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「人の死と向き合う仕事」から農業へ、自然の完璧なシステムから恵みを頂く

吉田 忠則

ライター:

連載企画:農業経営のヒント

「人の死と向き合う仕事」から農業へ、自然の完璧なシステムから恵みを頂く

エンバーマーという職業をご存じだろうか。亡くなった人の体が葬儀前に腐敗するのを薬品で防いだり、傷痕を修復したりする仕事を指す。柴山斐子(しばやま・あやこ)さんはそれを8年続けた後、農業の世界に入った。彼女にとってこの転身は、とても自然で必然的なものだった。

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8年で3500人を「送った」

柴山さんの農場「tamatowafarm(たまとわファーム)」は埼玉県本庄市にある。70アールの畑で、約50品目の野菜を育てている。育苗で植物性堆肥(たいひ)を使う以外は、肥料や農薬を使っていない。いわゆる自然栽培だ。

2023年4月に独立就農した。農業と接点ができたのは10年余り前にさかのぼるが、それに触れる前に、就農前の仕事を説明しておこう。

もともと関西のある市役所で9年間ほど働いていた。帰宅が深夜になるなど担当していた仕事があまりにハードで、体調を崩して休職していたとき、書店でふと目にとまったのが、エンバーマーに関する本だった。

農場の様子

農場で作業中の柴山斐子さん

映画「おくりびと」で広く知られるようになった納棺師は、化粧や着付けで亡くなった人の身だしなみを整えるのが主な仕事だ。

一方、エンバーマーはそれだけでなく、衛生的な施設で防腐処置を施したり、傷痕を修復したりする。生前に近い姿を保つことで、遺族ができるだけ安らかな気持ちで故人を送れるようにするためだ。

「世の中の役に立つ、とても大切な仕事だ」。そう直感した柴山さんは市役所をやめると、専門学校に入り、2年間かけて必要な技術を習得。埼玉県にある葬儀会社に就職し、エンバーマーとして歩み始めた。

それから8年。柴山さんによると「3500人を送った」という。「全身全霊を込めてやってきた。もう十分やりきった」。そう感じた柴山さんは、次の仕事を目指すことにした。そのとき頭に浮かんだのが農業だった。

「やりきった」

「エンバーマーの仕事はやりきった」

リフレッシュで始めた農業を本業に

もともとエンバーマーの仕事を始めたころから、埼玉県内のある農場にたまに手伝いに行っていた。

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