震災を乗り越え、再び梨の名産地に おいしさの裏にある、生産者たちの情熱

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震災を乗り越え、再び梨の名産地に おいしさの裏にある、生産者たちの情熱

震災を乗り越え、再び梨の名産地に おいしさの裏にある、生産者たちの情熱
最終更新日:2020年02月07日

農園のすぐ近くには、広大な太平洋が広がっている。古くからから梨の名産地として名を馳せてきた福島県そうま地区では、この海に面した風通しの良い気候が、全国で愛される美味しさを育んできました。「そうま地区の梨の美味しさを、全国の人たちにもっと知ってもらいたい」。地域には、さらなるブランド確立と品質向上を目指すチャレンジ精神旺盛な生産者が多くいます。『JAふくしま未来そうま地区なし部会』は、そうした生産者で構成される組織です。

120年の歴史を誇る梨

福島県は梨の収穫量が千葉県、茨城県、栃木県に次いで全国4位(2017年、1万8900t)。中でも、相馬市内で収穫された梨は『そうま梨』と呼ばれ、明治時代から約120年にわたって全国で愛されてきました。
おいしさの秘密は、豊富な海のミネラルを含んだ潮風と、独特な粘土質の土壌。そうま地区ならではの地理的特性が、芳醇な甘さとシャキシャキとした食感を育んでいます。

数ある品種の中でもひときわ人気なのが、2001年に品種登録された『あきづき』。ジューシーな食味が特徴の『幸水』、大きさのある『豊水』、痛みにくく長期保存が可能な『新高』を掛け合わせて作られた同品種は、親の長所をそれぞれ受け継いだサラブレッドで、全国的な需要の高さから、地区管内でも『あきづき』の栽培に力を入れています。

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人気を集めてる品種『あきづき』

災禍を乗り越えて

2011年3月、そうま地区をはじめとする福島県の農業は窮地に追いやられていました。東日本大震災と、これに伴う東京電力福島第一原子力発電所事故により、大きな打撃を被った同地区の生産者たち。
「自宅だけでなく、約30aの畑が津波に飲み込まれました。当時は農業のことを考える余裕もなかったです」。こう回顧するのは、同部会の大和田一則部会長。管内では多くの梨生産者が津波によって命を落とし、無事だった生産者の多くも、震災をきっかけに一線を退いたと言います。

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当時を回顧する大和田部会長

風評被害という名の見えない刃も追い打ちをかけました。『JAふくしま未来』によると、震災に見舞われた2011年は梨の販売価格が前年のおよそ半額となる約150円(1kgあたり)にとどまり、生産者個人での取引でも出荷を断られるケースが相次ぎました。
「このまま値段が安い状況が続くのではないかと、毎日不安ばかりでした」と大和田部会長。しかし、同地区の生産者らが真価を発揮するのはここからでした。

まずは原発事故に絡んだ風評被害を払拭しようと、高圧洗浄機で梨の樹皮を取り除く作業を実施。梨の木1本だけでも相当な労力ですが、これをそうま地区管内すべての畑で行いました。出荷前には必ず、モニタリング検査を実施。安全性を訴えるため、できることは何でもやりました。

このほか、年に数回は首都圏などへ出向き、販促活動を同部会主導で実施。梨をはじめとする管内の農産物が安心、安全である旨をPRすると同時に、そうま地区の梨の認知度向上を図りました。
「そうま地区の生産者の多くは、家や畑が津波に流されました。失ったものを農業で取り戻すような意気込みで頑張ってきました」。大和田部会長の言葉通り、そうま地区の梨は2013年以降、単価、収量ともに持ち直し、18年には震災前とほぼ変わらぬ水準まで揺り戻します。19年には1kgあたりの単価が過去10年で最高額となる約300円に達し、梨の名産地としての復活を印象付けました。

震災で失ったものを取り戻すため、「いいものをたくさん作る」を地域一体で推進してきた同部会。同年は台風被害による需要高で梨の相場が上がったとは言え、よりよい品質を求めて生産者それぞれが奔走した結果、高い品質が全国の消費者に再評価されたことがうかがえます。

同部会では2019年に農産物の安全性などを管理するJGAP(ギャップ、農業生産工程管理)の国内認証「JGAP」の団体認証を取得。今後もさらなる販路拡大を目指すとともに、後継者の育成にも尽力していくとしています。

「いいものをたくさん作る」ために

さらなる品質の向上と農作業の効率化を図るため、同部会では時期の作業に応じた勉強会や先進技術の導入に向けた共有を行っています。その象徴が、ジョイント栽培の導入です。

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ジョイント栽培を手掛ける相馬市内の梨園

ジョイント栽培は神奈川県農業技術センターが開発した、苗木を隣同士でつなげて一本にしてしまう栽培方法。最大のメリットは栽培管理作業等の省力・効率化で、導入する資材によってはコストの低減を目指すことも可能です。
梨の整枝法は高度な知識や技術を必要とし、規模拡大や新規参入の障壁となっていた側面があります。省力・効率化が難しいのも理由の一つ。同部会ではこうした課題解決に向けてジョイント栽培を推進し、梨の早期成園化、省力への知見を共有しています。

かつて会社員から農家へ転身し、農業の知識やノウハウの取得に苦心したと言う大和田さん。こうした経験があったからこそ、管内の若い生産者への知識還元にも力を入れたいと話します。

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取材に応じた大和田部会長(左)と夫人

苦境を乗り越え、かつて以上の勢いを見せるそうま地区の梨生産者ら。これまで歩んできた確かな経験と梨づくりへの心意気。就農を目指す若者にとっても、得られるものは大きいことでしょう。

【取材協力】
JAふくしま未来 そうま地区なし部会
〒960-0185
福島県福島市北矢野目字原田東1-1
TEL:024-573-2905

JAふくしま未来 相馬中村営農センター
〒976-0036
福島県相馬市馬場野字岩穴前198
TEL:0244-35-2544

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