日本GAP協会は何をしているところ? 職員がお答えします!
座談会メンバー
伊與田 竜(いよだ りゅう) 運用管理部長 技術士(農業部門) これまでにJA、北海道庁で農業指導員・普及員としておよそ30年勤務。現場に残り続けたいという思いなどから本職に。 |
石川 久美子(いしかわ くみこ) 運用管理部 広報マネージャー 獣医師 動物好きから獣医師になり、畜産分野のアニマルウェルフェアに関わりたいと本職に。2017年に始まったJGAP家畜・畜産物の基準開発を担当。 |
中西 久美(なかにし くみ) 業務部 広報の仕事を経験し、専業主婦を経て本職へ。前職の経験を生かしてJGAPを広めるべく広報やHPの改修を担当。 |
伊與田:運用管理部長の伊與田です。農業の技術の開発、研修資料の作成、認証機関のサポートなど、技術部門を統括しています。30年間ほど農業改良普及員をしていました。よりよい農業の普及と、その取り組みを流通・消費に伝えることに力を活かしたいと思い北海道から東京(日本GAP協会)へ来ました。
石川:広報マネージャーの石川です。運用管理部で畜産の基準書の開発や登録業務など、畜産全般の業務と広報を担当しています。畜産部門の立ち上げから参加し、日本の畜産に対して何ができるか考えながら、開発に努めています。
中西:中西です。業務部で認証農場の登録・集計・データベースの作成のほか、石川さんと一緒に広報を担当しています。協会でいろいろな業務に携わるようになり、認証数や、作成したロゴマークを町で見かけることが増え、少しずつ身近に感じることができています。忙しくも楽しく仕事しています。
伊與田:さて、日本GAP協会が何をしているのか消費者のみなさんにはよくわからないですよね。私たちが目指しているのは、日本の農業をより良くするためのお手伝いをすること。そのために、基準書を作って、それを審査によって証明して、生産者の取り組みを伝えます。そして消費者の方々にその価値を理解して買っていただくことによって、共によい農業を作っていただくお手伝いをしながら、JGAPを社会のシステムとして回していく取り組みをしているところです。
石川:GAPの守備範囲が広すぎてわかりにくいかもしれませんが、食品安全はもちろん、労務管理、労働安全、環境保全、畜産ならアニマルウェルフェアや家畜衛生など様々なことにJGAPを通して生産者は取り組んでいます。消費者のみなさんに知ってもらう機会を増やしていきたいです。
中西:JGAPをSDGsと絡めて、その価値を知ってもらう活動がテーマです。生産者はおいしいものを作ることにプラスしてJGAPの100を超える基準をクリアしているので、その努力が報われる形になってほしいですね。
伊與田:そんな思いを持ってマイナビ農業で3本の記事を制作したので、ここで振り返りをさせていただきます。
記事紹介
取材記事で振り返る、JGAPのメリットと普及への思い
Vol.1 「SDGsにどう取り組んでいくかを模索している企業にJGAP認証を浸透させたい」
石川:1本目の記事は、イトーヨーカ堂さんの取り組みでした。GAPの認証プログラムの中で日本向けに作られたのがJGAPですが、それまで生産者さん向けに広報することが多かったので、実際に買っていただく消費者の方に向けてPRできた第一歩です。店舗の方が普及に取り組んでくださっている状況も垣間見ることができました。
中西:取材のときに、最近お客様から「JGAPって何?」と尋ねられることが増えて、売り場の方々が答えられるように一生懸命に勉強していると聞いて、少しずつですが消費者の方にJGAPを知っていただけているのと同時に、もっと広めていかなければと思いました。
伊與田:消費者がよりよいものを選べるようにするには、流通の取り組みがポイントになりますが、イトーヨーカ堂さんは、JGAPの認知度が低いときから率先してここまで築いてくださいました。流通を担う大企業に早い段階からJGAPの価値を理解いただけたのはありがたかったです。
石川:特に畜産は流通過程が複雑で管理が大変ですが、イトーヨーカ堂さんはトレーサビリティを確保してJGAPロゴマークを貼ってくださっています。私たちも生産者の思いを一緒に伝えていかなければいけませんね。
中西:SDGsにどう取り組んでいくかを模索している企業の方に、JGAP認証の農畜産物を使っていただく・購入していただくことで、生産現場と流通業者、消費者が共に持続可能性を支える価値を共有できたらという思いがあります。
伊與田:そうですね。たとえば伊藤園さんは、JGAP/ASIAGAP認証を荒茶の調達基準にして、生産者への技術指導から熱心にされ、企業としてGAPを生産現場の持続可能性の要にされていることをホームページにも掲載されていらっしゃいますね。このように、JGAPを通じて社会貢献ができることを伝えていけたらいいと思います。
Vol.2 「GAPは経営改善に一番近いアプローチの方法だという見方も」
伊與田:2本目は新規参入で畜産に取り組まれてまだ十数年の牧場さんの記事です。古くからの牧場さんは信頼やノウハウが蓄積されていますが、新規参入した牧場がJGAPを使うことによって農場の仕組みを作り、認証を取ってブランド化につなげることは、JGAPの使い方として一つのモデル的な事例ですね。
石川:認証を取得するメリットとして、最初は食品安全や付加価値に視点があることが多いのですが、農林水産省のGAPに関するアンケート(※令和元年GAP影響分析調査)によると、従業員の意識改革やモチベーションアップを実感している農場も多い結果となっています。これらに効果があったと半数以上が回答していました。
伊與田:遠野牧場さんの記事には、休暇を取れるようになったとか、労働時間を管理できるようになったという、働き方改革のような話もありましたね。
石川:基準書は教科書のようなもので、手洗い場に洗浄剤や手拭きなどの備品があるかなど、注意すべきポイントが書かれていて、そこで石鹸とペーパータオルを用意しなきゃいけなかったと気づく人もいると思います。実際に生産者さんに話を聞くと、従業員の意識が変わったことに加えて、農場が整理整頓されたと言われますね。
中西:私は認証を取っていない牧場さんを見る機会がないんですが、ぜんぜん違うものですか。
伊與田:前職で農家をまわって栽培技術・経営改善指導をしていましたが、新任のころ先輩が「納屋を見れば経営がわかる」と言われたことが心に残っています。整理整頓されているのは、作業工程がしっかり管理されて適切な作業がされているからで、結果として経営もよくなるということで、これはGAPの考え方にも通じます。GAPは整理整頓をはじめ多面的に農業の適切な管理方法を実践するためのもので、経営改善に一番近いアプローチの方法だという見方もできますね。
石川:審査員の方に話を聞くと、きれいにしている牧場は家畜の扱いも必然的にいいと言っていました。アニマルウェルフェアも動物のためだけでなく、動物にとって快適な環境は生産性がよくなり、品質も改善します。結果として農場、消費者のためにもなるものだと思います。
Vol.3 「地域全体のブランド化によるJGAP活用のよいモデル事例」
中西:3本目の記事で取材した、徳島県の牧場もきれいでしたね。
石川:私も印象に残っています。生産者さんと県がいかに熱意を持って一緒に取り組まれて地域ブランド牛を確立させたか。県としても販売していく戦略を持つためにJGAPを取り入れたと熱く語ってくださいました。
伊與田:地域全体のブランド化でのJGAPの活用は、多くの産地で取り組まれており、これもよいモデル事例だと思います。
中西:このファームでは、以前は牛の様子がおかしいと思ったら気が付いた従業員の方がつきっきりでいなければならなかったのが、記録帳を残すことで翌日の当番の方に引き継げるようになったと聞きました。牛の状態がよくなったし、従業員の負担も減ったとおっしゃっていたので、うまくGAPを活用できているんだろうなと思いました。
石川:自治体だけでなく企業としても経営リスクへの備えとしてGAPを使っていただいていますね。特に畜産では、複数の自社管理農場で認証を取得される企業も増えています。
伊與田:地域ではJAさんの取りまとめで団体認証に取り組まれているところもあります。生産者が足並みを揃えることは大変ですが、産地ブランディングに尽力されていますね。
生産者の思いが消費者まで届くように、JGAPの価値を発信していきます
伊與田:JGAP認証農畜産物を使いたい企業がある一方、頑張って認証を取ったけどどこに売ったらいいですかという生産者も結構いると思います。今後は、そこがしっかり繋がるマッチングシステムを作りたいですね。そのためにはJGAPを広く世の中に知っていただくことが重要。特に最近はSDGsで人権や福祉も注目を浴びているので、その取り組みを伝える意義は増していると感じます。
中西:今、SDGsは小中学校の教科書にも載っていますからね。GAPをやるとSDGsをやっていることになりますかという生産者の方から問い合わせも増えています。
石川:若い世代はより環境意識が高く、SDGsへの関心も高いと聞きます。SDGsへの取り組みが社会的に評価される時代が来ているので、農業が乗り遅れないようにしたいです。これからの若い人たちが農業に就職しやすくするためにも、GAPに取り組んでいただけるといいですね。
伊與田:消費者の方々に価値を理解していただくことが大事なので、日本GAP協会も消費者のみなさまに身近な存在になりたいと思っての今回の座談会でした。
石川:今年の目標はもっとJGAPロゴマークが消費者のみなさんの目に触れることです!
お問い合わせ先
一般財団法人日本GAP協会 Japan GAP Foundation