切れ味が悪いと仕事にならない!
「なまくらの刃物では、なんも仕事ができんぞ!」と、植木屋の親方にはしょっちゅう言われたものです。確かに、切れ味の悪い刃物を使っていては、時間も労力も倍増します。そんな親方の指導もあり、休み時間には刃物を研ぐことが日常となっていました。
野菜や切り花がメインの私の農業では、植木屋の時のように、硬くて太い枝を切る機会はあまりありませんが、キャベツやブロッコリーなどの重量野菜に使う収穫包丁なんかは切れ味が悪いとドッと疲れるうえ、最盛期には手首を負傷、なんてこともあります。
また、包丁はもちろん、細いものを切る収穫バサミも、切り口にさびがつくようなものでは、後から洗うのが大変になってしまいます。自分で刃物を研げるようになると「刃の欠け」だって直せます。
用意するもの
用意するもの
・砥石(といし)
・さび止めスプレー
・布巾やタオル
・滑り止めのシート(砥石の下に敷く)
・水をためたバケツ
砥石の種類
刃物を研ぐのに欠かせないのが「砥石」です。私は、家で使う据え置き式と、畑に持っていく用の携帯式の2つを主に使っています。
紙やすりと同じく、砥石にもさまざまな「目」の粗さがあります。大ざっぱには、目の粗い「荒砥石」と、目の細かい「仕上げ砥石」に分けられ、基本は荒砥石→仕上げ砥石の順に使います(さびをとるだけなら仕上げ砥石だけでも大丈夫)。
ホームセンターなどで売っているものは、荒砥石と仕上げ砥石が一体になっているものが多いので、特別なこだわりがない限りはそちらを買うことをオススメします。
あったほうがいい道具
刃物を研いだあとに、研磨面のさびつきを防止する「さび止め油」はあったほうがいいと思います。ホームセンターなどで、園芸用のスプレータイプのものが売っています。
砥石を濡らしたり、刃物を洗ったりするためのバケツや、刃を拭く布巾などもあれば便利です。
基本の研ぎ方
刃物を研ぐ時のイメージ
実際に刃物を研ぐ前に、下の図のように仕上がりのイメージを持っておくと、うまくいきます。
両刃の包丁は芯がまっすぐになるように両側を均等に研ぎ、ハサミや片刃の包丁の場合は片方を念入りに。ナタは、包丁やハサミのように先端を鋭角に薄く研ぐのではなく、やや鈍角に仕上がるようにしたほうが切れ味が長持ちします。
実際に包丁を研いでみる
まずは、バケツに水を張り、気泡が出なくなるまで砥石を水中に沈め、吸水させます。乾いたままだと摩擦が大きくなりすぎて、刃が荒れてしまいます。
そして、いよいよ包丁を研ぎます。しばらく研いでいない場合は、荒砥石を使います。
刃の切れる方を手前にします。もともとの刃の角度に添うように(下写真のように、奥側に小銭が挟まっているようなイメージで少し浮かせて角度をつける)奥に向かって研磨し、戻す、の繰り返しです。慣れてきたら、砥石全体を使ってリズムよく、研いでいきます。均等に力を入れながら、刃の全面を研ぎます。
片面がある程度研げたと感じたら、指の腹で反対面に軽く触れてみてください(指を切らないように、そっと、です)。
うまく研げていると、「カエシ」という突起ができています。これが、全体に均一にできているなら、ひとまず片側は完了。次はカエシがなくなるように反対側を研ぎます(下図参照)。
両面を研ぎ終わったら、仕上げ砥石でまた同じことをします。最後に布巾などで刃を拭き、さび止めを塗ったら完成です。
包丁が研げるようになれば、どんな刃物だってできるようになります。
刃物ごとの研ぎ方のポイント
最後に、それぞれの刃物について、私が気を付けているポイントを少しだけ解説しておきます。
ハサミ
刃の元のほうは挟む力が強いのでそんなに研がなくても切れます。時間がない場合は刃先を重点的にします。完成の目安は、刃先で乾いたティッシュが切れるくらい。
ナタとスコップ
ナタもスコップも、ハサミや包丁ほど繊細な刃物ではありません(と、私は思っています)。研石では時間がかかってしまうので、ディスク(円盤)状の砥石を使って研磨ができるディスクグラインダーでザーッと研ぎます。
要領は包丁と同じですが、どちらも重みを生かす道具なので、刃先を極端に尖らせる必要はありません。むしろ、鋭利にしすぎると刃こぼれしてしまいます。
スコップの場合は、刃を研ぐことで根切りがラクになるうえ、刃の周辺を磨いておくと、土がこびりつきにくくなります。
コツをつかむまでは実践あるのみですが、練習ついでに台所にある包丁を研いであげると家族も喜びます。