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酷暑期の夏秋イチゴの秀品率をアップ! ヤンマーの『断熱送風栽培槽DN-1』の実力とは?

酷暑期の夏秋イチゴの秀品率をアップ! ヤンマーの『断熱送風栽培槽DN-1』の実力とは?

夏から秋にかけての端境期に収穫ができるように四季成りイチゴの育種が行われ、食味の良い品種が実用化されているものの、夏場の高温が災いし、夏秋イチゴの栽培から撤退する人も出ています。栃木県でイチゴの周年栽培に取り組む野口一樹さんは、ヤンマーが開発した『断熱送風栽培槽DN-1』を試験的に導入し、エネルギーコストを抑えつつ、酷暑期でも安定した品質の夏秋イチゴを収穫できることを確かめました。2シーズンにわたる夏秋イチゴでの実証栽培についてお話を伺いました。

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酷暑期には四季成り品種でも「秀品率」や「収量」が大幅に低下

イチゴ栽培のメインストリームである“冬春イチゴ”は、秋口に定植して晩秋から翌年の初夏まで収穫するため、イチゴの流通量が夏から秋にかけて激減することがケーキ業界などの長年の課題です。近年では需要に合わせ、夏から秋に収穫できる四季成りイチゴの品種改良が進み、食味の良い“夏秋イチゴ”が出荷されるようになっています。

しかし、地球温暖化の影響もあってか、最高気温が35℃を越える猛暑日が急増し、夏場に収穫ができるように育成された品種であっても高温障害による着果不良で秀品率や収量が大幅に落ち込み、「夏秋イチゴの栽培管理は難しい」と言われるまでになっています。

ヤンマーグリーンシステム株式会社

栃木県真岡市でイチゴの周年栽培に取り組む野口一樹さん(野口いちご園)も、こうした酷暑期のイチゴ栽培に苦労していた一人です。

「安定した雇用環境を維持するためにも『とちおとめ』や『とちあいか』などの冬春イチゴに加え、栃木県が育成した四季成り品種の『なつおとめ』を栽培し、イチゴの周年生産に取り組んでいるのですが…、35℃以上の高温にさらされると花粉が破壊され、着果不良が起こって秀品率や収量が大幅に下がります。周囲のイチゴ農家も同じような問題を抱えており、夏秋イチゴの栽培から撤退する人も出ています」と野口さん。

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更に「イチゴの出荷量が全国トップの栃木県であっても、この状況では夏秋イチゴの産地としての収量は維持できず、市場での存在感を示せません」と危機感を口にします。

『断熱送風栽培槽DN-1』の導入で効率的な温度管理を実現

高温障害が発生しないようにハウス全体を冷房していては、電気料金がかさんで経営を圧迫しかねません。

従来では冬春イチゴと同様に土耕で栽培してきた野口さんですが、少しでも温度を下げようと、風通しが良くなるように架台を自作して、高設栽培にも取り組みましたが、思うように秀品率や収量を向上させることはできませんでした。そんな折、ヤンマーがイチゴの株元に冷風や温風をダイレクトに送り届けられる栽培ベンチの開発を進めているという情報を耳にし、詳しい話を聞くことにしました。

ヤンマーの『断熱送風栽培槽DN-1』は、発泡スチロールでできた二層構造の高設栽培ベンチ用資材で、下部の通風ダクトから通風孔を通じて冷風、温風、CO2を局所施用することができ、エネルギーコストを低く抑えつつ、温度制御の効果を最大限得られる仕組みになっています。

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ハウス全体を冷やすのではなく、イチゴの群落部の温度をコントロールするという開発コンセプトに可能性を感じ、野口さんは『断熱送風栽培槽DN-1』の商品化に向けた実証栽培に協力することを即決します。

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「イチゴは株元付近の温度変化に敏感に反応すると言われているため、吹き出し口にマルチフィルムを張ることで、株元に送風を誘導するように設計していました。しかし、野口さんとの実証栽培では花粉の変質を防ぐため、花の周囲の温度を35℃よりも下げることを目的にマルチフィルムの一部を裂いて吹き出し口から上方に冷気が流れるようにしています」と説明してくれたのは、開発メンバーのヤンマーグリーンシステム株式会社・川口哲平さん。

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現場ならではのこうした工夫を施した『断熱送風栽培槽DN-1』の効果を確かめるため、野口さんは隣り合ったビニールハウスで比較栽培試験を実施。花の周囲に冷風を吹き付けること以外は可能な限り同じ条件にしたところ、冷風を使わない対照区が毎日のように35℃を越えたのに対し、『断熱送風栽培槽DN-1』を使った断熱区では33℃を上回ることはありませんでした。

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『断熱送風栽培槽DN-1』の詳細はこちら

従来のイチゴの単価でも十分に導入が可能

「夏秋イチゴでは実証栽培を2シーズン行い、加工用に出荷することができる規格外品を含む全体の収量は、対照区よりも2~3割は増えることが確かめられました。特に高温障害で花粉の変質が発生する酷暑期は、冷風を使わない対照区ではほとんど収穫できなかったのに対し、断熱区では対照区の7~8倍ほどの収穫が得られました」と、笑顔で話す野口さん。

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こうした結果を基に“費用対効果”を算出したところ、これまで通りのイチゴの単価でも十分に減価償却が可能だと話し、地域の取り組みとして『断熱送風栽培槽DN-1』を導入し、品質の高いイチゴを周年生産できるようになれば、バイヤーと価格交渉をする上でも好材料になると期待を寄せます。

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『断熱送風栽培槽DN-1』を導入した酷暑期のイチゴの様子(2020年8月・野口いちご園)


 

もちろん、更なるランニングコストの削減にもトライをしています。

2020年の実証栽培では、初めての試みであったこともあり、断熱区では朝7時から夜7時までの間、ヒートポンプの冷房が最大で働くような設定にしていました。

しかし、一作を通してやってみると、そこまで冷房を利かさなくても生育に対して一定の効果が出るのではないかとの感触を得たため、2021年では消費電力を抑えつつも、35℃を上回らないように設定を変え、より費用対効果を高める最適な運用方法を模索する実証試験を行っています。

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「夏秋イチゴが秋まで収穫できる一方で、冬春イチゴの定植は秋口に始まるので、夏秋と冬春でそれぞれの栽培施設が必要です。もちろん、『断熱送風栽培槽DN-1』は冬春の促成栽培にも使えるのでヤンマーの川口さんに相談して、同じ施設で夏秋イチゴと冬春イチゴを生産する二期作についても実証試験を行う準備を進めています」と野口さん。

川口さんも「同じ施設での二期作を実現する資材や運用方法も徐々に形になってきている」と見通しを語ります。

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エネルギーコストを抑えながら酷暑期でも夏秋イチゴを安定して収穫できるという『断熱送風栽培槽DN-1』の特徴だけをとっても、夏秋イチゴに取り組む農家や周年栽培を検討している農家にとっては、大きな力となるでしょう。

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