オランダ農業 〜まとめ〜 農業を再定義するということ【オランダ農業の現場から#10】
NEXT AGRI PROJECT 農業の最新情報と人材交流が生まれる場 東京会場 9月11日 大阪会場 9月19日 9月20日 NEXT AGRI PROJECT 農業の最新情報と人材交流が生まれる場 東京会場 9月11日 大阪会場 9月19日 9月20日 閉じる

マイナビ農業TOP > マーケティング > オランダ農業 〜まとめ〜 農業を再定義するということ【オランダ農業の現場から#10】

マーケティング

オランダ農業 〜まとめ〜 農業を再定義するということ【オランダ農業の現場から#10】

連載企画:オランダ農業の現場から

オランダ農業 〜まとめ〜 農業を再定義するということ【オランダ農業の現場から#10】
最終更新日:2019年05月20日

農作物輸出額世界第2位の農業大国オランダ。その農業の現場について、これまで紹介させていただきました。最終回となる10回目は、オランダ農業と日本農業の違いを総括しつつ、研修生としてオランダ農業を体験して感じたことを紹介します。

オランダと違う消費者との距離感

オランダは隣国との陸続きで他国から農作物が入ってきやすい環境にあります。そのため消費者は、どこで誰が作った作物なのか、という点への意識がとても強いです。
そんな消費者たちのために、オランダでは消費者が生産現場を見られる機会がたくさん設けられていました。

Kom in de casの様子。子供から高齢者まで多くの消費者が実際に農場に足を運んで現場を理解する

例えば、記事「オランダ農業は日本と何が違うの? ~栽培方法編~」でも紹介した「Kom in de cas(温室に来てよ)」は、消費者がオランダ全土の施設栽培農場を見学できるオープンデーです。他にも、各農家がオープンデーを設けて、消費者に自分たちの取り組みを見てもらう機会が豊富にありました。日本ではまだまだ消費者が農業に触れる機会は少ないのではないのかなと感じます。

Kom in de casの様子。農場説明だけではなく、アトラクションや出店カフェスペースなど来場者が楽しめる工夫がされている

一方で、オランダにはほとんどない、日本の取り組みもあります。それは、誰がどこで作った作物かがわかるように、商品のパッケージにイラストや顔写真を付けて紹介することです。直売所などでよく目にしますが、消費者の安心につながる非常に良い取り組みであると感じました。

土地に対する考え方

また、「土地」に対する農家の考え方も、オランダと日本では大きく違うと思います。日本の多くの農家は、先祖代々が大切に維持してきた土地や育てた良い土を継承していくパターンが多いと思います。オランダでは、親が農家であっても親の持つ土地は継承せず、全く違う土地で農業を始めるというケースが多いです。どんな農業をしたいかによって政府が勧めている地域があり、例えば、ウエストランドに施設栽培の農家が集中していたり、フレボランドに有機農家が多く移り住んだりといった感じで、日本のように「先祖代々の土地を……」といった感覚はあまりない印象でした。

広大なパプリカのハウスの様子。先が見えない。土地の価格などを考慮して土地を選んでいく

確かに、日本でも秋田の大潟村のような農業を目的として干拓された土地はありますが、それもごくまれなケースではないでしょうか。
経済合理性だけを考えていくと、土地を継承していくパターンだと、作ることができる作物が限られたり、売り先が確保しづらい場所だったり、そもそも土地代・人件費などがもっと安い海外で作った方がいいということになるのではないでしょうか。その土地で農業を営んでいくのは最適ではないパターンが多いのではと思います。
それでも、その場所で農業をするのは、「食べていくため」という大前提はありますが、それ以上に、“先人たちが守ってきた土地を守りたい”や“この美しい景観にひかれて”などさまざまな理由が存在していることと思います。なぜ、その場所で農業をするのか? 日本で農業を盛んにしていくには、経済合理性だけを突き進めるのではなく、その土地で農業をしているさまざまな理由をしっかりと言語化していくことが必要なのではないかなと考えます。

今後の農業の展開について

2050年には、都市部で暮らす生活者は世界の人口の68%まで増加するという予測が公表されています(国連予測。2018年5月時点では55%)。
オランダでは、人口増加していく都市部でどのように食料供給していくかということで、都市のスペースを有効利用するため、河川の水上に浮かべるように建てられた牧場での畜産業や、その場所で食料やエネルギーが全て循環するようなエコビレッジが計画されており、テクノロジーを駆使して、都市部でいかに効率的に食糧生産を行うかという新しい農業のあり方が試行錯誤されています。これらの動きから、20年先、30年先は今と全く異なる農業が展開されていると思います。

オランダの施設栽培の中の様子。まだまだ人手はいるが、オートメーション化しているところがたくさんある

そこで必要になってくるのが、「農業」の再定義だと思います。
生産者を含め多くの方が「農業」という言葉を何気なく使っていますが、そのイメージは人によって大きく異なるのではないでしょうか。例えば、農業という言葉をイメージした時に、酪農を思い浮かべる人もいれば棚田を思い浮かべる人もいるでしょう。

広辞苑(第七版)には、「農業とは、地力を利用して有用な植物を栽培工作し、また、有用な動物を飼養する有機的な生産業。広義では、農産加工や林業も含む。」と書かれています。
広辞苑が正しいというわけではありませんが、この定義にしたがって、オランダの農業を考察すると、オランダの農業は水耕栽培で無機質のロックウールという素材を使用しており、土は使っていないわけですから、「地力」という点では怪しくなってくるのではないでしょうか。でも、農業ではないと言われれば首を傾げたくなります。これからますますAI・ロボティクスなどの技術発展やグローバル化によって農業は複雑になっていくはずです。そうなった時に、農業というものが今とは全く違うものになっている可能性もあるはずです。大切なことを見失わないためにも、「農業とは何か?」ということを問うことが必要なのではと思います。
「正解」は一つではないと思いますが、問い続けること、そしてそれを追求していくことが大事なのではないかなというのを、多様なオランダの農業を見て感じました。

以上、オランダの農業の連載のまとめでした。
これまで、全10回読んでいただきありがとうございました。

関連キーワード

シェアする

  • twitter
  • facebook
  • LINE

関連記事

タイアップ企画

カテゴリー一覧