地元飲食店を活用するレシピ。農と市民の接点を増やそう!【直売所プロフェッショナル#12】

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地元飲食店を活用するレシピ。農と市民の接点を増やそう!【直売所プロフェッショナル#12】

連載企画:直売所プロフェッショナル

地元飲食店を活用するレシピ。農と市民の接点を増やそう!【直売所プロフェッショナル#12】
最終更新日:2020年02月07日

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。直売所では一般の消費者のほかに、地元の飲食店も顧客となりえます。今回は、飲食店と関係を構築するメリットとその営業ノウハウを解説します。

飲食店向け販売はコスト増に要注意

直売所が立地する地域に、飲食店がたくさんあることもあります。
直売所の売り上げを伸ばしたいとき、「地元飲食店への販売を強化しよう」ということは誰しも考えるアイデアなのですが、短期的な収益を考えた場合には、あまりオススメではありません。当社の経験上、飲食店向けの販売を促進していくことは意外と難度が高いからです。
とくに飲食店の「安定的に品物がほしい」というニーズと、出荷されるかどうかその日にならないと分からないという直売所のモデルはかなり相性が悪いです。

さらにいえば、飲食店向けにあらかじめ注文を受けたり、配達したりすることは、労多くして果実が少ないと考えるべきです。
よほどの席数の多い飲食店なら別かもしれませんが。
(私の経験上、せめて200~250席クラスの飲食店でないと利益は出ないのですが、個人の飲食店で200席あるところはほとんどありません。)

そもそも委託型直売所とは、商品を必ず揃えることに注力しないでオペレーションコストを低く抑える仕組みです。それなのに注文を受けて商品を確保するように努力するのは、委託型モデルの利点を消し去ることになる「筋の悪い」施策です。

農家のSOSに応える理想の関係

ただ、一方で、地域農業の活性化を考えた時に飲食店とのお付き合いには見逃せないメリットがあります。

飲食店は違う層に農業をPRできる

それは何より、直売所とは客層が異なる、ということ。料理にあまり関心がない人は直売所にあまり来ませんが飲食店には行きます。また、飲食店に観光客が多い地域もあるでしょう。
そういう場所で、地元の農業を情報発信することは、農と市民との接点を増やし、長い目で見た時に地域農業の活性化に寄与してきます。

たとえば、「鎌倉野菜」は今ではたいへん有名ですが、これも周辺飲食店の要望に農家が応える形で、だんだんと品目の幅が広がり、それが観光客にも話題となり、ブランド化したものです。
また、当社が運営する東京都立川市の直売所には、50店舗ほどの飲食店が顧客登録していて、日ごろから直売所に買いに来ています。立川駅かいわいでは、地元野菜を使っている飲食店が多く存在し、おのずと立川でおいしい野菜がとれることを知っている市民も多くなります。
ただし、ポイントは、直売所のスタッフは注文を受けたり配達をしたりしていないことです。それらの施策は、すでに述べたとおりコストが高くついてしまいます。店舗に買いに来ていただくことが重要です。

農家のモチベーションアップになる

さらに、飲食店のメニューに載るということは、料理のプロが認めたということであり、農家のモチベーションを高めます。やはり料理人に「この野菜はおいしい」と言われることはうれしいものです。
料理人に畑を訪れてもらったり、地域ミニコミ誌で農家と料理人の対談といった企画をやってもらったりするのもいいでしょう。

農家のSOSに応える

「東京オーブン」という飲食店が神田と赤坂にあります。ここでは先日の台風で、取引農家である冨澤ファームの収穫中のナスが倒伏してしまったので、急きょお店で「緊急開催!冨澤ファームのナス祭り」を開催して好評を博しました。こうした飲食店と農家の関係は理想的です。
農家のSOSに応えられるのも、飲食店は調理してしまうので多少のキズは関係がないからです。果物の場合はジャムに加工して保存するのもお手のものです。
いざという時に相談できるようにするためにも、飲食店との信頼関係は構築しておきたいものです。

「東京オーブン」は台風直後に急きょ大量のナスを調達(左が農家の冨澤さん)

飲食店はアーリーアダプター

マーケティング用語で、新商品を周囲よりも早く試す人を「アーリーアダプター」と呼びますが、直売所にとってのアーリーアダプターは飲食店です。
新しい品目を栽培することは農家にとって売れるかどうか分からないリスクがあります。一方で、飲食店の料理人は、つねに新しい食材や珍しい食材を探しているものです。
そこで、飲食店にあらかじめ「こういうものを作る予定です」と声をかけておけば、ある程度リスクを回避できます。普段から飲食店と農家の双方と接している直売所プロフェッショナルが間を取り持ちたいものです。
当社の直売所の例では、「エディブルフラワー(食用花)」をフレンチレストランで使ってもらったことなどが挙げられます。
(なお、農家との栽培計画の相談については別途連載で書く予定です。)

このように、飲食店に地元の農産物を活用してもらうことは、地域の農業にとってメリットがあります。
受注や配達といったオペレーションは慎重に考えるべきですが、来店して買ってもらう分にはオペレーションのコストは増えません。直売所のスタッフは、地域を盛り上げるために飲食店との関係を積極的に構築していくべきでしょう。

飲食店営業、虎の巻

ということで、ぜひ腕の良い料理人に直売所の農産物を使ってもらい、地域の農業をPRしていきましょう。そのための営業の「虎の巻」をいくつか紹介します。

(1)まずは「ドアノックツール」を

営業戦術で、最初に興味を持ってもらうためのアイテムを「ドアノックツール」といいます。
ガソリンスタンドがガソリンを看板にしつつ、洗車やオイル交換で利益をあげているのがよい例です。直売所にはいろいろな商品がありますが、なんでもかんでもオススメするのではなく、お付き合いのきっかけになる商品をまずはオススメし、その後使ってもらう品目を広げていきましょう。
当然、その地域で特産とされている農産物は有力候補です。一方で、飲食店からすると、安定的に入荷していて、利用方法が複数ある(ロスになりにくい)ものが使いやすいです。
すると、野菜よりもむしろ、卵、果物、ハチミツ、米といったものをドアノックツールとすることも検討すべきでしょう。

(2)重視するのは「メニュー機動力」

メニューが固定化されている飲食店(典型的にはチェーンの飲食店)は、直売所の目まぐるしく変わる旬に対応できません。食材を見てからメニューを変更するスピードのことを、私たちは「メニュー機動力」と呼んでいます。当日にメニューを変更できる機動力の高いお店と直売所は相性がよいのです。
当社ではいちど大学の学生食堂に野菜を納入したことがありましたが、メニュー機動力が低く、長続きしませんでした。
ちなみに、料理人にとって「味がよい料理を作ること」と、「レシピを瞬時に思いつくこと」は別の能力であり、どうしても向き不向きがあります。
それから、高級な店やホテルのレストランよりも、カジュアルな酒場の方がメニュー機動力の高い場合が多いです。焼くだけや揚げるだけといったシンプルな調理方法が多く、レシピが複雑でないからです。

当社が運営する赤坂見附「東京野菜キッチン SCOP(スコップ)」のメニュー。入荷した野菜にあわせて毎日変更する

(3)誰が「メニュー決定者」かを見極める

飲食店が地元の農産物を使うかどうかは、結局のところ、メニュー決定者が決めることになります。よくあるのがオーナーや本社が地元野菜の活用を旗振りしているのに、現場が動かないパターンです。実質的なメニュー決定者が現場の料理人のことも多いです。
メニュー決定者に直接アプローチし、地元の農産物を気に入ってもらえるよう、その人に響く提案をしていきます。

(4)飲食店はレストランだけじゃない

最後に、ひとことに飲食店といっても定義を広げればさまざまな可能性があります。
意外と忘れられやすいのが、パン屋さんやケーキ屋さんです。案外、小規模な飲食店よりも使用量が多くなることもあります。野菜だけでなく、果物や卵、ハチミツも売り込めます。
東京都小平市では地元のブルーベリーを和菓子屋さんが活用しているという例もありますし、当社では仕出し弁当のお店と創業以来のお付き合いがあります。
なるべく広い定義で飲食店を考えて可能性を広げましょう。

総菜パンで地元野菜を活用している例も多い

地域のいろいろなお店で地元の農産物に出会える。そんな街を目指してみませんか。直売所はそのための重要な結節点になりえます。

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