日本が肥料過多になりがちなのは前述した酸性土壌だということもありますが、雨が多く肥料分が流失しやすいというのも原因のひとつです。農業研修でオーストラリアのオーガニックファームに行った時に、乾燥していると病気やダニの被害が少ないということも知りました(その分、干ばつの問題もあるので、一概にどちらがいいとは言えませんが……)。
日本の農業、特に有機栽培においてはこの雨の多さと酸性土壌ということが難度を上げています。風来の畑がある地域は海沿いで土地が低く、水がつきやすいところです。最初の頃は水はけをそんなに気にしていなかったのですが、どの野菜でも畝の端の生育がよく不思議に思っていました。その違いは、両端は畝が高くなっているということです。

雑草抑制と水はけをよくするためにマルチング
水がつきやすいところでは根腐れしやすくなります。原因は水分が多いことで土の中が酸素不足となり、酸素の少ない環境を好む菌、主に腐敗菌が増殖することで起こることも調べて分かりました。水はけをよくすることが野菜の出来に直結すると実感し、それからはできるだけ高畝に。さらにビニールマルチをかけることで雨が降っても両脇に水が落ちるようにしました。
風来では省力化ということで半不耕起栽培。畝はそのままにして、表面5センチだけ管理機で耕運するようにしていますが、これも水はけをよくするためです。トラクターなどで深く耕運した後に畝をつくると、出来たばかりの時はフカフカなのですが、時間が経つと重力で硬くなり水が抜けにくくなります。半不耕起の場合、耕されていない部分は雑草や野菜の根が残り、またその根が腐ると根穴が残ります。そのことで水の抜けがよくなります。
根が元気になると野菜の生育もよくなり、病害虫も少なくなります。風来では高畝、半不耕起、マルチという手段を使っていますが、水はけをよくする方法があればこれらにこだわらなくても大丈夫。どんなに雨が降っても30分後には排水されている、そんな畝を目指しています。
丈夫な苗づくり
苗半作と言われるように苗づくりは大切だと実感しています。どんなにいい品種を選んだとしても苗づくりがうまくいかないと、病害虫を呼び込むような野菜になってしまいます。栽培方法によっても違うでしょうし、苗づくりのノウハウもたくさんありますが、ここでは私が実践していることを紹介します。
苗を育てる目的は自分の畑で丈夫な野菜を育てること。苗の時点では素晴らしくても、活着(根が畑の土になじむこと)がうまくいかないと弱くなります。

野菜作りのスタートは育苗から
種まきの土に関しては市販の大手メーカーの培養土を使っています。その方が確実だからです。苗がある程度育った時に大きめの鉢に移植するのですが、その時に畑の土とモミガラくん炭を合わせたものを使っています。そうすると畑に定植する時にスムーズに活着してくれます。
苗の段階でも肥料と水のあげすぎは厳禁だと思っています。苗の段階で根腐れやそれに近い状態になると、まさに病害虫の餌食となります。
春、夏作は実野菜が中心になります。実野菜には秋や冬までという生育期間が長いものも多いです。だからこそ最初が大切。春の苗づくり、土づくりをしっかり行い、病害虫被害に悩むことのない一年にしていきましょう。