日本に30種類以上ある「香酸柑橘」 消費のハードルが高い?
突然ですが写真に映っているくし切りの柑橘類の名前、それぞれ分かりますか?
分からないですよね、筆者も分かりません。むしろ、全部一緒じゃない?と思う方がいてもおかしくないでしょう。正解は以下です!
「香酸サミットオンライン」を主催した株式会社みかんの清原優太(きよはら・ゆうた)さんは、「香酸柑橘」の違いが知られていないのには3つの理由があるとしました。ちなみに清原さん、東京大学在学時に「東大みかん愛好会」を設立、卒業後は「株式会社みかん」を立ち上げ、産地や業種の垣根を越えて200人が集まる「みかんサミット」を開催する筋金入りの柑橘好きです。
①敷居が高い
香酸柑橘の生産量が少ないため、入手のハードルが高い。そしておいしく作るためのハードルも高い。
②意外と産地連携ができていない
カボスは大分、長門ゆずきちは山口……と、それぞれの産地が別々にPRを頑張っているという状況。他産地の柑橘と「比べる」ということはあまりなかった。
③発信が十分でない
「こうさん柑橘」と聞いて「高い酸」を連想する人が大半では?実は、日本には約30種類以上の香酸柑橘がある。
この3つの課題にまとめて向き合ってしまおうと清原さんらが10月下旬に開催したのが、この「香酸柑橘サミットオンライン」。「搾る」だけで香りが立つ「香酸柑橘」のカルチャーを発信し、産地を越えてその「未確立な分野を皆さんと盛り上げていきたい」(清原さん)と、開会が宣言されました。
東京・大手町の「AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)」から、4産地を中継しながらオンラインで配信し、約240人がリアルタイムで視聴しました。
おすすめの味わい方【4選】
前半パートでは、自炊料理研究家・山口祐加さんと、果物専門店の新宿高野・久保直子さんと一緒におすすめの食べ方を試していきます。ここで4種の柑橘の特徴をご紹介。
かぼす…大分県で多く育てられています。爽やかさ、渋み、バランスの良い風味が特徴。今回のイベントでは、認知度が高いので比較の際の軸としての役割を担います。
へべす…宮崎県の特産で、名前の由来は発見者が「平兵衛さん」だったからとか。種が少なくて搾りやすいです。果汁が多いのでお得感あり◎
長門(ながと)ゆずきち…山口県のオリジナル柑橘。名前のインパクトとは裏腹に、爽やかな香りと優しい酸味が特徴。醤油との相性が非常によく、黄色く色付いたものは「きになる長門ゆずきち」と呼ばれ、より上品な味わいになります。
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辺塚(へつか)だいだい…鹿児島県肝付町と南大隅町周辺という限定的なエリアが産地で、ダイダイに似て小ぶりで、薄く滑らかな皮が特徴。柔らかい酸味と穏やかでふんわりとした香りがあります。
【その1】炭酸水に搾る
果実の特徴が最もわかりやすかったのが、この炭酸水に絞る飲み方。砂糖不使用の炭酸水と氷と入れたコップに絞ると、香りと味が立ち上がりました。手に取ってよく見ると皮の厚さや色、種の数など見た目から全然違うことに気が付きます。
柑橘は皮にうま味や香りが詰まっているので、皮を下にして搾るのが大分県など産地での搾り方だそうです。含まれている有機酸から元気をもらいつつ、それぞれの違いを把握したところで次へ!
【その2】豆乳・牛乳に搾る
豆乳・牛乳200cc に対して、2分の1個の柑橘を搾って頂く楽しみ方。マドラーでかき混ぜると途中でドロっと固まってきますが、完全に分離してしまうことはありません。ガムシロップやハチミツ、メープルシロップなどを仕上げに少し入れれば、即席ヨーグルト飲料の出来上がり!これがほんのり甘くさっぱりとしていてかなり美味です。恐る恐る飲んだ会場の評判も上々でした。臭みが全くなく、かき混ぜる面白さも含めてお子さんのいる家庭で喜ばれそう。ラッシー代わりにカレーと飲んでもいいですね。
【その3】お酒に搾る
こちらは定番の使い方と思いきや、使えるのは焼酎やウイスキーの蒸留酒だけではないということ。ビールに入れるのも、苦みをまろやかにしてくれるのでおすすめなんだそう。特に、果汁の多いへべすを搾ると、度数の高いお酒の角が取れて沢山飲めてしまう印象でした。「それぞれ酸味や苦みの具合が違うので、自分のお気に入りを探すのも面白い」と山口さん。
【その4】果物に搾る
甘みの強い果物に柑橘を搾ると、お肉料理などを食べた後にぴったりな爽やかなデザートになります。「梨や柿などがおすすめ。そのまま食べても、柑橘を搾っても二度おいしいです」と久保さん。
後半パートでは、4つの産地を中継で繋ぎ、山口県、大分県、宮崎県、鹿児島県の生産者さんや町長さん(!)たちが、それぞれがおすすめの楽しみ方を紹介しました。ライブ感たっぷりの動画を要チェックです。
香酸柑橘の魅力は、「そのまま食べることはできないけど、それ以外の食べ方は自分次第で豊富になる」(久保さん)というところに尽きると感じました。酢飯のお酢の代わりに使うなど、香りの良い調味料としても活躍します。山口さんは、かつお節とみそ汁をご飯にかける「ねこまんま」に柑橘を搾るそう。「白米の重たさが全く目立たなくなりサラサラと頂ける」ということ。
なるほど、肩ひじ張らずに【普段のご飯+α】の使い方でいいんだと思うと、もっと気軽に取り入れられそうです。ぜひ皆さんもお家で食べ比べをして、自分好みの柑橘を探してみてくださいね。
(PHOTO=霜田直人、四方田里奈)