きのことは?

きのこ類は、植物ではなく「菌類」に分類される食材です。自然界では、樹木と共生したり、倒木や落ち葉などを分解したりしながら生育しています。私たちが「きのこ」と呼んでいるのは、その菌がつくる器官の一部で、植物でいえば果実や花にあたる部分です。
日本は温暖で降水量に恵まれ、国土の約3分の2を森林が占めることから、きのこの生育に適しています。きのこは山林や里山の環境と深く関わりながら利用されてきました。
一方で、現在は人工栽培技術も発達し、さまざまなきのこが一年を通して手に入りやすくなっています。毎日の食卓で身近な食材でありながら、種類によって見た目や香り、食感、味わいが異なる点も、きのこの魅力です。
きのこの分類と種類
きのこ類には、いくつかの分類のしかたがあります。菌の性質に着目すると、生きた樹木の根と共生する菌根菌(きんこんきん)、生きた植物に寄生する寄生菌、倒木や落ち葉などを分解して育つ腐生菌(ふせいきん)に大きく分けられます。食用きのこの多くは腐生菌で、まつたけは菌根菌の代表例として知られています。
栽培方法によって分けることもできます。原木栽培(げんぼくさいばい)は、原木に種菌を植え付けて育てる方法で、しいたけ、なめこ、ひらたけなどで一部行われています。
一方、菌床栽培(きんしょうさいばい)は、おがくずなどを固めた培地に種菌を植え付けて育てる方法で、えのきたけ、ぶなしめじ、エリンギなど、多くの食用きのこで用いられています。
本記事では、食味や調理特性をイメージしやすい見た目の特徴に着目して分類しました。細長いもの、肉厚なもの、ひだが扇状に広がるものなど、形の違いから見ていくと、それぞれの持ち味もつかみやすくなります。
きのこ類の栄養
きのこ類は水分が多く、エネルギー量が比較的少ない一方で、食物繊維やビタミン、ミネラルをバランスよく含む食材です。中でも注目したいのがビタミンDで、きのこに含まれるエルゴステロールが紫外線に当たることで生じる栄養素です。カルシウムの吸収を助けるため、骨の健康に役立つ成分といえます。カリウム、リンも含み、含有量は種類によって異なります。
栄養面と同様に、料理での存在感も見逃せません。きのこ類にはグルタミン酸やグアニル酸といううまみ成分が含まれており、しいたけは乾燥・加熱によってうまみがより引き立つことでも知られています。毎日の料理に取り入れることで、栄養とおいしさを同時に底上げできるのが、きのこの魅力です。
細長・小房タイプ
細長い柄や小ぶりの傘が集まって育つきのこは、火の通りが早く、日々の料理に取り入れやすいです。シャキシャキ、つるり、コリッとそれぞれに異なる食感と、汁物から炒め物まで幅広く使える手軽さが持ち味です。
えのきたけ

野生では茶色く傘が大きいきのこですが、昭和に暗室での菌床栽培が広まったことで、白く細長い姿が定着しました。クセが少なく、シャキシャキとした食感が持ち味で、近年流通しているブラウンタイプは風味がやや強めです。うまみ成分のグルタミン酸を含み、さっと炒めると歯ざわりが生き、煮るととろみが出やすく、しょうゆと砂糖で煮た「なめたけ」でもおなじみです。リラックス効果が期待できるギャバを豊富に含む点も注目されています。
ぶなしめじ

人工栽培の普及により、一年を通して手に入りやすい定番きのこのひとつです。小ぶりの傘が株立ち状につき、クセのない味わいとほどよい歯ごたえが持ち味で、グルタミン酸を中心としたうまみ成分を含みます。加熱すると香りが立ち、炒め物や汁物、炊き込みご飯、パスタなど幅広い料理に使いやすいのも魅力です。近年は白く品種改良されたものも販売されており、甘みがあってよりなめらかな食感を楽しめます。
なめこ

独特のぬめりが大きな特徴で、つるりとした口当たりとなめらかな食感が持ち味です。グルタミン酸を含み、みそ汁やなめこおろしに加えると、ぬめりがやさしいまとまりをもたらしながらうまみも添えてくれます。市販品は小粒が中心ですが、近年は傘の大きなジャンボなめこも出回っており、炒め物や天ぷらなど食感を生かす料理にも向きます。
はたけしめじ

栽培が難しいとされてきましたが、現在は各地で品種開発が進み、市場にも出回るようになりました。クセがなく、グルタミン酸によるしっかりとしたうまみとコリッとした強い歯ごたえが持ち味です。加熱しても縮みにくく食感が残りやすいため、炒め物や鍋、炊き込みご飯などで存在感を発揮します。
肉厚タイプ
傘や軸に厚みがあり、食べ応えを感じやすいのが肉厚タイプのきのこです。うまみをしっかり持つものが多く、焼く、炒める、煮るといったシンプルな調理でも持ち味が引き立ちます。和食から洋食まで、料理の主役を張れる存在感が魅力です。
しいたけ

江戸時代に栽培が始まったとされる、日本を代表するきのこです。グルタミン酸とグアニル酸を豊富に含み、うまみが強く、焼くと香りが立ち、煮るとだしのような深みが出ます。乾燥させることでグアニル酸がさらに増し、うまみと香りがより一層引き立つのも特徴です。焼き物、煮物、鍋物、含め煮など幅広い料理で活躍し、傘が開き切らないうちに収穫した肉厚の「どんこ」は乾しいたけの高級品として知られています。
エリンギ

太くまっすぐな軸と小さめの傘が特徴で、コリコリ、しこしことした弾力ある食感が持ち味です。日本では1990年代以降に人工栽培で普及しました。クセのない味わいの中にグルタミン酸由来のうまみがあり、縦に裂けば繊維に沿った歯ごたえが、輪切りにすれば見た目の存在感が楽しめます。炒め物やソテー、グリルなど、シンプルな調理で持ち味が引き立ちます。
マッシュルーム

世界中で広く栽培されるきのこで、和名はツクリタケです。グルタミン酸を豊富に含み、きのこ類の中では珍しく生食でき、サラダでは軽やかな風味を、加熱するとやさしいうまみの広がりを楽しめます。ホワイト種は上品な味わい、ブラウン種はより濃い香りと風味が特徴で、アヒージョやスープ、クリーム煮など洋風料理によく合います。
扇状タイプ
傘が扇のように広がり、重なり合う姿が食卓に彩りを添えるタイプです。手で裂きやすく、加熱すると香りとうまみが立ちやすいものが多く、炒め物や汁物、炊き込みご飯、天ぷらなど幅広い料理で個性を発揮します
まいたけ

山で見つけると舞うほどうれしいことから名が付いたともいわれる、香り豊かなきのこです。ひだのある傘が幾重にも重なって広がる姿が特徴で、グルタミン酸とグアニル酸を含み、加熱すると強いうまみが引き立ちます。手で裂きやすく、シャキッとした歯ごたえも楽しめるため、天ぷらや炒め物、炊き込みご飯、汁物などによく合います。白まいたけは繊細で淡泊な味わいで、煮汁に色が出にくいためクリーム煮などにも向きます。
ひらたけ

姿が牡蠣(かき)に似ていることから、英語圏ではオイスターマッシュルームと呼ばれています。うちわのような傘が重なってつき、やわらかさの中にほどよい弾力があります。グルタミン酸を含み、だしのようなうまみが感じられるため、炒め物や鍋物、スープ、煮びたしなど幅広い料理に使いやすく、ほかの食材とも合わせやすいきのこです。
あわびたけ

ひらたけに似た扇形のきのこで、傘や軸に厚みがあります。名前の通りあわびを思わせるコリコリとした歯ごたえが最大の持ち味で、加熱しても食感が残りやすいのが特徴です。クセが少なくグルタミン酸由来のうまみがあり、ソテーや炒め物、天ぷら、汁物など幅広い料理に食感のアクセントを加えてくれます。
たもぎたけ

鮮やかな黄色から黄褐色の傘が重なって広がる、見た目にも印象的なきのこです。グルタミン酸を含み、だしがよく出るため汁物や炊き込みご飯との相性が抜群です。歯切れのよい食感は加熱しても残りやすく、炒め物や天ぷらにも向きます。料理に彩りを添えられるのも、このきのこならではの魅力です。
不定形タイプ
個性的な形が目を引く不定形タイプは、見た目だけでなく食感にも際立った個性があります。ぷりぷり、コリコリ、シャキシャキと種類によって異なる食感は、炒め物や汁物、鍋物に加えるだけで料理にリズムと存在感をもたらしてくれます。
きくらげ

耳のような形とつやのある見た目が特徴で、くらげに似た食感からその名が付いたとされます。国内で栽培・流通している多くは肉厚な「あらげきくらげ」で、生はぷりぷり、乾燥品はコリコリと、食感の違いも楽しめます。グルタミン酸を含み、炒め物や中華スープ、卵料理との相性がよく、乾燥品は水で戻して和え物やラーメンの具にも使われます。白きくらげはツルツルとした食感で中華デザートにも使われるなど、種類によって用途の幅が広いきのこです。
はなびらたけ

白からクリーム色のひだが幾重にも重なり、花びらのように見える個性的な姿が印象的です。天然ものは高山地帯に自生しますが、近年は人工栽培が進み市場にも出回るようになりました。クセが少なくコリコリ、シャキシャキとした食感が持ち味で、スープや鍋物では見た目の華やかさとともにうまみも楽しめます。炒め物や天ぷらにも向き、料理に彩りを添えたいときに重宝するきのこです。
ふくろたけ

若い子実体が袋に包まれたような卵形の姿が特徴で、その名が付いたきのこです。世界三大栽培きのこの一つとされ、高温多湿を好むため主産地は東南アジアにあります。日本での栽培は限定的ですが、国内でも生産に取り組む農園があり、国産品も一部流通しています。グルタミン酸を含み、やわらかな食感と穏やかなうまみがあり、傘が開く前の状態で炒め物やスープ、煮込み料理などに使われます。
まつたけ

芳醇(ほうじゅん)な香りが最大の持ち味で、秋の味覚として古くから親しまれてきた高級きのこです。アカマツなどの根と共生して育つ菌根菌で人工栽培が難しく、国産は希少です。うまみ成分のグルタミン酸を含みますが、このきのこの真骨頂はなんといっても香りにあり、傘が開き切る前のものほど香りが強いとされています。焼きまつたけや土瓶蒸し、吸い物、炊き込みご飯など、香りを存分に生かす料理で味わいたいきのこです。
きのこの選び方と保存方法

きのこは種類によって見た目や食感、香りが異なりますが、選び方や保存方法には共通するポイントもあります。ここでは、日々の買い物や調理で役立つ基本をまとめました。状態のよいものを選び、種類に合った方法で保存することで、きのこの持ち味をより楽しみやすくなります。
選び方
全体に張りがあり、みずみずしさを感じられるものを選ぶのが基本です。傘が開きすぎておらず、軸がしっかりしているものは、食感もよい傾向があります。変色や傷みが目立つもの、乾燥しすぎているものは避けたほうがよいでしょう。なめこはぬめりが保たれているか、しいたけは傘に厚みがあるか、マッシュルームは表面がなめらかかなど、種類ごとの特徴を見ることも大切です。
保存方法
きのこは水分がつくと傷みやすくなるため、洗ってから保存するのではなく、気になる汚れを軽く拭き取る程度にします。冷蔵保存が基本で、湿気がこもらないようキッチンペーパーで包み、紙袋や口をゆるく閉じたポリ袋に入れると保存しやすくなります。使い切れない場合は、使いやすい大きさにほぐしたり切ったりして、生のまま冷凍しておく方法も便利です。また、しいたけのように乾燥させることで、保存性を高めながら、うまみの変化を楽しめるきのこもあります。乾燥きのこは、湿気を避けた風通しのよい場所で保存します。
うまみと食感でおいしさ広がる

同じ「きのこ」でも、種類によって香り、食感、うまみの出方はそれぞれ異なります。二種類以上を組み合わせれば、うまみの相乗効果や食感の層も生まれ、いつもの料理がひと味変わります。まずはよく使うきのこの隣に、今日は一種類だけ新しいものを加えてみてください。その小さな選択が、食卓の楽しみを広げる入り口になるはずです。

















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