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原発事故の風評被害に立ち向かえた販路とは、大規模化を進める農家にせまる

連載企画:農業経営のヒント

原発事故の風評被害に立ち向かえた販路とは、大規模化を進める農家にせまる

2011年の東日本大震災からもうすぐ10年になる。あのとき原発事故や津波でたくさんの農家が深刻な被害を受けた。だが10年の歳月を経て、再生への道を力強く歩んでいる農家もいる。そんな一人、紅梅夢(こうばいゆめ)ファーム(福島県南相馬市)の佐藤良一(さとう・りょういち)さんにインタビューした。

大規模化、6次産業化を実現するまでは決して平たんな道のりではなかった

紅梅夢ファームは地元のコメ農家の佐藤さんが中心になり、2017年に立ち上げた。栽培面積は9ヘクタールからスタートし、2020年には70ヘクタールまで拡大した。すでに日本の稲作では有数の規模だが、農地の復旧に伴い、拡張はなお続く。2021年はさらに10ヘクタール以上増える見通しだ。
品目はコメを軸に菜種や大豆、タマネギを栽培している。菜種は外部に委託して油を搾り、ゴマ油やしょうゆ、唐辛子などを加え、瓶詰めにして商品化した。作物の栽培から加工まで手がける6次産業化だ。「ごはん専用オイル」や「パン専用オイル」など、用途を分けて特徴を出している。
大規模化や6次産業化に加え、紅梅夢ファームが注目を集めているのが、スマート農業への取り組みだ。国や県、大学、農機メーカーが後押しする産官学の実証実験の対象に選ばれ、最新技術の導入に着手。無人で動くトラクターや自動で直線に走る田植え機などを使い始めている。
東日本大震災という未曽有の災害をきっかけに、新しい農業に挑戦するモデルケースとして期待されているのが紅梅夢ファームだ。だが、佐藤さんがここにいたるまでの道のりは必ずしも平たんではなかった。

ご飯やパンにかける菜種油

震災で荒れた田んぼの復興を決意

「カキーンという大きな音がした」。佐藤さんはそのときのことをこうふり返る。地震の翌日の3月12日、場所は避難先の地元の公会堂。「(コメを貯蔵する)カントリーエレベーターでも壊れたんだろうか」。周囲とそんなふうに話したが、原因は違った。東電の第1原発で事故が起きた音だった。
公会堂では営農を続けるための方法を考えていたが、原発事故でそれどころではなくなった。避難先を何回か変え、変わり果てたふるさとに衝撃を受けたのがその年の秋。田んぼだった場所や道にセイタカアワダチソウが生い茂っているのを見て、「この姿を変えないといけない」と決意した。
農林水産省をはじめ行政と話し合い、0.4ヘクタールで稲作を再開したのが2012年。販売するためではなく、放射性物質がどれだけ残留しているかを調べるための試験栽培だった。一部を検査に回し、残ったコメは廃棄した。
試験栽培を2年間やったあと、実証栽培を3年間続けた。この間もコメを販売することはできなかったが、自分たちで食べてみることは認められた。この5年間を通し、検査で安全性に問題が出ることはなかった。
そして震災から6年後。原発事故による避難指示が前年に解除されたことを踏まえ、満を持して紅梅夢ファームを発足させた。

無人で走行するトラクター

再出発を後押ししてくれた仙台の農業法人、価格面や収量の課題をどう解決したか

佐藤さんは震災から2年目には早くも試験栽培に着手するなど、いずれコメの販売を再開することを視野に準備を進めてきた。だが、いざ紅梅夢ファームを立ち上げようと思うと、事前に解決しておかなければならない課題があった。栽培したコメをどこにどうやって売るかだ。

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