若手農家に武井が真剣アドバイス! 農家のブランディング、シェフとの付き合い方のコツとは

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若手農家に武井が真剣アドバイス! 農家のブランディング、シェフとの付き合い方のコツとは

若手農家に武井が真剣アドバイス! 農家のブランディング、シェフとの付き合い方のコツとは
最終更新日:2021年04月09日

農業を始めて一度の営業もせずに、現在は栽培した野菜の95%をレストランへ直接販売しているタケイファーム代表、武井敏信(たけい・としのぶ)です。
マイナビ農業が主催するオンライン農業経営塾「農家が語るべきストーリー戦略講座」。私はこの講座で、農家のブランディングにつながるさまざまな戦略について伝えています。今回は、この講座を経て「マイナビ農業認定農家第1号」となった小澤知世(おざわ・ともよ)さんの畑を訪問。今回の経験を今後の農業にどう生かしていくのか聞くとともに、私からもアドバイスさせてもらいました。

講座に参加するにあたっての不安と期待

私が講師を務める農業経営塾「農家が語るべきストーリー戦略講座」。2020年の10月から2021年の3月にかけて全12回の第1クールが開催され、多くの農家が受講しました。この講座では、私とゲスト講師である有名店のシェフたちによる受講者の農産物の品評会があり、ここで認められた農家は「マイナビ農業認定農家」となることができます。認定農家になることは、有名レストランとの取引のきっかけにもなるため、農家にとってはまたとないチャンスになると思います。
今回のクールで認定された第1号は、和歌山県のミカン農家、小澤知世さんです。

小澤さんは大学卒業後、航空会社でグランドスタッフ、国内線および国際線のキャビンアテンダントとして勤務。3年前に和歌山県有田郡で江戸末期から続くミカン農家の6代目、「みかんのみっちゃん農園」代表の小澤光範(おざわ・みつのり)さんと結婚しました。現在は地域になじむために地元の会社で事務職をしながら週末に農園の手伝いをし、農業の経験を積んでいます。今後は事務職を辞め、本格的に農園に入る予定になっているそう。

小澤知世さん(左)と夫の光範さん(右)

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講座参加への不安があった

最初に今回の講座を見つけたのは光範さん。「こんな講座があるぞ」とすすめられた小澤さんは興味を持ったものの、2つの不安が先に立ったそうです。

1つ目の不安は、フルタイムで仕事をした後に講座を受け続けることができるのかということ。実際には、講座はオンライン開催ということもあり、後で録画を見ることができるので、不便さは感じなかったとのこと。ただ、できる限りリアルタイムで受講した方がその時に質問ができるので良かったと振り返ります。

2つ目の不安は、会社員をしていてまだガッツリと農業をしていない自分が受けてよいのかということ。実際、小澤さんが栽培に関わる時間は短いですが、結婚前から農園の広報には主体的に関わってきたと言います。今後さらに農園の広報担当としてブランディングをしていきたいとの展望も持っていました。また、講座を通じて普段会えないトップシェフと出会うことができるのは良い経験になると思い参加したそうです。

講座参加への期待

現在のみっちゃん農園の出荷先は、ほとんどが一般消費者。リピーターも多く、「おいしい」という感想ももらえるものの、「自分たちが作るミカンがどの立ち位置にいるかがわからなかった」と小澤さんは言います。そこで、講座内の品評会でシェフに食べてもらい確認したいと思ったことが最大の参加の動機になったようです。
また、ちょうどブランディングの重要性も考え始めていた時期で、今まで試行錯誤してきた私の経験を聞くことで、今後の方向性を考えるための勉強になると思ったようです。

発送する柑橘(かんきつ)類

農業経営塾「農家が語るべきストーリー戦略講座」の詳細はこちら
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異業種から農業の世界へ入り、役に立ったこと

みかんのみっちゃん農園は、年間60品種の柑橘を栽培し、InstagramやFacebook、TwitterなどのSNSを使って一般消費者に販売しています。その顧客は1万人というから驚きです。さらにホームページやオンラインショップがないというのですから、発信の仕方にも興味がわきます。
SNSの発信は主に光範さんが担当しているとのことですが、前職が接客業だった小澤さんだからこそ気づく気配りがあります。みっちゃん農園からミカンを買う客として光範さんと出会い、農業未経験から農家の妻となったという小澤さん。今は、夫が使う農家ならではの言い回しをわかりやすい言葉に変換する役目をしているそうです。確かに、プロが使う言葉や用語は一般消費者にはわかりにくいことが多いもの。ミカンについてわかりやすく伝えることが顧客獲得につながっているのではないでしょうか。お客さんがSNSに投稿してくれたコメントに対してまめに返信することも、現在の農園を支えている重要な部分のような気がしました。

ミカン畑

レストランと取り引きするためのアドバイス

味の判断は糖度だけではない

マイナビ農業認定農家になるための条件の一つに、生産物の味のクオリティーがあります。味の改善をするために何をしたか質問したところ、「肥料屋さんと密に連絡を取って、おすすめの肥料やそれを使うタイミングなどを教えてもらって使った結果、糖度があがった」と答えてくれました。

しかし私はその答えに対して「糖度が高ければ良いというわけではない」と伝えました。
生産物の味をPRするための手段として、糖度が高いと表示するケースがあります。これは、セールストークにはなりますが、シェフが使うかはまた別の話。シェフは自分の料理に合うか合わないかで選びます。「甘い=おいしい=シェフが使う」ではないのです。
逆に、一人のシェフに「合わない」と言われても落ち込む必要はありません。たまたまシェフが考える料理に合わなかっただけなのです。
大切なのはここから。そのお店と取り引きがなくならないように、どうすれば使ってもらえるのかを聞くことが重要なのです。せっかくシェフに食べてもらえる機会を得たのですから、そこであきらめてしまうのはもったいない。シェフによって、料理のスタイルも変わりますので、どのような味を求めているのかを聞き、別の品種を提案することで、取り引きが成立するケースもあります。ここで重要なのは、生産物ではなく、生産者のやる気。生産者自身の魅力を伝えることが必要なのです。生産物だけで付き合っていると、味や値段によって代わりはいくらでもあります。生産者の魅力で付き合っていると滅多なことで代わることはなく、結果、長きにわたり取り引きが続くことになります。

味見はどうしてる?

農家が自分が収穫した生産物を味見するのは当然でしょう。小澤さんも生で食べて味見をするそうです。一般的にフルーツは生で食べるのが普通ですが、実はレストランでの使い方は生に限ったことではありません。
今回の品評会ではシェフがみっちゃん農園の柑橘を加熱して料理を作りました。直接話せたことにより、サイズ感を学んだり、加熱する料理としての目線で考えたりすることで、今までとは違った提案をしないといけないと理解したようです。

品評会でシェフが調理

ブラッドオレンジのソテー

レストランへのPR方法

年間60品種もの柑橘を栽培している小澤さん。確かにそれは大変なことだし、素晴らしいと思います。
しかし、それをシェフに伝えたとしても、品種が多いことにシェフはそれほど興味はそそられないでしょう。それより、「何を栽培しているのですか?」とか「今はどの品種がありますか?」といった質問が返ってくるはず。シェフは具体的に「何があるのか」に興味を持っているので、それを伝えることが大切だと私は小澤さんにアドバイスしました。
年間60品種というよりも、季節ごとにスペシャリテ(シェフの自慢の一皿)となる柑橘をいくつかPRすることによって、シェフの目にとまりやすくなり、さらに他の生産者との差別化にもつながります。

今後へ向けて、課題は効率化

農園では顧客の数の多さもあり、繁忙期は夜中の12時くらいまで仕事に追われることもあると言います。
「今は若いからできるけど、年をとったときや体をこわしたときにはできない……」と、小澤さんは今のやり方に効率化を求めていました。
現状、商品発送の送り状は手書きということで、それだけでも大変な事です。すぐにできる対策として、自宅のプリンターで送り状の印刷ができる運送会社のサービスなどを取り入れることを提案。リピーターが多いため小澤さんにとっては時間の節約になります。
また、現在はオンラインショップを持たずにSNSでダイレクトに注文を受けているため、発送、入金確認までかなりの手間がかかっているようです。オンラインショップを検討しているようですが、今までのやり方を変えるタイミングがなかなか難しいとのこと。
複雑なやり方は、ミスにつながり、続きません。シンプルかつ簡単にすることで、それらを改善できますので、早めのタイミングでオンラインショップを導入した方がよいとアドバイスしました。

経験値を超える学びを

一般消費者とダイレクトにつながり、顧客も確保している小澤さんですが、講座を受けてマイナビ農業認定農家となったことで、レストランという販売チャンネルを新たに増やしました。今後は、東京のマルシェなどにも挑戦したいそうです。

マイナビ農業認定農家は、マイナビ農業にPRページが掲載されることになりますので、今後も小澤さんとレストランとの取引が増えることを期待しています。

マイナビ農業認定農家の小澤さんと講師の武井

農業は、経験値がものをいう職業の一つです。就農してから2~3年の人よりも、20年のベテランの方が良い作物を作っている可能性が高いので、シェフはどうしてもベテランから購入する傾向にあります。私は講座に参加した人に「この差を5年縮めてほしい」と伝えました。
小澤さんは、わずかな時間で、今後の自分の農業に大きな可能性が持てたようです。講座の内容が、いつか小澤さんの農業の中で生かされる時が来ると思いますが、今後は、同じ農業者として長いお付き合いができればと考えています。

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