シロツメクサとは?
シロツメクサはマメ科の多年草で、別名クローバーとも呼ばれます。江戸時代にオランダからの献上品として運ばれていたガラス製品が割れないように、このシロツメクサが緩衝材として箱の中に詰められていたため、「詰め草」と呼ばれたことがその名の由来と言われています。
踏みつけや刈り取りに強く、痩せた土地でも育つため、畑の中というよりは、その周囲の土手などに生えることが多いです。背丈は大きいものでも30センチほどです。地をはって横に広がるランナーと呼ばれる茎を伸ばし、広がった先で根を張ることで少しずつ横にテリトリーを広げていきます。
シロツメクサと地力の関係
畑にどんな雑草が生えているかを知ることは、その畑の状態を推測する手助けとなります。雑草から推測することのできることの一つに、その畑の地力(ちりょく)があります。地力とはその土地が持つ植物を育む力のことで、地力が上がってくると、あまり手をかけなくても野菜は健康的に育ちやすくなります。
地力が高いということは土壌の生態系が豊かになっているということを表しますので、基本的にはその地上に生える雑草や虫などの生態系も豊かになり、多様性が高い状態を表しています。そのため基本的に地力が低い場所では一部の雑草だけが目立ち、地力が高い場所ではより多様な雑草が見られます。
下の表は畑の地力を診断するときに、僕が指標として使っているものになります。地力の段階をレベル1からレベル4に分け、それぞれの段階を見分ける指標となるような雑草を記載しています。
地力 | 特徴 | 生えやすい雑草 | 適した野菜 |
---|---|---|---|
レベル4 | ほとんどの野菜が少肥料でも育つ | ハコベ、ホトケノザ、オオイヌノフグリなど | ナス、ピーマン、キャベツ、ハクサイ、タマネギなど |
レベル3 | 肥料を入れることで、大体の野菜の栽培が可能 | スベリヒユ、カラスノエンドウ、ノボロギク、ツユクサなど | ミニトマト、キュウリ、ニンジン、ダイコンなど |
レベル2 | 栄養の絶対量が少ない | スギナ、ハハコグサ、シロツメクサなど | サツマイモ、ダイズ、エダマメ、ジャガイモなど |
レベル1 | 土が硬く痩せている | セイタカアワダチソウ、ヨモギ、チガヤなど | ヒエ、アワ、タカキビなど |
レベル1から4に上がっていくに従って、生える雑草が追加されていき、種類が増えていくという風に考えてください。地力レベル4の段階ではレベル1〜3の雑草が全く生えなくなるというわけではなく、その割合が減っていきます。全体の傾向としては、多年生雑草よりも一年生雑草が生えやすくなり、多くの野菜とも共生しやすい雑草が増えていきます。
この診断方法や地力レベルについての詳細は、「雑草で診断!その土で野菜は育つのか?【畑は小さな大自然vol.7】」の記事をご覧ください。ただしこの診断方法は学術的に確立されたものではなく、僕自身やさまざまな農家の経験則による分類ですので、あくまでも参考程度にしてください。
今回紹介しているシロツメクサは、地力レベル2に分類しています。シロツメクサやその他のレベル1・レベル2の雑草ばかりが生えている場合は、地力が低い土地の可能性が高いです。
シロツメクサ対策のポイント
シロツメクサは背丈があまり高くならないため、そこまで野菜の生育に邪魔になるような雑草ではないですが、しぶとい雑草ではありますので、以下の2つのポイントを押さえて対処しましょう。
ポイント①根元の下から刈り取る
根元が残っているとすぐに復活してしまう点は注意が必要です。少し鎌を土に入れるつもりで根元からしっかり刈り取りましょう。根は残っていてもそこから復活することはありませんので、根ごと抜き取る必要はありません。
ポイント②地力を上げよう
シロツメクサの多い土地は地力が低く、土が硬い可能性が高いです。育つ野菜も限られてきますので、地力を上げていきましょう。地力を上げていくと、自然とシロツメクサ以外の雑草も生えやすい環境になり、相対的にシロツメクサの割合も減っていきます。地力を上げるためには有機物が豊富な堆肥の使用が欠かせないのですが、特にオススメしているのが雑草堆肥です。雑草で作った堆肥はミネラルのバランスもよく、吸収されやすい形で土になるため、地力の底上げとして最適な堆肥となります。雑草堆肥をベースにした上で、他の土壌改良資材を組み合わせることをお勧めします。
シロツメクサを野菜づくりに生かす方法
シロツメクサはただ雑草として排除するだけでなく、その特性を利用して、野菜づくりに生かすこともできます。その方法を3つご紹介したいと思います。
利用法① 緑肥作物として土を肥やす
利用法② グランドカバープランツとして他の雑草が生えるのを防ぐ
利用法③ 天敵を呼び寄せて害虫対策
それぞれ詳しく説明していきます。
利用法① 緑肥作物として土を肥やす
シロツメクサを始めとするマメ科植物は、根粒菌と呼ばれる微生物が根の中や周囲にいて、共生しています。上の写真のように、根を抜いてみると、根の周りに小さな丸い粒が見られますが、これが根粒菌のコロニーになります。この根粒菌は空気中からの窒素を取り込み、マメ科植物に栄養として供給する働きをしています。通常植物は土からしか窒素を吸収できませんが、マメ科はこの根粒菌と共生していることによって、空気中からも窒素を吸収できるのです。そのためマメ科植物は痩せた土地でも育ちやすいのです。
この働きを利用して、シロツメクサの種を畑にまいたり、他の場所に生えていたシロツメクサを畑に植え替えることで、土を肥やすこともできます。このように土壌改良をするために植える作物を緑肥作物と呼びます。シロツメクサを植えると空気中からも窒素を取り込むので、このシロツメクサごと土の中にすき込んで耕す、もしくはその残さを土の上に置いて土壌生物に分解させることで、土により多くの窒素が補給されていきます。シロツメクサ以外にもクリムソンクローバーのように、緑肥作物用に売られているマメ科植物の種などもあります。
春先の田んぼではレンゲソウというピンク色の花が咲いている景色が見られることがありますが、このレンゲソウもマメ科の植物であり、田んぼに窒素を補給するために農家が意図的にタネをまいて土を肥やしています。
利用法② グランドカバープランツとして他の雑草が生えるのを防ぐ
シロツメクサのランナーで横に広がる習性を生かして、シロツメクサを地表面に広げて繁殖させ、他の雑草が生えないようにするという方法です。このように地表面を覆う目的で使用する植物をグランドカバープランツと言います。雑草が生えるのを防ぐ効果以外にも、土壌流出や地温の変化を和らげる効果、保湿効果なども期待できます。
利用法③ 天敵を呼び寄せて害虫対策
シロツメクサを意図的に畑に植えることで、土着の天敵を増やそうとする研究も行われています。シロツメクサを植えることで、アブラムシ類やアザミウマ類、ハダニ類などの害虫の天敵と言われるヒメハナカメムシ類やヒラタアブ類、テントウムシ類、寄生蜂類、クモ類などが増えると言われています。ただしこれらの天敵はその場所にもともといる天敵が増えるというものですので、場所によって現れる天敵は異なります。
シロツメクサは排除せずに利用しよう
シロツメクサは背丈が高くならないため、野菜の生育の邪魔にならないばかりか、さまざまな有効利用が可能です。どれもすぐに効果が表れるというわけではありませんが、もし畑にシロツメクサが生えていた場合は、ぜひ試してみてください。