統計から見る外国人労働者数と需要
近年、国内の企業のあいだでは「募集をかけても採用できない」と、人材の確保に苦労する声があがっています。ご存知の通り、少子高齢化により生産労働人口が減少しているためです。
厚生労働省が発表している有効求人倍率をみると、2019年12月の有効求人倍率は1.57倍。これは求職者ひとりに対して1.5件の求人があることを指し、有効求人倍率が1を超えた2014年ごろから、国内の採用は売り手市場です。
一方で、国内で働く外国人の数は右肩上がりで増えています。厚生労働省が発表している『「外国人雇用状況」の届出状況』によれば、2020年10月末時点で国内に滞在する外国人労働者数は172万人を突破し、過去最高記録を更新しました。在留資格別外国人労働者数の推移をみても、2011年から10年間で2倍以上も増加していることがわかります。
内訳を見てみると、身分に基づく在留資格は近年あまり変化はありませんが、資格外活動、技能実習、専門的・技術的分野の在留資格は大きく増加し、割合を増やしています。こうした数字からも、国内の人手不足を伴うため、外国人を雇いたいという需要が高まっていることがわかります。
政府は、飲食業や宿泊業などの人手不足が深刻な業界で外国人が働けるよう範囲を広げた在留資格「特定技能」を新しく作るなど、人手不足への対応を進めています。
国別の割合
次に国別の割合を見てみましょう。
最も多い外国人労働者はベトナムで全体の26.2%を占めています。続くのが中国で全体の23%です。
ベトナム人の技能実習生は2017年時点でに全体の45.1%、特定技能は2021年6月時点で全体の62.4%を占めています。技能実習や特定技能の在留資格の外国人労働者の数は多いことから急激に増加しています。
伸び率で見てみると、中国人はほぼ横ばいなのに対し、ベトナム人は2015年から急増。ベトナムは海外への出稼ぎが珍しくないため制度が整っていること、日本より賃金水準が低いことから、ベトナム人は日本で働くことを選びます。
ただし、ベトナムと日本の賃金格差は縮まりつつあり、このままだと日本で働く選択は減っていくと予想されています。
そのほかの国を含めた、国別の外国人労働者数については以下の記事で詳しく解説しています。
2019年創設 外国人労働者受け入れ制度「特定技能」
2019年4月に入管法が改正され、新たに在留資格「特定技能」が創設されました。人手不足が深刻な産業分野全14業種において、外国人材の受け入れを可能にしたものです。14業種には介護・農業・漁業・宿泊・外食業などがあります。詳しくは関連記事で解説していますので、ご覧ください。
特定技能の特徴① 単純労働が可能
人手不足に対するために新設された在留資格であることから、単純労働を行うことが可能で、幅広く業務に携わることができます。
在留資格によっては単純労働ができません。例えば、就労ビサの代表格と言われる「技術・人文知識・国際業務」では単純労働はできません。「技術・人文知識・国際業務」は専門職であり、専門知識を必要としない、あるいは学籍・職歴や文化と関連しない業務は行うことができないからです。
特定技能の特徴② 試験に合格することで取得が可能
特定技能は2種類の試験に合格することで、取得が可能です。
取得を希望する外国人の学歴要件は不要なので、それだけ取得希望の外国人にとっては敷居の低い在留資格と言えます。例えば、「技術・人文知識・国際業務」の場合は、「上陸許可基準適合性」というものがあり、決められた分野の大学卒や10年以上の実務経験が必要になります。
在留資格「特定技能」1号・2号とその違い
特定技能には1号と2号があります。2つの大きな違いは、在留期間です。「特定技能」1号では在留期間の上限が「5年」なのに対し、「特定技能」2号の場合は上限がありません。また、「特定技能」2号の場合は、要件を満たすことで家族帯同もできます。
現在2号は「建設業」と「造船・舶用工業」の2分野のみですが、他分野でも2号を設ける方向で調整にはいっていると報道されています。
間違えやすい?「技能実習」と「特定技能」
どちらも近年頻繁に耳にする在留資格ですが、名前が似ているため間違われることも多いようです。違いを見てみましょう。
大きな違いは、その設立目的です。人手不足解消を目的とした特定技能とは違い、技能実習は、外国人への技能移転・国際貢献が目的です。そのため就労目的となることは基本的にできず、転職が不可であったり、家族帯同が不可だったりします。
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外国人労働者受け入れの4つのメリット
では、企業が外国人労働者を受け入れることで得られるメリットとはどんなものでしょうか。
メリット1、人手不足の解消
まず考えられるのが、人手不足の解消です。
日本人だけでなく外国人材を採用の対象に加えることで、求職者の母数が広がり、採用に苦戦していた職種でも、望む人材に出会える可能性が高まります。電子・電気や機械系のエンジニアといった専門スキルを持った人材の採用や、地方での募集が多い農業、慢性的に人手が不足している宿泊・飲食といったサービス業の従業員の確保にも適しています。
メリット2、訪日外国人への多言語対応
日本語だけでなく、英語やその他外国語を母語とする従業員を幅広く雇うことで、訪日外国人への対応力を高めることができます。日本を訪れる外国人旅行客の数は増加の一途で、政府は観光を国の政策の一つに掲げており、2030年までの訪日外国人旅行者数を6,000万人に設定しています。現在は新型コロナウイルスの影響で旅行客はできませんが、治まればまた以前の状態に戻ることが予想され、多言語対応の需要はさらに高まっていくでしょう。
外国人の従業員が職場にいることで、その国の文化や価値観を踏まえたスムーズな接客が可能になります。
メリット3、外国人労働者受け入れのコストの最適化や助成金利用ができる
介護職や建設、飲食業といった国内で人材が不足しがちな職種では、思うように求職者が集まらず採用期間が長引き年中求人を出さなければいけないケースもあります。募集期間が長引く分、採用コストも膨らみます。
そこで日本人だけではなく、国内外の外国人を対象に含めることで求職者の数が格段に増え、結果的に採用サイクルの短縮化が期待できます。求人広告費用など受け入れにかかるコストが改善されたり、期待通り求職者の応募が集まったりすれば、人材雇用がより安定的に行えるでしょう。また、外国人を受け入れた際に使える助成金もあります。国からの助成金だけでなく、自治体が独自で出している助成金制度もあるのでうまく活用しましょう。
メリット4、海外進出への足掛かり
海外へサービス展開を考える企業にとって、現地の法律や習慣、言語の壁は大きな問題です。もし社内に進出を予定している国をよく知っている外国人従業員がいれば、海外進出の大きな助けになるかもしれません。今すぐではなく、数年単位で海外ビジネスの展開を検討している企業は、関連する国の言語や習慣に精通している外国人人材の受け入れを検討してみるといいでしょう。
外国人労働者受け入れの4つのデメリット
上記のようなメリットがある一方、当然、デメリットもあります。きちんと把握をしたうえで検討すれば、対策を立てることも可能です。
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