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コメの増産・規模拡大に向け、個人経営から株式会社に衣替え。水管理、生産管理の省力化の手立ては

kumano_takafumi

ライター:

コメの増産・規模拡大に向け、個人経営から株式会社に衣替え。水管理、生産管理の省力化の手立ては

千葉県茂原市にある約50㏊水田で稲作を行う株式会社光国農園。代表の光橋国郎(みつはし・くにお)さんは今年、これまでの個人経営体を法人化し、株式会社へ衣替えした。資金を調達しやすい経営体にして有能な人材を確保しなければ、地域農業の受け皿になり得ないと判断したからだ。これまで家族のほか、臨時に雇った人で330筆にも及ぶ水田を耕作管理してきたが、否応なしに耕作面積が拡大する現状に対応するためには、「風通しの良い組織」をつくった上で生産管理できるような体制を築かなくてはならないと語る。

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耕作不利な条件下でも、生産量確保へ工夫


光国農園の所在地である茂原市六ツ野は古くから稲作が行われてきた地域で、その歴史は徳川吉宗が新田開発を奨励したころから始まる。農園は約300年もの歴史があり、国郎さんは14代目になる。父親の代から機械化・大規模化が進み、市街を挟んだ東西で耕作している。

このうち、西側の圃場はいわゆる谷津田(谷状に広がる水田)で、1筆の面積が小さく奥行き50mほどで作業効率が良いとは言えない。また、東側は沼地だったこともあって、排水に難があり収量が上がらない要因のひとつだった。そこで同農園では、弾丸施工機で圃場に暗渠をつくり、水はけをスムーズにしている。これにより水管理を容易にして、単位面積の生産量アップを見込んでいる。

光橋さんと弾丸施工機

年々厳しさを増す人材確保に向けて

作業効率を上げるためには圃場の面積を広げる必要がある。そこでレーザーレベラーの導入を予定しており、暗渠と合筆とレベラーを組み合わせて、スムーズな圃場管理を目指すという。それでも、団塊世代の引退などを見越して地域農業の受け皿になるためには、より多くの面積を耕作し、生産管理できるような体制を築かなくてはならない。

そのためにも人材の確保は急務だが、これに関して国郎さんには少し苦い経験がある。これまでオペレーター2名を臨時雇用していたが、資金繰りに難航したことが発端となり、昨年からその2人は運送業に転職。それ以来、手伝いに来られなくなった。外部からの資金を受けられるよう株式会社化したのはそのためだ。同時にホームページを立ち上げ、求人広告を掲載するなどして新たな労働力を求めている。それと同時に、各地域の柱となる担い手も増やさねばならないと考えている。

ジャンボタニシに食い尽くされた経験をもとに、もち米を直播栽培

令和7年産で作付けした品種は早生の「ふさおとめ」や中生の「にじのきらめき」。そのほか、もち米を多く作付けしている。もち米品種の主力は「峰の雪もち」で、このほかに直播で「ヒメノモチ」を試験栽培した。

直播を行った水田はジャンボタニシが多くいる水田で、以前、鉄コーティング種子を播いたところジャンボタニシにすべて食い尽くされてしまった経験があるという。このため7年産では畝立て方式の直播にチャレンジし、食害なく栽培できた。収穫後にうるち米とのコンタミ問題が発生したものの、ジャンボタニシ被害が多い地区でも直播が成立することがわかった。来年は夏の盛りに追肥をすれば、さらに収量が上がるという予測のもと、大きめのドローンを購入して追肥を行う計画だという。

水稲以外の作物を栽培することも見込んでおり、換金作物ではスイートコーンや玉ねぎの栽培も候補に挙げている。また、飼料作物やエネルギー作物として「エリアンサス」「ミスカンサス」というススキ科植物を取り寄せて試験栽培している。

西側の山手の水田ではイノシシが出没して沼田場を作るなどして害をなすため、そうした地区にこのエリアンサスを植えてイノシシの水田への侵入を防ぎつつ、それを収穫して飼料などにする計画。また、エリアンサスはバイオマス原料にもなるのでそうした用途にも期待している。

試験栽培しているエリアンサス

大手すしチェーン使用増方針の「にじのきらめき」に絞る

来年のコメ作りについては、作付け品種を絞る方針で、うるち米は「にじのきらめき」を多く作付けすることにしている。これは大手回転寿司チェーンが「にじのきらめき」の使用量を増やす方針としているなど、飲食業での需要増に対応するためだ。

もち米は14年ほど前から加工用もち米に取り組んでおり、「大地の恵み」という県内の有志の農家が立ち上げた株式会社が一括して買い取る。急に面積が増えても種子や肥料、農薬の購入などが相談できるほか、会社で低温倉庫を所有し、長期保管して企業と販売交渉している点などでメリットがある。繁忙期の運送面では、倉庫責任者と都度相談し、ライスセンターでフレコンが溜まるたびに大型車で発送している。経営に関する相談が気軽にできることも大きく、年度についてのさまざまな情報が手に入っているという。

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水管理の省力化と干ばつ対応の手段としては、田植え後の水分保持剤の施用を考えている。千葉県の外房は大河川が少なく、用水は両総用水という利根川から莫大な電気で汲み上げて送水しているので掛け流すようなことは難しく、用水が止まる中干しの6月中旬から2週間、近年は雨が降らないためだ。今は小さい圃場が多く、用水路も小さな開水路のため自動給水機も導入しにくい。地区によっては排水路が老朽化しており、喫緊の対応が必要になっている。これを放置して崩れてしまうと「この地区は沼に戻ってしまう」という。

市議選に立候補して一次産業の価値を問う

千葉県は産地交付金の配分額が全国でも極めて少なく、このことが圃場整備の遅れの原因になっており、さらには農業のスマート化の遅れにもなってしまうと国郎さんは危惧している。また、国郎さんは米価が大きく下がることを想定しており、価格が下がった場合のダメージコントロールとして先物市場でのリスクヘッジ手法にも関心を寄せている。

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今年米価がさらに大きく上がったことにより、利子の高い借入金を返済したうえ、新たな設備投資が可能になったことで展望が開けてきた。だが行政に頼らなくては出来ないこともあることから、2年前に思い切って市議選補選へ立候補した。そこで訴えたことは2つある。

一つは、農業の高齢化に対応し、若者が働きやすい環境を作ること。二つ目が、人は宝であり、個性のある人がいる地域にしようということだ。 また、茂原市の特産品をつくり世に送り出したいという展望も語ってくれた。

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