飼育員の経験値で左右する牛の健康チェック。病気検知の遅れが経済的損失に

前川農場は三重県津市にて1965年に創業、2007年株式会社として設立しました。津市と松阪市の2拠点で高級ブランド牛「松阪牛」の肥育に取り組んできました。「安心と安全の安定供給」を企業理念に掲げて年々頭数を増やし、現在1800頭を従業員13名で飼育しています。
「胃診電信」導入前、牛の健康観察は主に飼育員の目視に頼っていました。そのため、ベテランと経験の浅い飼育員の間で健康チェックの質に差が生まれ、牧場全体として安定した水準で牛を観察することが難しい状況でした。
「ベテランは、牛の目の開き具合やまぶたの落ち込み、耳の垂れ具合など、とても些細な変化で不調を察知できます。ですが、この感覚は長年の経験と勘によるものが大きく、若手の飼育員にとって一朝一夕で身につくものではありません。具体的には、風邪を引いていても食欲が落ちない牛などの異変を見抜くのは至難の業で、病気の兆候を見逃す機会が多くありました」
牛の病気の発見が遅れると、1週間から長い場合で2〜3週間も食欲が落ち、その間の成長が停滞してしまいます。1年に約20頭が重症化。大きな経済的損失につながりかねません。また、体重管理は2〜3カ月ごとに体重測定し、成長の遅れをデータで記録していました。
「データは紙やエクセルで都度記録していました。しかし、飼育員全員が出勤前に過去の履歴をすべて確認することは難しく、かつ個体ごとの健康履歴を共有しづらい状況でもあり、全員がスムーズに確認できるベストな方法を模索していました」
1800頭もの牛を限られた数の飼育員で的確に管理することが、前川農場の課題でした。
複数の選択肢からたどり着いた内蔵式システム。「胃診電信」導入の決め手は実績と信頼性

以降、前川さんはスマート畜産関連の情報をチェックし、根本的な課題を解決できるシステムを探します。そのなかで牛の体温をセンサーで検知するシステムを知り、一つひとつ検討し、試用しました。
前川さんは、まず首輪型のセンサーを試しました。バンドを牛の成長に合わせて定期的に調整する必要があり、1800頭すべてに適用するのは現実的ではありませんでした。さらにバンドの調整が不十分だった場合、きついと牛の首が締めつけられたり、逆に緩やかだと何かに引っかかって事故につながる危険性があったりと、24時間安全に使用できるか不安があったそうです。また、牛の首の大きさには個体差があるため、2〜3人がかりで1頭1頭に合わせて調整しなければならず、人材も労力もかかったといいます。そのなかで「SF映画のように、体内にセンサーを入れて健康状態がわかるシステムがあれば便利だろうな」と思っていたところ、牛の胃袋にカプセルを飲ませるタイプのシステム「胃診電信」と出会います。
「鹿児島で5000頭を肥育する大規模農場で、胃診電信を活用していることを知りました。農場管理獣医師のキャリアを持つ父が使い勝手やデータ共有方法などについて大規模農場の代表の方から話を聞き、胃診電信の良さがわかり、導入を決めました」加えて、一度牛に飲ませてしまえばその後の調整が不要な内蔵式カプセルという点もまた、前川さんにとっては魅力的でした。
2023年10月、まず9〜10カ月齢の若い牛400頭から「胃診電信」での健康管理をスタートします。
3日前から病気の兆候を検知!「胃診電信」の驚くべき早期発見能力

導入後、前川さんが最も驚いたのは病気の予測能力でした。
「当初、牛が元気に餌を食べているのにシステムからアラートが出続けていたんです。本当に大丈夫かなと、正直戸惑いました」
その牛をしばらく観察していると、3日後には食欲が落ち、実際に病気にかかっていることが発覚します。「胃診電信」は、牛が行動に異常を示す3日も前に、体温の変化から病気の兆候を検知していたということになります。
「早期に的確に異変を察知してくれるおかげで、病気が重症化する前に適切な対処ができるようになりました 」
「胃診電信」導入により、飼育員の経験差で発生するヒューマンエラーが少なくなり、年間約20頭の牛を重症化から救うことができるようになりました 。早期発見・早期治療によって牛の負担を最小限に抑えられ、回復も早くなったとのこと。さらに前川さんは、体温グラフのパターンから、牛の健康状態を詳細に分析できるようになったと話します。
「たとえば、体温が41℃から38℃に下がった後にすぐに41℃に戻るパターンは、水を飲んで一時的に体温が下がった後に、再び病気によって体温が上昇するサインだとわかりました 」
グラフの動きから、牛の水分摂取量や体調の変化まで把握できるようになったことは、想定を上回る発見だったそうです。
現場の声をもとにアップデート、日々使いやすい仕様に進化

しかしながら、導入当初は従業員全員が使いこなせるのか不安だったと話します。
「導入直後のセンサーを牛に飲みこませる作業は、やったことがないため要領がわからずかなり苦労しました。やり方を誤ると食道を傷つける危険性があり、慎重さを要しました。セントラル情報サービスの木村さんが農場に足を運んで丁寧に指導してくれたのは、とても心強かったですね」
また、前川さんが遠方出張の際に落雷でシステムが止まったときは、すぐに前川さんに確認の連絡が入ったことで飼育員に適切な指示ができたのだそうです。さらに、前川農場からのフィードバックをもとに、システムがすぐに改良される点も使いやすいと太鼓判を押します。
「以前は紙にチェックしていた健康記録を、エクセルデータと連携できるようにしてほしいと要望したところ、すぐに対応してくれました」
現場の声がシステムに反映され、使いやすさが向上。セントラル情報サービスの木村さんは「一緒にシステムを育てていただいている」と目を細めます。
「胃診電信」は、牛の健康管理をテクノロジーの力で伴走する畜産農家の良きパートナーに

前川農場のかつての牛の健康観察は、ベテラン飼育員の経験と勘に頼っていました。『胃診電信』導入後、データという明確な指標で、飼育員全員が同じ基準で牛の健康状態を把握できるようになりました。タブレットやスマートフォンでいつでもどこでも健康記録を確認できるようになり、作業効率も大幅に向上しました 。
セントラル情報サービスの『胃診電信』は、牛の健康管理をテクノロジーの力で伴走し、省力化と収益化向上に貢献。畜産農家の良き相棒として働き、業界を後押しするツールになることでしょう。
【お問い合わせ】
株式会社セントラル情報サービス
〒530-0003 大阪市北区堂島2丁目4番27号 JRE堂島タワー9階
TEL : 06-6538-2532






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