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伐採から搬出、畑での利用法まで! 竹の徹底活用術【DIY的半農生活Vol.21】

和田 義弥

ライター:

連載企画:DIY的半農生活

伐採から搬出、畑での利用法まで! 竹の徹底活用術【DIY的半農生活Vol.21】

茨城県筑波山のふもとでセルフビルドした住まいに暮らし、約5反(50アール)の田畑でコメや野菜を栽培するフリーライターの和田義弥(わだ・よしひろ)が、実践と経験をもとに教える自給自足的暮らしのノウハウ。今回は、竹のとっておき活用術。近年、放置されてやぶ化した竹林が社会問題になっているが、竹はその数々の特徴を生かして多用途に使える優良資材だ。トマトやキュウリを誘引する支柱に、防寒や防虫のためのトンネル、土留め、レイズドベッド、マルチなど、竹活用のアイデアを一挙紹介しよう。

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竹の特徴。中空で軽く、加工も容易。長さは20メートルにも

3月に入って間もなく、庭のスイセンが開花した。春先に真っ赤な花を咲かせるボケのつぼみも膨らんできている。冬の間、寒さにじっと耐えていたエンドウは、つるを伸ばし始めた。そろそろ支柱を立ててネットを張ってやらなくてはいけない。温床で育苗しているキャベツやブロッコリーも間もなく苗ができあがる。害虫の多いアブラナ科の野菜なので、畑に植え付けたらすぐに防虫ネットをかけてやろう。防寒や霜よけにもなる。エンドウのネットもキャベツの防虫トンネルも支柱には竹を使う。
竹は天然の超優良資材だ。筒状の構造で、成長すると長いものは20メートルにもなる。稈(かん、樹木でいう幹の部分)が中空なので木に比べるとずっと軽く、切ったり、割ったりするのも容易。しかも丈夫で、曲げても簡単には折れないしなやかさも併せ持つ。
そのまま地面に挿すだけで支柱や杭になり、横にして積み重ねればレイズドベッド(後述)やコンポストビン(堆肥<たいひ>箱)を作ることもできる。弓のようにしなる割り竹はトンネル支柱に最適。枝や葉は土の表面を覆うマルチになる。竹を焼いた竹炭は土壌改良にも。畑の資材としていろいろな用途に使えるのだ。

支柱_MG_5138

竹の支柱。自然素材は菜園の雰囲気作りにも◎

これまでに紹介した活用法は、こちらで確認してほしい。
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竹の伐採方法と運搬

竹を利用するには、まず竹林から切り出して、畑に運んでこなくてはいけない。
竹を切るには、専用の道具が必要で、切り方にもコツがあるので紹介しよう。

細い竹の切り方

直径2~5センチほどの細い竹であればのこぎりで簡単に切り出せる。ただし、竹は木に比べて繊維が硬いため、剪定(せんてい)用や木工用ののこぎりでは、すぐに目が詰まったり、刃が欠けたりしてスムーズに切れない。刃が丈夫で薄く、目が細かい竹用ののこぎりを使うこと。

のこぎり_MG_2664

上は剪定用のこぎり、下は目が細かい竹挽(たけひき)のこぎり

のこぎりで竹を切るときは、刃を株元に水平にあてて、引くときに力を込める。その際、片方の手で竹を持って、刃を入れている反対方向に稈を押してやると、切り口が開いてのこぎりを引きやすい。

細い竹切る_MG_2540

節のすぐ下で切ると、残した株の稈に雨がたまり竹が腐るので枯れやすい

細い竹はなたでも切れる。よく研がれた切れ味のいいなたを株元に斜めに振り下ろしてやれば、スパンと一発で切れる。ただし、空振りすると足をけがする恐れがあるので、立ち位置をよく考え、なたは斜めにまっすぐ振り下ろすこと。弧を描くように振ると空振りしたとき足に向かってくる。なたで伐採した切り口は鋭利な状態で残るので、踏まないように気を付けること。なるべく早く腐らせるために、切り株の上からなたを入れて割っておくとよい。

なたで切る_MG_2548

なたで切るときは節を避けて斜めに振り下ろす

枝を払うときは、竹の先端側から枝のつけ根をなたの背でたたいてやると簡単に折れる。ただし、この方法は竹の皮が枝と一緒にはがれやすいので、丁寧に枝を落としたいときは、枝のつけ根をのこぎりで切る。

枝落とし_MG_2563

切った竹は、その場で枝を処理して持ち帰る。枝はなたの背でたたいてやると簡単に折れる

太い竹の切り方

稈の直径が10センチ以上ある太い竹を切るときはチェーンソーが早い。のこぎりと同じように竹専用の刃をつけて使う。
成長したモウソウチクやマダケは稈の長さが15~20メートルあるので、切るときは倒す方向を考えて切らなくてはいけない。斜面の場合は必ず山側に倒す。平地の場合は、竹が密集した場所を避け、搬出しやすいように倒せばよい。生えている竹の傾きや曲がりも考えて、危険のない方向に倒すこと。

切り方は、樹木の伐採と同じように、倒したい方向に稈の直径の1/4の深さで斜めの切り込み(受け口)を作り、反対側から水平な切り込み(追い口)を入れて、最後は手で押し倒す。受け口と追い口の位置関係や深さはイラストを参照。

伐採方法

受け口_反転

倒したい方向に受け口を刻む

追い口_MG_2506

受け口の反対側から追い口を刻む。受け口と追い口の間に稈の直径の1/10程度を切らずに残す。この残した部分(つる)は伐採方向をコントロールする役目がある

押し倒す_MG_2513

最後は手で押し倒す

竹が傾いていると、狙った方向に倒れないことがある。そういうときは、切る竹と倒したい方向にある竹や樹木にロープをかけてピンと張り、テンションをかけておくとよい。
竹が密集して倒す場所がないときは、だるま落としという方法もある。腰の高さくらいで稈を斜めにスパッと切り、まっすぐ下に竹を落とす切り方だ。鋭利な切り口が落下してくるので、足の位置に注意すること。また、落ちた竹がどの方向に倒れるかわからないので危険性も高い。どうしようもないとき以外は、やってはいけない禁じ手である。

だるま落とし_MG_2533

稈を斜めに切るだるま落とし。切った竹はまっすぐ下に落ちる。落ちた竹はまた同じようにして斜めに切り、玩具の「だるま落とし」の要領で竹を短くしていく

竹の運搬

切り出した竹は、現場で必要な長さに切って軽トラで運び出す。軽トラの積載制限は、長さ、幅ともに車体の1.2倍まで(前後左右それぞれ0.1倍ずつ)、高さは地面から2.5メートルまでなので、これを守って積み込む必要がある。
現行の軽トラの全長は車種によらず3.395メートル、一般的な荷台の長さは約2メートル、運転席部分の高さは約1.8メートルなので、運転席の屋根と荷台後部に斜めに載せると計算上約4.4メートルまでの竹を積載できる。
大量の竹を運搬する場合、一本一本ばらばらだと安定しないので、数本まとめて束ねたものをロープで荷台に縛りつけるとよい。

軽トラ積載_MG_2721

軽トラに結ぶロープは竹と直角になるようにする。トラッカーズヒッチ(別名・南京結び)でロープに強いテンションをかけ、確実に固定する

軽トラ結び方_MG_2723

竹が滑り落ちないように、後方からもテンションをかけて結ぶ

支柱や土留め、マルチなど畑での竹の利用法

「タケ・ササ総図典」(内村悦三/創森社)によると、日本では1900年代の初めに400種近い竹やササが発見されているそうだが、そのうち有用種とされるのは竹類で10種ほど。なかでも竹林の大部分を占めるモウソウチク、マダケ、ハチクが日本三大有用竹と言われている。わが家の周りにはこの3種に加え、クロチクやメダケも生えている。竹は品種によって、太さや長さ、強度、しなり、稈の肉厚などが異なるので、畑の資材として利用する場合も用途に適した竹を使うとよい。

メダケ_MG_2393

メダケ。別名シノダケ。直径2~3センチ、長さは4~6メートル。粘り(外からの力に対する耐久性)があり、曲げやすい

トマトやエンドウの支柱

野菜の支柱には、直径1~3センチほどのメダケやクロチクが使いやすい。長さはエンドウやトマト、キュウリなどの誘引には2メートル程度、ナスやピーマンなら1.5メートルが目安だ。地面に20~30センチほど挿し込むので、その分を加味して切り出すこと。
トマトやキュウリでは枝を切り落とすと扱いやすいが、エンドウの支柱にする場合は枝をつけたままにすることで、枝がネットの代わりになり、手間が省ける。
支柱の上側は節を残してそのすぐ上で切ると稈に水がたまりにくく長もちする。下側は地面に挿しやすいようになたで斜めに切る。

エンドウ支柱_MG_2451

エンドウの支柱には枝をつけたまま使う。張り出した枝がネットの代わりになり、つるがからみつく

尖らせた先端_MG_2668

先端をとがらせた竹は、さまざまな場面で杭として使うこともできる

トンネル支柱

トンネル支柱には直径10センチ前後のマダケを6つ割り、または8つ割りにした幅2~3センチの割り竹をしならせて使う。マダケは弾力性と屈曲性に優れ、しなりがいいのだ。

竹割り器_MG_1892

竹割り器を使うと簡単に等分できる

なたで割る_MG_2580

なたで割るときは両刃のなたを使い、背を木づちやゴムハンマーでたたきながら割っていく

割り竹の長さは市販のトンネル支柱に合わせる。たとえば、幅1メートル前後の畝に高さ約85センチでトンネルをかけるなら、支柱の長さは約2.4メートル必要だ。
割った竹は内側の節をなたの背や金づちでたたいて落とし、側面のささくれと外側の節をナイフやサンドペーパーで削って滑らかにする。ささくれや節を落としておくことで、防虫ネットやビニールトンネルをかぶせたときに引っ掛かるなどして破れるのを防げる。
トンネルを設置するときは、支柱がまっすぐ1列になるように畝に沿ってひもを張り、竹の両端には埋める深さをマーキングしておくと、列と高さがそろった美しいトンネルになる。

節落とす_MG_2594

なたの背でたたいて節を落とす

グラインダー_MG_2608

電動工具のディスクグラインダーがあると作業が早い。切削には#120の研磨ディスクを使う

先端をのこぎりでカット_MG_2625

両端はのこぎりで切るかディスクグラインダーで削ってとがらせておくと、地面に挿しやすい

トンネル支柱の材料は、マダケが手に入らなければ、ハチクでもよい。モウソウチクは稈が肉厚のためやや使いにくい。
マダケとハチクはよく似ているが、ハチクはマダケに比べて稈が全体的に白っぽく、枝の第1節間(竹の根元に最も近い節とその次の節の間)を切ると空洞がないのが特徴だ。マダケには空洞がある。モウソウチクは、一見して稈が太いのでわかりやすい。また、マダケやハチクの節は輪が2本あるのに対し、モウソウチクは1本である。

ウソウチク節_MG_1926

モウソウチク。節の輪は1本しかない

マダケ節_差し替え

マダケ。節の輪は2本ある

ラベル

割り竹は品種名、播種(はしゅ)日などをメモして畝に挿しておくラベルにもなる。表皮をサンドペーパーやディスクグラインダーで削り、15~20センチほどの長さに切って先端をとがらせればOK。

ラベル_MG_2407

割り竹のラベル。書いたメモは削れば消えるので、何度でも使いまわせる

土入れ

直径10センチほどのマダケやハチクで作る土入れ。園芸用シャベルのように使うことができる。一方に節を残して20~30センチの長さに切り、節のないほうを斜めに切り落とせばできあがり。

土入れ_MG_2417

土入れ使用_MG_2649

土入れ。ナイフやサンドペーパーで削って口の形を整えてやると使いやすい

土留め、レイズドベッド

太くて丈夫なモウソウチクは、横にして必要な高さに積み上げれば、土留めやレイズドベッドになる。
土留めは土が流れたり、斜面が崩れたりするのを防ぐために設ける壁状のもので、レイズドベッドは栽培スペースを土留めで囲み、土を周囲より高く盛った一種の高畝である。

斜面に土留めを設置する場合、まず斜面の裾をシャベルで垂直に切り、その下の地面をよく踏み固めてから平らに削る。そこに直径10センチ以上の竹を横にして置き、手前に先端をとがらせた直径5~10センチほどの竹を1メートルほどの間隔で打ち込んで支えの杭とする。斜面側からの土圧に耐えられればよい。杭は設置する土留めの高さより5センチほど高くし、地面には30センチ以上埋める。あとは、必要な高さまで竹を積み上げていけばよい。土留めの隙間(すきま)や周りに根張りのいい宿根草を植えれば、根が張って土の支えになる。

レイズドベッドは、栽培スペースを囲うように土留めを四角く組んで、竹を積み上げながら、内側に土を入れていけばOKだ。

コンポスト_MG_2483

竹を積み上げれば、それだけで土留めやレイズドベッドになる

畝の横に竹_MG_2464

高く盛り上げた畝の両側に太い竹を横にして置くだけでも、土が崩れるのを防げる

土留めやレイズドベッドは、竹を横にして積み上げる方法以外にも、短く切った割り竹を縦にして隙間なく並べる方法や、適当な間隔に打った杭に長い割り竹を前後交互に絡ませて壁とする柵(しがらみ)というやり方もある。

レイズドベッド_MG_2432

割り竹で栽培スペースを囲んだレイズドベッド

レイズドベッド裏表_MG_2437

隙間ができないように竹は裏表交互に並べていく

柵_MG_2703

柵(しがらみ)による土留め。斜面の畑などで土が崩れるのを防ぐ

枝葉の利用

竹の枝や葉も利用できる。竹林に積もっている竹の葉は、集めて畝や畑の通路に敷けばマルチとして雑草の抑制、土壌の乾燥防止、保温、保湿、微生物の増殖などさまざまな効果が期待できる。いずれ分解されるので、土づくりにも役立つ。
竹を利用する際に落とした葉つきの枝も畝や通路に積み上げておけばマルチになるが、そのままだとかさばるので細かく切ったほうが敷きやすい。硬いので人が歩く通路に敷くのが向いている。葉がついた枝は畝や作物の周りに挿しておくことで、冬は寒さや風よけに、夏は日よけになる。

マルチ_MG_2714

ソラマメの畝を竹の葉でマルチング。寒い時期の地温確保や霜柱を防ぐのに役立つ

こんな風にしてわが家の畑では竹を幅広く活用している。
本来竹を切り出すのは、竹の生育が鈍り、水分が少なくなる秋から冬が適しているのだが、これからじゃんじゃん生えてくる今年の竹に備えて竹林を整備しておかなくてはいけない。それで今、慌てて竹を切り出している。切った竹はそのまま竹林に放置してしまうと邪魔になるので、なるべく搬出して、利用していきたいのだ。
繁殖力が強く、放っておくとやぶ化しやすいためやっかいものとされる竹だが、その特徴を生かせば多用途に使える宝のような資材なのだ。しかもタダです!

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