処分に困るもみ殻が売り物に変身! 稲作農家が「燃料販売」!?

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処分に困るもみ殻が売り物に変身! 稲作農家が「燃料販売」!?

処分に困るもみ殻が売り物に変身! 稲作農家が「燃料販売」!?
最終更新日:2020年04月28日

酒や餅、団子や煎餅くらいだった米の加工品も、最近ではパンやパスタまでつくられるようになった。暮らしの事情とともに自由自在に変化している米の加工技術だが、また新しい展開もあるようだ。米そのものではなく、米をつくる過程で大量に出る「あるもの」を加工した“田んぼの薪(まき)”を製造・販売する株式会社丹波西山にお邪魔した。

“田んぼの薪”の正体は!?

“田んぼの薪”を製造中の丹波西山代表・西山和人(にしやま・かずと)さん

京都府綾部市にある株式会社丹波西山。
“田んぼの薪”を製造する倉庫にお邪魔すると、何かを焼いたような、なんとも言えない、いい香りがした。
機械から出てきたのは、もうもうと湯気が立った黒いチクワのようなもの。これが“田んぼの薪”である。
その形からは想像ができないが、じつはこれ、正式名称は「モミガライト」という。名前から察せられるように、もみすりをする際に出るモミガラ(もみ殻)100パーセントでつくる、新しいタイプの固形燃料なのだ。火をつけると、薪や炭のように使える。

できたての“田んぼの薪”、「モミガライト」。10本1束500円、1トン3万円で販売

莫大な量のもみ殻が悩みのタネ

西山和人さん・秀人(ひでと)さんという若い兄弟が中心となって農業を営む丹波西山。地域の田んぼを任されていくうちに、作付けする田んぼは約30ヘクタールまで膨れ上がってきた。

左が弟の西山秀人さん、右が兄の和人さん

「1ヘクタールの米をもみすりすると、だいたい1トンのもみ殻が出ると言われています」と、西山和人さん。
もみ殻は、畑にちょっと使うくらいには便利なものではあるが、30トンともなると、さすがに処分に困る。近隣の酪農家に、牛小屋の床に敷く敷料として提供しているが、それでもやはり余ってしまう。丹波西山には奮発して買った大きなライスセンター(米の調製をする施設)があるが、天井裏にもみ殻をめいっぱいためても7トンしか入らない。
かといって、野焼きするのは危ないし臭うし、どうかな、と和人さんは常々思っていた。
きっかけは灯油代の高騰だった。弟の秀人さんが薪ストーブを買った時にふと思いついて、「モミガラ 燃料」とネットで検索したところ、先ほどのもみ殻固形燃料製造機・グラインドミル(株式会社トロムソが販売)に行き当たったそう。

“田んぼの薪”モミガライトができるまで

トロムソが製造・販売するグラインドミル。中古の高級車が買えるほど高価だが、6次産業化の補助金を受け、2軒共同で購入した

モミガライトができる仕組みを秀人さんに教わった。
天井裏に格納されているもみ殻がグラインドミルに入るとすり潰されて、筒状の部分で圧縮されると同時に、棒状に成形される。
筒から押し出される際には、先端についた300度のヒーターに熱されて、表面だけがこんがり焼けて出てくる。表面をあぶるのは、摩擦を減らし、スムーズに排出するためだそうだ。
1時間で140本ほどつくることができ、年間4〜7トンほどを製造する。

赤い部分ですり潰されたもみ殻が、銀色の筒状の部分で圧縮・成形され、先端のほうのヒーターであぶられて出てくる

片手間の仕事にちょうどいい

しかし見ていると、最後の最後で完成品を検品して、積み重ねて整理するだけで、これといってやることがなさそう。
「そう、とり立ててやることはないんですよね。ただ、機械が動いているから誰もいないわけにはいかない。だから、従業員や母親がちょっと空いてるときにやってもらえるちょうどいい仕事になるんです」と和人さん。今のようにさまざまな米の加工品が出回っている状況だと、すごくおいしいか、はたまた珍しくないと売るのが難しい。それには相応の研究が必要だと和人さんは思っている。
その点、モミガライトは、機械さえあれば誰でも売れる商品ができるわけだ。

断面。よく見ると、もみ殻でできたものだということがわかる

出荷待ちのモミガライト。1本が1キロ弱になるまで圧縮されるため、1ヘクタール分のもみ殻も収納しやすくなる

“田んぼの薪”モミガライトのいいところ

気軽に薪を自給できる

モミガライトの製造者でもあり、薪ストーブユーザーでもある和人さんいわく「薪をつくるのって、けっこう大変なんですよ。山に行って、木を切って、それから切った木を運び出すのも大ごとでしょ。薪に適した木を切るとしたら、なおさら。いずれにしても、そっから、割って、1年ほど乾かさなきゃいけない」。
モミガライトなら、稲作農家だとつくったらすぐに使える。薪をつくる手間も、伐採の危険もなく、カジュアルに薪ストーブを使える。
薪ストーブを買ってはみたけど、だんだんと薪を調達する体力がなくなった人や、昔ながらの家に住んでいる高齢の方なんかにもおすすめだという。

モミガライトのある風景

室内置きでも虫が来ない

モミガライトならではの特徴といえば、表面があぶってあるからか、虫がつかないことだ。薪からカミキリムシなんかが飛び出してきて驚いた話はよく聞くが、室内に置いても虫がわかないし、規則正しい棒状なので薪よりはかさばらない。

実際に燃やしてみた

実際に使ってみると、和人さんの言うとおり、最初は着火には時間がかかるが、燃え出すと薪となんら変わらない火力。じわじわ燃える、という薪と炭の中間のような性質。
あらかた燃え尽きたかと思っても、炭のように長い間熱を持ちながらくすぶっている。この状態をこの地域では「いこる」と言い、いこっている間はモミガライトを足す時の着火剤になる。
「だいたい3〜4本ほどを一度にくべると、5〜6時間は暖かいですよ。寒くなったら、また足す」と和人さん。1年に2トンほどを自分で使っているそうだ。

なかなかよく燃える

これが「いこる」という状態

災害用の備蓄燃料におすすめ

綾部市では2年連続して積雪が多かった2016〜17年。
多くの農家のハウスが前年に雪に押しつぶされて新調したにもかかわらず、また倒壊しては大変なので「いる人は持って帰ってください」とモミガライトを地域の人に譲った。ハウスの中でたけば、屋根の雪が解け、雪害を免れることができる。
「室内にも置けるし、かさばらないし、備蓄用燃料にぴったりなんですよ!」と和人さん・秀人さん兄弟が声を揃えて言う。

“田んぼの薪”モミガライトを通じて、新しいお客さんや、さまざまな人と知り合えたという西山兄弟。燃料販売はまだ軌道に乗ってはいないが、稲作農家が燃料を製造・販売できる時代を楽しんでいる。

 
株式会社 丹波西山
モミガライト問い合わせ先(Eメール):
evo.nishi-mountain.2480@ares.eonet.ne.jp

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米農家の祖父母の跡を継ぎ就農を決意。長崎県立大学を卒業後、長崎県立農業大学校に通い、平成25年、25歳の時に就農。現在は米、麦、大豆、ブロッコリー、ニンニクを栽培中。絵描き農家を自称しブログなどで漫画を描いたりしている。

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