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参入から12年で60アールから100ヘクタールに 女性がトップのメガファーム

山口 亮子

ライター:

参入から12年で60アールから100ヘクタールに 女性がトップのメガファーム

500人以上の地権者から100ヘクタールの農地を預かり、コメ、麦、大豆、小ネギ、キウイなどを生産するのが、大分県国東(くにさき)市の株式会社らいむ工房だ。毎年20ヘクタールほど農地が増え、2020年には県南部の豊後大野市に支社を作り、30ヘクタールを耕作するようになった。社長の佐藤朋美(さとう・ともみ)さん(冒頭写真右)は商品開発や食育にも熱心だ。

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農業経験ゼロからメガファームに

「農業を楽しく、食卓を楽しく。」
こう掲げるらいむ工房では、20~80代の従業員20人が活躍している。国東市は佐藤さんの夫で同社会長の司(つかさ)さん(冒頭写真左)の出身地。創業のきっかけは、司さんが実家の建設会社を継ぐために帰郷し、耕作放棄地の増加など地元農業の課題を知って衝撃を受けたことだった。

「かつて農業で栄えていたこの地域を、もう一度農業で盛り立てたい」
佐藤さん夫婦はこう考え、2010年にらいむ工房を創業した。わずか60アールからのスタートで、大分のブランド小ネギ「大分味一ねぎ」を作りつつ、耕作放棄地を使って麦や大豆も生産した。

社長の佐藤朋美さんは鹿児島県出身で、前職は幼稚園教諭と、農業経験はゼロ。創業時に入社した20代の社員2人に生産現場を任せ、「やるからには楽しみたい」と持ち前の社交性を発揮し、営業や販売に力を入れてきた。

2人の社員は今、農場長として同社の生産を支えている。信頼されて全てを任されたからこそ、自分で考えて改善を重ね、生産をレベルアップできたと実感しており、今では他の従業員たちに同じように仕事を任せつつ統括する立場になっている。

らいむ工房は農外からの参入だったため、創業当初は周りから厳しい目で見られたこともあった。しかし「農地の管理に困っている人が多く、口コミで耕作が広がっていきました」(佐藤さん)。地元の信頼を勝ち得、年々農地を広げている。

若手社員

若い社員が生産現場を引っ張っている。コンバインで稲刈りしているところ(画像提供:株式会社らいむ工房)

「自分のやりたいことと経営上の必要がうまくはまった」

佐藤さんは農業を始めたことで、地域の農家の女性から今が何の作物の旬で、どんな料理を作れるかといったことを教わる機会が増えた。

「地域の食文化という貴重なことを教わっているなと感じて。多くの人に健康になってもらうために、こうした情報を伝えていきたいと活動するようになりました」

食育に関連する資格を取得し、地域住民を対象にした料理教室を開くなど、子どもの食育に関わるようになった。自社で生産する作物を使い、ぬか床やみそといった発酵食品を作る教室やイベントを公民館や学校などで開いている。

もともと幼稚園教諭で、子どもと関わるのが大好きだった佐藤さんは「会社をやっていく中で、自分のやりたいことと経営上の必要がうまくはまった」と話す。

風景写真

預かる農地は今後も増える見込みだ(画像提供:株式会社らいむ工房)

新しい風を吹きこむ「むらさきもち麦」

同社が商品化に力を入れているのが「むらさきもち麦」だ。ポリフェノールの含有量が多く、濃い紫色で、プチプチした食感をしている。食物繊維をゴボウの約3倍と豊富に含む。

むらさきもち麦

むらさきもち麦を2ヘクタールで生産する(画像提供:株式会社らいむ工房)

そのまま炊けるように玄米とミックスした商品や、製粉した「むらさきもち麦粉」、炊いたりゆでたりしなくても使えるレトルトパックなど、さまざまな商品を開発した。

もち麦商品

左から、むらさきもち麦、むらさきもち麦粉、玄米とのミックス、レトルトパック

自社の作物とむらさきもち麦を使った料理教室も開いている。レシピを自ら開発してSNSで情報発信し、販路を広げている。

同社の売上高をみると、最も割合の高いのは大分味一ねぎだが、むらさきもち麦という看板商品ができたことで会社の認知度が上がってきている

「『らいむ工房といえば、むらさきもち麦』『らいむ工房といえば、健康』みたいなイメージを周りから持ってもらっています」(佐藤さん)

むらさきもち麦のごはん

佐藤さんはむらさきもち麦を使ったレシピを自ら考案している(画像提供:株式会社らいむ工房)

佐藤さんには将来の夢として温めている構想がある。社員食堂と飲食店を兼ねる店を開くことだ。

「作ったものをより多くの方に食べてもらいたいので、自社で生産した作物を調理して食べられる場を作りたいです。経営をもっと安定させてからですが、社員と地域の方に健康な食を提供できる場を作りたいですね」

らいむ工房

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