近年注目を集める植物工場を導入するには確かな戦略が必要
地球温暖化の影響が叫ばれ、ここ最近は猛烈な暑さや長雨による農作物への被害が国内で相次いでいます。太陽や雨の恵みによって育つ農作物が影響を受けるのは仕方がないことかもしれませんが、収量の変化による価格の乱降下は消費者にとっても生産者にとっても悩ましい問題です。また、病害虫や農薬の使用量に対する消費者意識の変化から、安全面に対するニーズも年々高まっています。そのような問題のソリューションになるのが植物工場です。
植物工場は、露地栽培と違い天候に左右されないので、安定した作物の生育と供給が可能です。屋内で栽培するので病害虫の心配はなく、農薬も必要ありません。加えて、最適化された環境と培養液によって育つので、高品質で栄養価の高い作物が収穫できます。また、生菌数が少ないので日持ちが良く、食品ロスを防げることから、SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の観点からも注目されています。
このようなメリットの多さから、政府もスマート農業の旗手として後押ししている植物工場。
一方で初期投資やランニングコストの高さがネックとなり、数年で撤退する企業が相次いでいるのが現状です。植物工場事業で成功するには、しっかりとした戦略が必要なのです。
植物工場専門の子会社を設立、さらに新工場も!空調設備企業の大気社はなぜそこまで攻めるのか?

大気社の本社が入る新宿のビル
株式会社大気社は1913年(大正2年)に創立され、空調設備会社として100年以上の歴史と実績を持ちます。ビルや工場の空調設備、自動車メーカーなどの大型塗装プラントなど、国内をはじめ、海外でも多くの設備を手掛けてきました。その中で、新たなチャレンジとして始めたのが植物工場です。プラント設備を得意とする大気社がまったく畑違いの農業分野に参入したのは、リーマン・ショックがきっかけだったと子会社の株式会社ベジ・ファクトリーで顧問を務める伊東啓一さんは話してくれました。

株式会社ベジ・ファクトリー顧問 伊東啓一さん
2008年9月にアメリカで発生したリーマン・ショックは瞬く間に全世界に広がり、多くの企業をどん底に落としました。大手企業を取引先に持つ大気社も例外ではなく、受注案件は減り、凍結されたプロジェクトも数多くあったそうです。
「過度な受注競争による不採算案件が続出しました。このままではまずいと、企業体力があるうちに新たなビジネスを見つけることが喫緊の課題だったわけです」(伊東啓一さん)
折しもLEDの登場などによる技術革新が起こり、取引先企業からの要望もあって、大気社は植物工場事業への新規参入を決意します。
社の企業理念は「永続的に成長し、社会に貢献する会社づくり」。労働人口の減少や異常気象に悩まされる日本の農業に、得意とする環境ソリューション技術を惜しまず投入しました。
その結果が、完全人工光を採用した水耕栽培植物工場の『Vege-Factory(ベジファクトリー)』の設立です。そして2021年の3月には植物工場事業の領域拡大・拡充を目的とし、100%出資の子会社として株式会社ベジ・ファクトリーを新設。7月には埼玉県杉戸町に初の自社量産実証工場を竣工し、現在リーフレタス(200g品)などを一日当たり2,300株出荷しています。さらに、そのほかの建設中の植物工場と合わせて、2021年度中にベジ・ファクトリーとして全国で日産約2トンの生産供給体制を築く予定です。
子会社のベジ・ファクトリーを新設した理由については、アグリビジネスを進めていくためにはブランドの構築が必要不可欠であると判断したと、大気社のグリーン機器事業所長である久保田康三さんは説明してくれました。
「私たちは空調設備事業の歴史が長く、どうしても“建設業界の企業”としてお客様に認識されています。今後もアグリビジネスを続けていくために、社名もイメージカラーも一新したほうがよいと考えたのです。また専門事業として会社を分けたことで、設計から生産・販売までのトータルソリューションが提案しやすくなったと思います」(久保田康三さん)

大気社グリーン機器事業所長 久保田康三さん
ベジ・ファクトリーの営業部企画営業課課長の岩井栄さんは、さらに詳細な情報やニーズを入手できるようになったと子会社化のメリットを話してくれました。
「専業カンパニーになったことで繋がりが増え、より有益な情報が得られるので、お客様のニーズを掴みやすくなりました」(岩井栄さん)

ベジ・ファクトリーの営業部 企画営業課課長の岩井栄さん
新しいビジネスの選択肢として魅力的な「ベジ・ファクトリー」
植物工場を黒字化するには、いくつかのポイントがあると伊東さんは話します。
ベジ・ファクトリーは、安定して早期に育成できる高照度照明システム、面積当たりの生産量に直結する最大12段の栽培棚、温度を統一して育成ムラを防ぐ空調設備によって安定した高収量を確保し、安価な夜間電力を使用するなどしてランニングコストを抑えます。加えて、販路をコンビニエンスストア向け加工ベンダーや外食向けセントラルキッチンなどの業務用に絞ることで、価格競争に巻き込まれないようにしている点も重要だと説明してくれました。
業務用は安定した売上が見込める半面、プロに選ばれる品質も要求されますが、ベジ・ファクトリーならそれが可能です。味や色味はもちろんのこと、商品の大きさや重さ、生菌数など、多岐にわたる要望に応えることで、実績を積み上げてきました。
「業務用は高いクオリティと大きなサイズを要求されますが、それ以上に引き合いは強く、今後も伸長が見込まれます。大量ロットを安定して供給できるメリットが仕入れを担当するバイヤーにも認知されてきたからだと思います」(伊東啓一さん)
高度な植物工場の設計に栽培ノウハウ、確実な販路を提案でき、生産から客先納品まで一貫して行えることがベジ・ファクトリーの強みですが、共同事業として進めている案件もあります。
最近では、北陸電力、農林中央金庫、大気社(近日中にベジ・ファクトリーに移管)の3社が共同で出資する『株式会社フレデリッシュ』を福井県敦賀市に設立し、野菜の製造・販売を2021年の冬から予定しています。

株式会社フレデリッシュロゴマーク
このように業界を問わず、フレキシブルに事業展開ができる点も参入を考えている企業の後押しになっているのは間違いありません。今後については、全国における1日の生産量を30トンまで引き上げることを目標とし、鮮度を保つための物流システムの構築をはじめ、北米圏への進出も視野に入れているそうです。
広い土地や建屋の有効活用を考えている方、SDGsを通して地球環境に貢献したい方、そして日本の農業を変えてみたいとお考えの方は、大気社グループのベジ・ファクトリーまでお問い合わせください。
【お問い合わせ】
株式会社大気社
〒160-6129 東京都新宿区西新宿8-17-1 住友不動産新宿グランドタワー
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FAX:03-5338-5195
株式会社ベジ・ファクトリー
〒160-0023 東京都新宿区西新宿6-26-12 ITOビル7階
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