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自分の商品の「よさ」「改善ポイント」は意外なところで見つけられる! マーケティングのプロが教える今すぐできるリサーチ方法

自分の商品の「よさ」「改善ポイント」は意外なところで見つけられる! マーケティングのプロが教える今すぐできるリサーチ方法

自分の商品のよさがわからなくなってしまったとき、どのように動けばいいでしょうか。農業専門のデザイン会社・株式会社はりまぜデザイン代表の角田誠(つのだまこと)さんは、「消費者にアンケートをとるのは悪手」だといいます。マーケティングのプロでもある角田さんの情報収集と差別化のやり方について、角田さんが執筆した書籍『農家のための売る技術 100 農業特化「ブランディング×マーケティング×デザイン」のコツ』(かんき出版)より抜粋して紹介します。

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アンケートの回答は信頼できない?

アンケートというのは、すごく非日常です。たとえば、あなたのトマトを試食してもらい「このトマトは美味しいですか?」といった内容に答えてもらうとします。この場合、あなたからトマトを渡しています。これは相手にとってはあなたから与えられたものですから、報酬と同じです。もしくはアンケートに答えれば金銭やプレゼントがもらえる、ということもあります。これはまさに報酬です。
では実際にあなたのトマトを消費者が食べる場合はというと、全くの逆です。日常では消費者はお金を払ってあなたのトマトを買い、食べます。「トマトをもらって意見を言う」場合と、「お金を払ってトマトを買って意見を言う」場合では、感じ方がまったく異なるのです。
報酬をもらって意見を言う場合は、「もらったのだから少しでも役に立つ意見を言おう」と身構えてしまいます。これは心理学で言う「返報性の原理」です。他人から何かをしてもらったときに、「お返しをしなければならない」と感じる心理的傾向のことです。こんな心理状態の意見を鵜吞みにしてしまったら、本当の消費者の行動や心理を間違ったまま理解してしまうことになります。

アンケートの回答と実際の行動は違うかも

他にも社会心理学でよく扱われるテーマがあります。「考えと行動は違う」というものです。たとえば「あなたは環境にやさしく健康的な食事をしたいですか?」というようなアンケートです。この質問をされて「いいえ」と答える人は少ないと思います。高い数値で「はい」が集まるでしょう。ただし、その数値を得たことでオーガニックに踏み切るのはとても怖いです。環境にやさしく健康的な食事をしたいが、毎日そんなに気をつけている人は現在ではまだまだ少ないのです。消費者が少ないとマーケットが小さすぎて商いとしては苦しい戦いになります。こうなると必然的に利益を確保するために価格を上げざるを得ない。価格を上げればますます売れない……という負のスパイラルに陥ります。
さらに言えば、消費者は自分で自身の課題に気がついていません。僕やあなたもそうでしたが、スマホが登場するまでスマホの必要性を感じていたでしょうか。スマホを提示されて初めて、その必要性に気がついたのではないでしょうか。
アンケートを取るなとは言いませんが、その情報をどのように分析するのかは熟慮しなければいけません。

最初は「同じようなものを見つける」

僕はアンケートに対してはかなり懐疑的です。実際、あまり役に立たないと思っています。
では、一体どのような方法でマーケット(市場)があるのか、すなわち消費者に求められる可能性があるのかを調べていけばよいでしょうか。
まず、同じようなものがあるかリサーチします。たとえば「味の濃いトマト」とブランディングしたとします。世の中に他に味の濃いトマトというブランドで販売している商品はないか? と探します。多分、あるはずです。あれば「ああ、もう先に誰かがやってしまっている」と落ち込むのではなく、逆に「おお、マーケット(市場)があるぞ」と喜ぶべきです。
そして次に考えるのが「ではそのマーケット(市場)に、どのような売り込み方をすればシェアを取れるのか?」です。先に味の濃いトマトで売っている人たちの中で、後発なのに同じように「味が濃いです」だけでは独自性が出ません。ブランドは「味が濃い」でいいですが、伝え方、見せ方を変えていきます。

⑥-1

「シェアの獲得」という目線で考える

たとえば味が濃いということは旨味も強いと思います。そこで「旨味が詰まったトマト」というふうに変えてみる。味が濃いというのはどういう状況? 味が濃いとどうなるの? と深堀りしていけば、いろいろな伝え方、見せ方が考えられます。すでに「味が濃いトマトは求められている」というマーケット(市場)がある場合が、実は最も売り込んでいきやすいのです。
逆にまったくマーケット(市場)がなかったとしたら、どうでしょう。これはなかなか厳しいです。マーケット(市場)を作るというよりは、文化を作ることに近いかもしれません。大変ですが、成功すれば独占はできます。しかし、そうやってマーケット(市場)を築いたとしても、どんどん新しいブランドが必ず参入し追いかけてきます。
どちらを攻めるかはあなたの経営判断になりますが、どちらにせよ一人ではマーケット(市場)になりません。マーケット(市場)にはたくさんのプレイヤーが必要なのです。他のプレイヤーがいると理解しその中でいかにシェアを獲得できるかを考えましょう。

他者の商品には情報が詰まっている

他者の作ったものをまったく食べたことがない、という方が本当に多いと感じます。自分でたくさん作っているのでわざわざ買ってまで食べない、という理由もわからなくはないです。しかし、それはあなた個人のお話であって、農園としてはダメです。
他者のものを買って何を調べるのかというと、味、見せ方、伝え方、届け方など、あなたがやろうとしていること、またはすでに行っていること、すべてを見ることができます。味であれば「糖度が高い」「旨味が強い」など違いがわかります。見せ方であれば「すごく印象的なロゴマークだ」「農園・商品の特徴がわかりやすい」とブランドが見えます。伝え方であれば「すごいキャッチコピーだな」「この農園はこういった消費者に売りたいのだな」などマーケティングが見えます。届け方であれば「発送用はこんな梱包をしているのか」「このパッケージはこの色だから売り場で目立っていたのか」とデザインが見えます。このように情報がぎっしりと詰まっているのです。
あなたの食卓の一品に加えるために買うのではなく、あくまでリサーチ(調査)としてぜひ買って、取り寄せて、食べてみてください。ネットで検索しただけでは絶対にわかりません。

⑥-2

「売り場」は、情報の宝庫

あなたの商品がどう並んでいるのか? またライバルの商品はどう並んでいるのか? いくらぐらいなのか? どんな商品がよく売れているのか? どんな人が買い物に来るのか? POP、照明、棚、そして店の雰囲気など、すべての答えが売り場にあります。
あなたはあなたの商品がどんなふうに売り場に並んでいるのかを見たことがありますか? 産直市場や道の駅などなら自身で売り場の棚に並べることもできるかと思います。そのときについでに売り場を見ている、という方もいらっしゃるかもしれません。また、1日中は無理だが一番にぎわう午前中ぐらいは売り場に立って観察したことがある、という方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしまだ売り場に立って観察したことがなければ、今すぐにやってみてください。
その際、1つ注意点があります。ただぼーっと売り場に立つのではなく、何か課題を設定し観察してみてください。たとえば「トマトはどんな品種が売れるのかリサーチする」「玉ねぎは何と一緒に買われるのかリサーチする」「リンゴはどんなシールを貼ったら手に取ってもらえるのかリサーチする」などです。

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