました。コンサルティング会社の選考は思考力をためす課題解決型の試験が多かったので、対策のためにわかりやすい本を探していたのです。理系の教育しか受けておらず、ビジネスの知識不足を負い目に感じていたところにこの本が現れ、課題解決の方法論があることを学びました。しかも、高尚な難しいテクニックではなく、誰でも日々経験する意志決定が題材でハードルが低かったことも、目からウロコでした。この本を何度も読んで課題解決の自信をつけ、選考を突破し、その後の社会人生活でも多大な恩恵を受けながら、今に至ります。

本の概要紹介、この本をヒントに実際行った問題解決事例

本書で描かれているのは、大人のビジネスの世界ではありません。かわいい中学生たちが主人公で、バンドのコンサートで集客しようとしたり、パソコンを購入する計画を立てたりします。そんな日常的な場面を題材に、課題解決について疑似体験できるストーリーになっています。
解決方法も平易です。

①因果関係の芋づるをひもとく「分解の木」
②Yes/Noで判断フローを図式化する「はい、いいえの木」
③課題ごとの情報と対策をまとめる「課題分析シート」
④仮の結論とその根拠を明確にする「仮説の木」
⑤何かを決めるときに良い点・悪い点を洗い出して間違いのない結論に近づくための「意思決定ツール」

といった、親しみやすい独自の表現で、課題解決の考え方を紹介しています。カタカナの難しいビジネス用語を使わずに、自然に思考方法を体得できる内容です。

登場人物は、特徴的な性格をもつ3人の中学生です。その名も、「どうせどうせ子ちゃん」(自信がなくて行動ができない)、「評論家くん」(頭でっかちで行動しない)、「気合でゴーくん」(行動ばかりで後先考えない)。私の偏見では、農業生産者さんは、思いつきで行動してしまいがちな「気合でゴーくん」タイプが多いように感じます。みなさんはどのタイプに近いでしょうか。本書では、具体的な解決策を見つけてすぐに実行へ移す「問題解決キッズ」になるために、性格や志向ごとの行動パターン修正についても提案しています。

この本を初めて手にとってから6年後、私は阿部梨園に入職しました。農業の現場で課題の山と向き合うことになったとき、本書は私の懐刀になりました。経営の全体像把握や課題の洗い出し、優先順位づけ、施策の事後分析、すべてにおいて役立っています。

阿部梨園では、数百件の経営改善を実施しましたが、本書で紹介されている「分解の木」をはじめとする5つの手法を、ことあるごとに使用しています。例えば、2015年まではエクセル(Microsoft Excel)という表計算ソフトを使用して私が手動で給与計算していたのですが、翌年からは「人事労務freee(フリー)」というクラウド給与計算サービスを導入しました。導入検討の際には、まさに本書で紹介する「意思決定ツール」のようなシートを作成して、代表阿部に持ちかけました。

給与計算ソフト導入時の検討内容(意思決定ツール)

このようにまとめることで、論点が整理されて比較しやすくなるだけでなく、目的をはっきりさせて記録に残せるので、判断を後に振り返る際にも非常に有効です。

また、予算管理のために買い物ルールを決めました。これも本書の「はい、いいえの木」になっています。

阿部梨園が実際に使用した「購買ルール」(はい、いいえの木)

農業者に読んでもらいたいポイント

経営は日々の意思決定の積み重ねですから、判断ひとつひとつの品質が重要です。今回この本を選んだ理由は、日々の業務の中に経営改善のチャンスがあること、そしてそれを解決するごとに心身が軽くなる感覚を、みなさんにもぜひ実感していただきたいからです。イージーな内容で楽しく課題解決を体得できますから、読んで早速行動に移してください。

最後に。読めば実感していただけるのですが、本書は驚異的にわかりやすいです。このわかりやすさは、みなさんの情報発信や文章表現のヒントにもなると思います。思いの丈をありのままコッテリぶつけるよりも、平易で親しみやすい内容のほうが伝わる場面も多いです。農園案内作成や、ウェブサイト更新の参考になれば幸いです。
 

世界一やさしい問題解決の授業
著者:渡辺健介
出版:ダイヤモンド社

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