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普段、接点のない人達との対話・連携が農村DX実現のカギ

普段、接点のない人達との対話・連携が農村DX実現のカギ

人口減少が続く農山漁村において、住民が暮らし続けられる環境を整えると共に各地域の魅力を磨いていくためのサービス・仕組みを考えることは喫緊の課題です。しかし、すぐに課題を解決できる素晴らしいアイデアが思い浮かぶわけではありません。今回は、地域の皆さんに、業種・業界の壁を超えたさまざまなステークホルダーと対話・連携することを提案すると共に、そのようなきっかけを提供する事例について、ご紹介します。

地域課題の解決方法は地域自身が考える

日本の人口は2008年をピークに減少を続けていますが、とりわけ農山漁村においてその傾向が顕著です。過去40年の変化をみると、山間農業地域(※1)で約7割、中間農業地域(※2)で約2割の人口が減少しているので、そういった地域に住んでいる人は、その変化を目の当たりにしているのではないでしょうか。

すでに、移動手段や福祉サービスの提供が困難になった地域や、地域資源を維持・管理できない地域が出てきているように、今後も人口減少が続くことを見据えると、改めて、地域で暮らし続けると共に、魅力ある地域をつくっていくためのサービス・仕組みづくりに取り組むべき時期を迎えていると言えます。しかし、地域資源をはじめとする条件は地域ごとに異なり、住民の価値観やニーズが多様化する中で「全国共通、地域課題を解決するサービスはこれだ!」といった“正解”はありません。すなわち、地域自身が「地域にあるものは何か、足りないものは何か」「必要な仕組みは何か」「どのように運用していくか」について考え、生み出していかなければならないのです。

※1 山間農業地域:土地面積に占める林野面積が80%以上で耕地面積が10%未満の地域。
※2 中間農業地域:山間農業地域と比較的耕作条件の良い農業地域の間に位置する地域で、山間地域に準じて生活が不便な地域。

カギを握るのは、多様なステークホルダーとの対話と連携

とはいえ、自治体担当者が単独で新たなサービスを企画し、実行していくには限界があります。また、農業者・農業関連団体・農政担当者など、「いつもと同じメンバー」で新たな取り組みを話し合っても、課題解決につながる面白いアイデアが出て来づらいのが実態です。

そこで、ぜひ地域の皆さんに取り入れてほしいのは、業界・業種を超えたステークホルダーと対話し、連携しながら検討を進めることです。例えば京都府与謝野町では、福祉サービスを提供する事業者と農業者の連携によって、貨客混載の福祉バスが近隣の集荷ポイントから直売所へと農産物を運搬することで、個々の生産者の出荷に掛かる負担軽減を目指す取り組みが進んでいます。このように多様なステークホルダーと共に検討することで、新しいアイデアや時代に適したニーズ、利用者の視点、足りなかったリソースが得られ、新たな変化をもたらすことができるのです。

地域内外をつなぐアグベンチャーラボ

では、農業や農村を軸として、地域内外を含む多様なステークホルダーとの対話と連携を促す取り組みとして、どのような事例があるか見ていきましょう。

まず、課題を抱える農業者と技術を持つ地域内外の企業などをつなげ、イノベーションを起こす場を提供する事例として、一般社団法人AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)があります。農林中央金庫やJA全中、JA全農などのJAグループ全国組織8団体が、食・農・暮らしを総合的に事業展開するグループの強みを生かし、スタートアップ企業と共に農業・農村の社会課題を解決することを目的として立ち上げました。

同社は、2019年の設立以降、最新技術の動向紹介などのセミナー・イベントをはじめとするさまざまな活動を展開していますが、特に注力しているのは「JAアクセラレータープログラム」です。毎年100件を超える応募の中から選ばれた約10のスタートアップ企業が、全国のJAと共に実証実験などを行いながら新規サービスの展開を目指すもので、2022年には第4期をむかえ、これまで合計で33社を採択してきました。第1期採択企業「おてつたび」や第4期採択企業「サグリ」等、農業農村分野におけるスタートアップの躍進を支えています。

また、同プログラム以外にも、定期的に若手農業者とスタートアップ企業の意見交換会を開催しています。一連の取り組みを通じて、農業者の困り事とスタートアップ企業の持つ技術、そしてJAグループの持つネットワークをつなぎ、農業・農村の課題解決に貢献しています。

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JAアクセラレータープログラムの様子(アグベンチャーラボ提供)

地域内の対話を支援する農村DX協議会

地域内の連携を強化しながら新たな取り組みの検討を支援する取り組みとして、株式会社日本総合研究所では農村DX協議会を運営しています。同一地域の中でも、自治体・住民・民間企業・関連団体などのそれぞれが抱える課題、ニーズ、持っている資源について議論する機会が少ないことに着目し、ワークショップを通じた対話の機会を提供しています。実際に、ワークショップの参加者からは、「普段から話をしているように思っていたが、実は対話していないことに気が付いた。新しい発見があった」「具体的な取り組みが楽しみになった」などの声が寄せられています。

産業・分野の垣根を越えた取り組みは、近年注目されているデジタルトランスフォーメーション(DX)との相性が良いと考えられます。地域の皆さんには、こうした視点を持って新たなサービス・仕組みの検討を行い、魅力ある農村づくりに取り組んでいただきたいと思います。

書き手:日本総合研究所 福田彩乃
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター コンサルタント。
農業・農村のデジタルトランスフォーメーションに関するプロジェクトに複数従事すると共に、農村DX協議会のリーダーを務める。

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