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直売所の売り上げはチームでつくる。「背中」でつくる。【直売所プロフェッショナル#27】

直売所の売り上げはチームでつくる。「背中」でつくる。【直売所プロフェッショナル#27】

直売所を複数展開する民間ベンチャーの創業者たちが、直売所運営のイロハについて事例をまじえて紹介していく連載。パートさんの目はキラキラしていますか? お店のチーム力を育てれば、直売所の売り上げは必ずアップします。

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お店のチーム力をチェックしよう

直売所の主役は誰でしょうか?
出荷者? それとも店長?
それも大事ですが、現場で頑張っているパートさん・アルバイトさんこそ、直売所の主役です。お客様と直接触れ合うのは彼ら彼女らだからです。
パートさんを含めた直売所のチーム全体でより良い売り場を作っていく、そういうお店を目指したいもの。売れる直売所では、パートさんの目も輝いています。
そもそも、直売所の業務は多岐にわたるので、なんでもかんでも店長一人で改善していこうというのは土台無理な話でもあります。ただ、「そんなことは分かっているけど……」という直売所の店長の声も聞こえてきそうです。そこで、良いチームを作るコツを本稿では示していきたいと思います。

まずはお店のチームの状態を図るチェックリストを作ってみたので、チーム力をチェックしてみましょう!

  • 店長は、パートさんの趣味や家族構成などを把握している
  • パートさんは、自らのお店で頻繁に買い物をしている
  • パートさんどうし、商品の味や調理法などの情報を交換している
  • 出勤時や退勤時に明るいあいさつがかわされている
  • 「ありがとう」という言葉をスタッフどうしの会話でよく聞く
  • お客様からの要望を聞いたパートさんから、店長に施策の提案がある
  • パートさんと出荷者の仲が良い

これらの大半にチェックが付いたお店は、チーム力がかなり育っていると考えていいでしょう。もしチェックが少なかったら、改善の余地があるかもしれません。

なお、チーム力には経営理念も大事なので、以下の記事も参考にしてください。

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スタッフに見せるべき店長の背中とは?

お店のチーム力を育んでいくためには、まず店長がリーダーであることの自覚を持つことが必要です。スタッフはみな自分の背中を見ている、ということに気づかなくてはいけません。
そのうえで、どんな背中を見せるのか?
意識したいのは「ワクワク」です。

店長自ら、「おいしいものをどんどん売って、楽しくやろう! ワクワクしよう!」ということを発信すれば、チームの雰囲気は一気に改善されます。なぜなら、直売所のパートさんは、「おいしいものを市民に紹介したい、たくさん売りたい」と思っているものだからです。店長の思いと自分の思いとが合致していれば、安心して楽しく働くことができます。
おいしいものを売ろうという意識は、食品小売業として至極当たり前のことなのですが、日々の業務を淡々とこなすだけになってしまっているお店も多いのではないでしょうか。
大事なのは店長自身がワクワクすることであり、そのワクワクを伝えることです。

たとえば、直売所の華とでもいうべきトウモロコシがシーズン初出荷されたとき、「ついにこの季節が来たぞ!」と店長が声高に発信することがチーム力を高めます。
もしあなたが野球チームのキャプテンで、満塁のチャンスが来たらチームを盛り上げようとしますよね?
直売所とは、市民においしいものを届けるという得点を狙っているチームです。
朝どれトウモロコシが出荷されたら、千載一遇、大量得点のチャンスです。いまこそチームを盛り上げるのが店長の仕事です。そして、その繰り返しによって、いきいきとした職場の雰囲気がだんだんと醸成されていくのです。

こうしたチーム力の高まりは副次的効果も生みます。スタッフの品質への視線が厳しくなるので、出荷者への要望などフィードバック量が増え、地域の農業技術を向上させることにもなります。
ついでに付け加えると、品質が悪い農産物が出荷されてきたときにはっきりと出荷者にものを言えない店長はパートさんから信頼されません。「おいしいものを市民に届けたい」ということがパートさんのモチベーションの源泉であり、「どんな農家さんでも応援したい」という動機は基本的にはないからです(もちろん情熱ある農家さんのことは応援してくれるでしょう)。
もし店長が品質の悪い商品の出荷を許し続けていると、チームの雰囲気は決定的にマイナス方向に傾きます。出荷者を平等に扱うことが求められる直売所ですが、ダメなものはダメと言えなくてはいけません。店長の背中はいつも見られているのです。

出荷者にもできることはあるぞ!

直売所に出入りしているのは、スタッフとお客様だけではありません。そう、出荷者である農家も頻繁に出入りしていますね。
出荷者からすると「このお店のパートさんはやる気がないなあ」と思うこともあるかもしれませんが、自分自身がその一因になっていないか振り返ってみる必要があります。
先ほど挙げた、品質の悪いものを出荷することなど論外です。そこまでいかなくても、商品の梱包がぞんざいだったり、他の農家の悪口を言ったりすれば、店頭のメンバーのモチベーションは下がります。
明日お店に行ったら、直売所のパートさんに、ぜひ感謝の気持ちを伝えてみましょう。暑い日も寒い日も出勤して自分の商品を売ってくれているのですから。
さらには、畑に招待してみてはどうでしょうか?
百聞は一見にしかず、です。畑を見て、その工夫であったり、大変さであったり、何がしかのことを感じるだけで、パートさんのやる気は倍増することでしょう。
 
直売所を農協が経営しているケースでは、出荷者からすれば、「農協が農産物の販売を頑張るのは当然だ」と思うこともあるでしょう。たしかにそれは正論です。
しかし、店長は別として、パートさんは立場こそ農協の従業員ですが、経営母体が農協なのかどうかははっきり言って関心がありません。実家が農家であっても、です。パートさんにとって関心があることは、仕事のやりがいと楽しさ、これに尽きます。
「○○さんのおかげで、今年もレタスがたくさん売れて助かったよ! ありがとう!」
そう言われてうれしくないパートさんはいません。出荷者も積極的にチーム力を高めることに参加していきましょう。
いやらしい言い方をすれば、農産物がより多く売れるなら、パートさんをおだてることなんて安いものだと考えましょう。
 

信頼して任せよう!

さて、最後にオススメしたいのは、パートさん・アルバイトさんにレジ打ちだけさせておくのではなく、いろんなことを任せていくことです。
私たちの直売所では、美大に通っているアルバイトさんに、野菜のイラストを描いてもらいました。また、お店に並べる加工品を探してくるバイヤー業務にもパートさんに参加してもらっています。
何かを任せると本人の成長にもつながりますし、お店への愛着も湧いてくるものです。
ともすると、店長にしてみれば、任せたことの成果がとても気になるかもしれません。たとえばPOPづくりを任せたとしたら、そのPOPが販促効果をきちんと発揮するかどうか、といったことです。店長自身で作った方が良いものができる、そういう場合もあるでしょう。
しかし、「販促効果は二の次だ」くらいに思うべきです。パートさんがお店に愛着を持ってくれて、やりがいを感じて働いてもらうことがまずは重要なことですし、経験を積むことではじめて人は育ちます。
スポーツの試合であれば、重要なところでエラーしたら取り返しがつかないかもしれません。でもビジネスでは多くの場合挽回が可能です。なので、エラーを怖がるよりも、「あなたを信頼して任せます」という姿勢を示し、メンバーのやりがいをアップさせていきましょう。

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以上、今回は直売所のチーム力について書きました。「ワクワクの発信」、「出荷者の協力」、そして「任せる」。この3つがあるだけで、お店の雰囲気は大きく変わります。おいしいものを届けるという得点をあげることが、チームの共通目標になります。そして、そうしたお店ではリピーターが増えますから、必ず売り上げは付いてきます。

直売所のチーム力、いちど点検してみてください。

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