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【完全ガイド】稲作とは? 起源・種類・栽培方法から最新技術まで徹底解説

【完全ガイド】稲作とは? 起源・種類・栽培方法から最新技術まで徹底解説

日本のコメ産業が大きな転換期を迎えている今、稲作について考える機会が増えてきたのではないでしょうか。そこで今回は稲作の歴史や文化から、現代の最新技術や持続可能な栽培方法、品種改良、環境への配慮、気候変動への対策まで、稲作の全体像と未来を徹底解説していきます。稲作の基礎から最新動向まで知りたい人は必見です。

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稲作の基本

稲作の基本

稲作とは水田で稲を栽培し、主に米を収穫する農業形態のことです。稲は日本の食文化を支える中心的な作物の一つで、「稲作=水稲」と思われがちですが、「稲作」は田んぼや畑での稲栽培全般を指します。その稲作には大きく分けて3つの栽培方法があります。

稲作の主な栽培方法
・水稲(すいとう)栽培
・陸稲(おかぼ、りくとう)栽培
・水耕稲栽培

水稲栽培

水稲とは田んぼに水を張って栽培する稲のことを指し、日本で作られるお米のほとんどはこの水稲栽培によって栽培されています。田んぼに水を張ることで、雑草の発生を抑えられると同時に、乾燥や害虫の影響を受けにくくなり、水資源が豊富な日本では安定的に栽培できる技術として広く普及しています。

陸稲栽培>主に乾田直播(ちょくはん)栽培

陸稲とは水を張らずに乾いた圃場(ほじょう)で栽培する稲のことを指します。水資源の供給網が整備されていない地域や、二毛作、三毛作(多毛作)を行っているエリアなどでは、陸稲栽培によって米を生産しています。

水耕稲栽培

植物工場のような水耕栽培施設で稲を栽培します。近年では、気候変動による異常気象により、水耕栽培による農産物の生産が注目されていますが、稲作においても水耕栽培による生産が試験的に行われています。

稲作には年間を通じてさまざまな作業があります。水稲栽培の一般的な流れは以下の通りです。

基本的な作業

季節 主な作業 ポイント
冬(1~2月) ・冬の田起こし 稲わらをすき込み、土壌改良・肥沃度向上。
春(3~5月) ・土づくり(1〜4月)

・もみすり・播種・育苗(3〜5月)

・田起こし(春:3〜5月)

└ あぜ塗り・耕起・施肥など代かき準備

・代かき(田植え数日前)

・田植え(4〜6月)

稲作スタート期。苗づくり・圃場準備を丁寧に。
夏(6~8月) ・草刈り(田植え前後〜収穫前)

・水管理(田植え前後〜収穫前)

生育期の管理が収量に直結。
秋(8~10月) ・収穫(8〜10月)

・もみすり(収穫直後)

天候に合わせた収穫のタイミングが重要。
晩秋~冬

(10~1月)

・田起こし(収穫後〜翌1月頃) 稲わらの腐熟促進で次作に備える。

 

これらの作業は地域や生産者によって時期や方法が異なります。例えば、代かきを例に上げると、代かきを1工程で仕上げる場合と、「荒代かき」と「植え代かき」のように2工程で仕上げる場合などさまざまです。

【補足】代かきについて
代かきは田んぼに水を入れ、土を砕いて均平にしていく作業で、稲をしっかりと育てるため、田植えの前に行う重要な準備です。代かきをすることで、圃場の水漏れ(地下への浸透)を防いだり苗の活着を良くする効果がある他、雑草の発生を抑えたり肥料を均一に混ぜ込むことができるなどの効果もあります。

代かき機

伝統的な農具

日本の稲作は、時代とともに農具も進化してきました。

鍬(くわ)や犂(すき)による耕作

稲作が日本に入ってきたとされる縄文時代初期は、主に木製の農具が使用されていましたが、5~6世紀頃になると鉄製の刃を持つ鍬や犂が使われるようになりました。弥生から中世にかけて農具は改良され、耕作技術も発展していきました。

鍬

代かきの道具と伝統的技術

田植え前の代かきでは、牛や馬を使った馬鍬(まぐわ)などが使われていました。代かきは水稲栽培が普及した弥生時代頃から、田面を平らに整える作業として行われてきたとされています。
稲作が日本に伝来した当初は、もみを直接田んぼにまく「直まき方式」が主流で、苗を圃場に植え付ける「移植型」が普及したのは西暦700年代の奈良時代頃であると言われています。

馬鍬

脱穀の道具の発展

脱穀はもみを穂から取り出す作業で、その道具は「竹製扱(こ)き箸」→「千歯扱き(せんばこき)」→「足踏み脱穀機」と進化していきました。
千歯扱きは元禄年間に発明され、稲穂を歯の間に通し、引き抜いてもみを落とす仕組みが採用されたことで作業能率が大きく向上しました。その後に登場する足踏み脱穀機は、明治時代末期に発明され、大正時代から昭和中期まで全国的に普及しました。足で踏むことで回転する円筒形の胴部に稲穂を当てて籾をこぎ落とす脱穀機です。現代の自脱型コンバインに搭載されている脱穀部と同じような形状となっていることから、当時の技術が今に受け継がれていることがわかります。

また、田植え補助具や除草具、脱穀前後の道具なども多様で、地域や用途に応じた工夫が行われてきました。

稲作の栽培技術

稲作の栽培技術_田んぼ

古くから続く稲作には、長い年月によって蓄積されてきた人間の英知が詰め込まれています。1940年代頃までは、農作業の全般において人力や牛馬を駆使した作業が一般的でしたが、高度経済成長の時代背景もあり、1950年代頃からは農業分野でも機械化が加速していきます。

田植えや稲刈りの機械化

田植え機

田植え作業といえば乗用型の田植機を思い浮かべますが、機械化が本格的に始まったのは1950年代頃。当時は歩行型の1条植え田植機が開発され、手植えに代わる革新的な技術として注目されました。
今では乗用型の田植機が一般的に使われており、4条植えから最大10条植えの田植機が販売されています。

コンバイン

稲の刈り取り作業といえば、コンバインを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。
収穫が機械化される前は、手刈りで稲を収穫し、足踏み式の脱穀機を駆使して稲穂からもみを取っていました。
その後機械化が進み、自走式稲刈機(バインダー)から乗用型コンバインへと進化を遂げたことで、刈り取りから脱穀、選別までを1台で完結できるようになりました。
今では、収穫中のお米のタンパク含有率や水分量、収量などを高精度に測定できる「食味・収量センサー」を搭載したコンバインが開発され、コンバインの性能が向上しています。

育苗方法の変化

田植機の進化とともに、育苗も変化していきました。機械化が進む前は、「根洗い苗」や「帯苗」と呼ばれる方法で苗を育てていたそうです。

その後、田植機が主流になってからは、「マット苗」と呼ばれるブロック状に切断して移植できる苗へと変化していきました。
マット苗は、育苗箱に土を入れ、その上に種もみをまいて育てる苗のことで、根洗い苗や帯苗よりもコストを削減でき、省力化もできる育苗方法として広く浸透しています。

マット苗

農業センサーの登場と進化

前述の通り、日本の稲作は水稲栽培が主流となっていますが、この水稲栽培では水管理が重要な仕事の一つとなっています。水管理の作業時間は総労働時間の約3割を占めていると言われており、作業の省力化・効率化が求められています。

水管理にかかる負担を少しでも抑えるために、センサーを活用した水管理システムが普及してきています。具体的には、水位や水温などの情報を遠隔で確認することができる管理システムや、圃場から離れていても給水操作ができる製品などが、現場で活躍しています。

【センサーを活用した水管理システム 事例】(企業名五十音順)
○IIJ水管理プラットフォーム for 水田

日本のインターネットを切り開いたIIJが、農業の課題解決に新提案。「水田水管理IoTシステム」を導入しやすいパックで提供

○KSIS+WATARAS

労働時間と用水量を大幅に削減―水田の灌排水を遠隔・自動で管理するクボタケミックスの『WATARAS(ワタラス)』

○e-kakashi

栽培管理システムといえばe-kakashi

○PaddyWatch

水管理システム『パディウォッチ』で稲作を省力化。 米の安定供給に『神明』が打つ一手とは

○MIHARAS

匠の眼 センサー編 24時間365日見つめて『解』を出す。

○farmo

クラウド型水管理システム『水田farmo』で、お金をかけず作業時間を大幅削減!

ほくつう

水稲の水管理を自動化!~スマート農業で実現する省力化と高品質生産~

農業用ドローンの登場と進化

農業用ドローン

「ドローン」というフレーズが日常生活にすっかりとなじむようになりましたが、農業の領域においてもドローンは多岐にわたって活躍しています。

【農業の現場で使用されている用途】
・農薬、肥料散布、受粉
・直播
・センシング
・獣害対策(監視・威嚇など)
・運搬(実証段階)

2017年頃よりドローンが農業分野でも導入されるようになり、上空から地表や作物の状態を観測するリモートセンシングという技術が普及しています。また、2019年7月には農林水産省が「農薬散布にドローンを利用可能」としたことで、ドローンによる農薬散布が急速に普及していきました。
当初はドローン散布に対応する農薬が少なかったものの、年々、登録農薬が増加。幅広い作物や用途でドローンによる農薬散布ができるようになってきています。
最近では、ドローンの弱点でもある連続飛行時間の短さや、積載可能重量の制約を打破すべく、送電ケーブルと送液ホースを接続した有線型の農薬散布ドローンの開発が進んでいるようです。これにより、従来の無線型では1回の飛行時間が20分だったところが、送電ケーブルを接続することで飛行時間を80分まで伸ばすことが可能になったといいます。
農業用ドローンの技術は日進月歩で進化を続けており、農業現場での活用の幅がさらに広がっていきそうです。

注目される直播栽培

水稲栽培においては田植機の進化に伴い、苗の移植作業にかかる時間が大幅に削減されました。一方で、育苗や田植え時の苗継ぎには、依然として多くの時間と手間が必要です。そこで、移植栽培に代わる省力化の取り組みとして注目されているのが直播栽培です。直播栽培には、大きく分けて3つの方法があります。

【稲作の直播栽培】
○湛⽔(たんすい)直播栽培
>圃場に水を張った状態で播種する栽培技術
>田植え作業が不要
○乾田直播栽培
>圃場に水を張らない状態で播種し、⼀定期間後に⽔を張る栽培技術
>田植え、代かき作業が不要
○節水型乾田直播栽培
>圃場に水を張らない状態で播種し、⽔を張らずに⽔の散布のみで栽培する技術
>田植え、代かき作業が不要で、水管理を省力化

農林水産省によると、直播栽培による作付面積は2023年産では約3.9万ヘクタールの実績となっています(全⽔稲の作付⾯積約134.4万ヘクタールの約2.9%)。
そのうち、乾田直播栽培による作付面積は約2万ヘクタールとなっており、直播栽培の中でも年々増加傾向にあります。

直播栽培については、収量の安定性や初期コストなどの観点で、導入にあたって幾つかのハードルがあります。しかし、1経営体あたりの耕作面積が増え、人手不足が深刻化している昨今の状況を鑑みれば、今後も直播栽培が増えていくと予想されます。

稲作の有機栽培

「みどりの食料システム戦略」では、有機農業の取り組み面積を2050年までに耕地面積の25%(100万ヘクタール)に拡大することが目標となっています。その実現のためには、耕地面積の多い稲作において有機栽培への取り組みが不可欠です。しかし、2021年度の国内米生産量に占める有機JAS米の割合は約0.12%と非常に少ない現状があります。
その理由として、栽培の難しさや生産コストの高さ、そして有機農業に対する国内の認知度・理解度の低さが挙げられています。

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最新の稲作技術

最新の稲作技術

機械化から自動化、そして無人化へ

田植機やコンバイン、そしてトラクターなどの農業機械はICT技術などの普及により、手動による操作から無人化へとフェーズが変わりつつあります。
株式会社クボタでは、2020年10月に業界で初となる自動運転田植機(無人仕様)を発売し、注目を集めました。これは、監視者が圃場周辺にいる有人監視下の状態で、オペレーターが乗車しなくても自動で田植え作業を行うという、まさに未来型の田植機です。

他にも、トラクターやコンバインといった農業の主要機種において、自動化や無人化の技術を搭載した最新モデルがリリースされており、農業機械は今まさに変革期に突入しています。

【国内メーカーが発売しているロボット農機の例】
○ロボットトラクター
ヤンマーアグリ株式会社 SMARTPILOT(スマートパイロット) YT488R、YT498R、YT4104R、YT5114R

○ロボット田植機
株式会社クボタ Agri Robo(アグリロボ)NW10SA

○ロボットコンバイン
株式会社クボタ Agri Robo(アグリロボ)DRH1200A‑A

品種改良の進展

品種改良の進展

稲の品種改良は、19世紀末に日本政府が開設した農事試験場(現:農業試験場)で始まりました。当初は、収量性や耐病性、耐冷性などの向上を目指して品種改良が進められてきましたが、時代の変化とともに「おいしさ」を重視する傾向へと変化していったとされています。

選抜交配

選抜交配とは、望ましい性質を持つ稲の品種を生み出すために行われる育種方法です。異なる品種を人工的に交配し、生まれてきたたくさんの子孫の中から特に優れたものを選んでいく作業を繰り返します。
人の手で花粉とめしべをかけ合わせて種を作る「交配」と、その種から育った稲の中から目的の特性を持つ個体を選ぶ「選抜」を繰り返すことで、新品種が開発されていくのです。
日本の「コシヒカリ」や「ひとめぼれ」も、この交配選抜から生まれました。

ゲノム編集

ゲノム編集とは、酵素などを使って生物のDNA(ゲノム)上の特定の場所を狙って切断し、その遺伝子を改変するバイオ技術です。わかりやすく言えば、生き物が持つ設計図(DNA)をハサミで切ったり、修正したりして、新しい特性を与えるイメージです。

この技術によって、病害に強い稲や環境変化に適応しやすい稲を、効率的に育てることができるようになっています。

DNAマーカー選抜

DNAマーカー選抜は、DNA配列の違いを目印(DNAマーカー)として利用し、特定の優れた遺伝子を持つ個体を早い段階で選び出す育種技術です。
食味や耐病性、耐倒伏性(倒れにくさ)などの特徴は個体ごとに異なり、その違いはDNA配列にも表れます。その違いのある部分をDNAマーカーとして選抜に利用することで、育種期間を大幅に短縮でき、効率的な品種改良が可能になるのです。

気候変動による影響

気候変動による影響

近年の気候変動やそれに伴う異常気象によって、稲作の栽培環境は年々変化しています。
日本有数の産地である新潟県では、2023年産米(うるち米)の1等米(※)比率が約15%となり、過去最低水準を記録しました。この大きな要因となったのが高温と水不足です。
異常な高温や慢性的な水不足により、米粒が白く濁る白未熟粒が著しく増加したり、カメムシ類の大量発生によって、米粒の吸汁被害が発生し、等級を著しく低下させたと言われています。
このような気候変動に対応するために、高温耐性や耐病性の高い品種の開発が進められており、各地で品種の切り替えが進んでいる他、カメムシ類の新たな防除体系が確立され、害虫対策も進められています。

※ 1等米:農林水産省が定める米の等級検査で、もっとも品質が高いと評価された米のことです。具体的には、被害粒や未熟粒などを除いた、使える米粒の割合を示す「整粒歩合」が70%以上であるものを指します。

稲作の未来と展望

稲作の未来と展望

日本は稲作とともに社会が形成されていったと言っても過言ではないほど、私たちの暮らしは稲作と密接に関わってきました。
これからの時代は、伝統的な技術を継承しつつ、最新のICTや品種改良の融合によって、さらなる効率化と品質向上を図ることが求められています。
同時に、環境への負荷を減らし、気候変動に対応した新たな取り組みによって、この大きな変革期を乗り越えていく必要があります。
どの時代でも稲作は変化に対応し続け、日本の礎となってきました。だからこそ、稲作を次の世代につないでいくことは、日本の“暮らし”そのものを未来へ継承することにつながるのです。

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