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農作物のブランド化は、こう考えれば難しくない! ポイントは「どう思い出してもらうか」と「独自の価値の約束」

農作物のブランド化は、こう考えれば難しくない! ポイントは「どう思い出してもらうか」と「独自の価値の約束」

ブランドをつくるなんて、「うちには無理」と思っていませんか? 農業専門のデザイン会社・株式会社はりまぜデザイン代表の角田誠(つのだまこと)さんは、「ブランドとはイコール高級品ではなく、消費者に価値を約束するもの」だといいます。とはいえ、ときには価格を上げることにもつながるブランディング。その考え方と注意事項について、角田さんが執筆した書籍『農家のための売る技術 100 農業特化「ブランディング×マーケティング×デザイン」のコツ』(かんき出版)より抜粋して紹介します。

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「ブランド=高級品」は思い込み

「ブランド」と聞くと大抵の方は今でも「高級品」や「ラグジュアリー」と想像するのではないでしょうか。それにより「うちのような小さい農園には関係ない」「普通の慣行農法で作ったものだからブランディングなんてできない」と考えてしまう方が多いです。でも、はたして本当にそうでしょうか? ガリガリ君やうまい棒、無印良品など、手頃な価格帯のブランドもありますよね。 ブランドの本来の役割は、「高級品だ!」とアピールすることではありません。あなたがブランディングしたい農園や商品は、一生に一度しか買わないような高級品でしょうか? そうではないはずです。 ブランドの本来の役割は「消費者に思い出してもらうこと」です。あなたが販売するその売り場で最初に思い出してもらえるか? これが重要です。

ブランドは「思い出してもらう」のが役割

あなたは最近食べたトマトの商品名や生産者名を思い出せますか? 申し訳ないですが僕は思い出せません。 「美味しいものを作っているから絶対覚えてくれているはずだ」と作り手は思ってしまいます。もちろん高品質なものを作ることは大切です。ブランドの中心はあくまでプロダクト(商品)です。 しかし、あなたが「いいものだ」と思っていても、それを消費者が覚えているとは限らないのです。思い出せないものはその消費者にとってはこの世に存在しないのと同じです。 では、質問を変えましょう。「一番有名なハンバーガーショップは?」 多分あなたの頭の中には、マクドナルドという名前やハンバーガーやポテト、そしてゴールデンアーチと呼ばれる「M」字型のロゴマークが浮かんだと思います。 想像力豊かな人であれば、ポテトが揚がったあのアラーム音と、揚げたてのいい匂いまでしてきたのではないでしょうか。これもマクドナルドが意図して「思い出してもらう」ために仕掛けているものだと思います。ブランディングが成功しているからこそ、マクドナルドは最初にあなたの頭の中に浮かんだのです。 このように、あなたの農園やあなたの商品を最初に思い出してもらうためには、ブランドが必要なのです。

ブランドは「消費者との約束」

消費者はブランドを思い出す場合、それ単体では思い出しません。たとえば「Apple」と聞いてどう思いますか? 「革新的」「高品質」「洗練されている」などが思い浮かぶと思います。これはApple自身が消費者に対してそのようなブランディングをしているからです。 そんなAppleから、急に新しさがまったくない野暮ったい商品が出たらどう思うでしょうか? Appleらしくない、と思うだけならいいですが「もうAppleはだめだな」と評価が急落し消費者は離れていくでしょう。つまりブランドとは消費者との約束事、もっと強く言うと、決して破ってはいけない「私たちはあなたに対して、こういう特徴や独自性を提供する組織(商品)です」という宣言であって、消費者との契約なのです。

ブランディングをしたら、「やってはいけないこと」

あなたが「濃厚な味」を売りにしているトマト農園だとします。消費者の頭の中に「○○農園さんのトマトはいつも濃厚で美味しい。このトマトを食べたらもう他のトマトは食べられない!」とブランディングできていたとします。POPにも「うちのトマトは濃厚さがウリだ!」と表記しています。 あるとき、ハウスを増床し従業員も増やしたことで新しい品種を作り始めました。その品種はたくさん量が取れ、育てやすく利益幅も大きい。しかし今まで主力にしてきた品種に比べてかなり味がスッキリしている。「味は濃くはないがこれはこれで美味しい。よし売ってみるか」と売り始めます。そのトマトを消費者は「あ、いつもの○○農園さんのトマトだ」と買って食べます。そうすると「ん? 味が薄い……」とがっかり。消費者は「濃厚な味のトマト」を求めて「○○農園のトマト」を買っているのに、「スッキリ味のトマト」では約束が違うからです。 こうなってしまったら手遅れです。「味が落ちた」「まずくなった」と消費者は離れていってしまいます。もちろんPOPなどで「いつもと違う品種です! 味がスッキリなトマトです!」と表記すれば消費者に認知されることでしょう。しかし「○○農園=濃厚味のトマト」というブランドが確立しているのであれば、注意が必要です。

ブランドの約束は必ず守る

これはブランドストレッチという考え方です。ブランドを展開していく場合、マスターブランドに傷がつかないよう細心の注意が必要です。濃厚が一番美味しい、と自信を持って行ってきたブランドなのにスッキリ味を出すということは、今まで大切にしてきた濃厚味のトマトを否定することにもなりかねません。 これは、新しい品種を作付けしなくても、同じようなことが起きます。農産物は収穫時期のタイミングや諸条件で味が安定しません。「ちょっといつもより味がのっていないが、これぐらいならいいか」と出してしまうと、「あれ、いつもと違う」と消費者は離れていきます。 厳しいようですが、「味」をブランドの中核に設定した場合は絶対に「味」を守り続けないと、一瞬で消費者は離れます。弊社のお客さまの中には「味がのらない時期は出荷しない」と厳しい経営判断をされている農園もあります。これはブランドとは約束なのだ、としっかり認識しているからです。

「安くしないと売れない」は思い込み

農業界でのブランディングのゴール、つまり目的は、「価格ではなく価値で売る」という1点につきます。 農産物はとにかく「安くて量が多い」ことが望まれてきました。もちろんこれも重要です。しかし消費者が求めているのは本当に「安さと量」でしょうか? 以前、イチゴジャムのデザインを作成したときの話です。大中小の3サイズを作りました。売り場に並べ販売が開始されると、一番売れたのは小サイズでした。小と大では明らかに大がお得です。量も多く安い。しかし、フレッシュなものをフレッシュなうちに食べたいと考えた消費者は、小を手に取ったのだと思います。 作り手は安くて大量じゃないと売れない、と思い込んでいますが、そうではありません。消費者をしっかり観察し、本当は何を求めているのか? をきちんと理解できれば、価格で勝負しなくてもよいのです。

情報を載せると価格も上げやすい

安くしないと売れない! とぼやいている人は、自分の売り方をもう一度見直してみてください。もしかすると、値札しか貼っていないのではないでしょうか。 たとえば大玉トマト2個で600円だとします。もし値札しか情報がなければ、消費者はどう思うでしょうか。多分僕なら「高い!」と思ってしまいます。それはなぜか? そのトマトの特徴の価値がわからないからです。なぜ600円もするのか、その価格の理由をしっかり伝えることが重要です。 たとえば「食べ頃ギリギリまで樹上完熟させているので数量が少ない」がブランドの特徴や独自性であれば、それを表すネーミング、ロゴマーク、パッケージを考えます。そしてそれをさらに知ってもらうために、POPも設置しアピールします。

消費者は「情報」を欲しています。ブランディングとは「消費者に価値を伝えるために良い関係を作る」ことにあるのです。人間関係も同じですが、まったくしゃべらない人とは仲良くなれませんよね。しっかりと会話し、コミュニケーションを取れる人を好きになります。 これはブランドでも同じです。そしてコミュニケーションを取ることで「知っている人」になる。ここまでくれば、トマト2個で1000円でも売れるかもしれません。その理由は、知っている人がとても真剣に作ったトマトだからです。 さあ、どんどん知ってもらうためにブランディングをしていきましょう!

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