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民間が育種した注目のブドウ新品種「黄妃」「紅緋」に迫る!

少年B

ライター:

民間が育種した注目のブドウ新品種「黄妃」「紅緋」に迫る!

世界中に数多くの品種が存在するブドウ。毎年のように、交配によって新たな品種が生まれています。2025年秋、ブドウ苗木商最大手・植原葡萄研究所のカタログに、新たに3つの新品種が追加されました。そのうちの2つ、「黄妃(おうひ)」と「紅緋(こうひ)」は長野県にある飯塚果樹園が育種した品種です。新たな品種は、品種特性や栽培性が未知数なことが多く、多くの農家は試行錯誤しながら、手探りで栽培をしなくてはいけません。積極的に情報を公開している公的機関の品種ならまだしも、民間による育種であればなおさらです。そこで、今回はブドウマニアのライター・少年Bが育成元の飯塚果樹園の園主・高橋恵太(たかはし・けいた)さんにお話をうかがい、新品種の「黄妃」と「紅緋」や飯塚果樹園が育種を志したきっかけ、そして今後の新品種について迫ります!

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新品種「黄妃」はどんなブドウ?

──黄妃とはいったいどういう品種ですか?

見た目通り、黄色くてきれいな品種です。ジューシーで、さわやかな香りがします。さっぱりしているので、夏場にパクパクおいしく食べられるブドウだと思っています。

──命名の由来は何ですか?

「ごはんジャパン」という番組で的場浩司さんがいらして、名前をつけてくれたんです。

飯塚果樹園が育成した「黄妃」

──そんな理由だったんですね。では黄妃の長所はどういったところでしょうか。

何といっても香りがいいですね。熟してくると、畑のなかでも香ってくるぐらいです。ハクビシンもこの香りを好むのか、「シャインマスカット」よりハクビシンの被害が多いのが玉にキズですが……。

それから皮切れがよくて、小さい子どもでも食べやすいのも長所です。裂果は全くないわけではないんですが、裂果しづらいので栽培しやすいと思います。

──裂果しづらいのは嬉しいですね。緑ではなく「黄色」とのことですが、色付きに関してはいかがですか?

着色に困ることはあんまりないですね。ただ、均一にきれいな黄色にするためには、棚を明るくする必要があります。暗いところだと黄色にならず、緑色で終わってしまう場合もあるので。

──栽培特性はどうでしょうか。

栽培性は「マスカ・サーティーン」に近いです。副梢(ふくしょう:わき芽が伸びた枝)が強くて花芽分化がいいので、シャインマスカットと比べると摘粒が少し大変かもしれません。あと、落蕾症(らくらいしょう:花ぶるい)がたまに起こります。

樹勢が強すぎると芽が枯れてしまうので、樹勢を落ち着かせて作るといいと思います。開花時期はシャインマスカットと同等か少し遅いぐらいですね。

──生食用ブドウの栽培には長梢栽培・短梢栽培がありますが、どちらの方が向くとかはありますか?

房が暴れる可能性があるので、長梢のほうが向く気がします。樹勢は弱く保っておいたほうがいいですね。

飯塚果樹園の高橋さん(中央)と飯塚さん(右)。左は筆者

──言いづらいかもしれませんが、短所はありますか?

シャインマスカットと比べると副梢管理が手間ですね……。副梢に房を持ってくるので、2番果がたくさん出ます。それから、摘粒が手間です。最近の品種でいうと、マスカ・サーティーン並みにつくので、作業が遅れると大変です。

あとは先ほど言った芽枯れの問題と、若木の頃は果皮のかすれが気になります。シャインマスカットのかすれより、もうちょっとひどい感じですね。シャインマスカットの親の「白南」という品種はかすれがひどかったと聞いたことがありますが、もしかしたらその血を引いているのかもしれませんね。

──なるほど……。解決策はありますか?

ウチの木は8年生なんですが、かすれは木が大きくなるにつれて出なくなってきました。

──そんなことがあるんですね!

粒重も最初は8~10グラムだったんですが、2段階に大きく化けました。

──化けるというと?

粒が一気に大きくなったんです。まず、4年目で粒重が13グラムぐらいになりました。おっ、少し大きくなったなと思ったら、7年目ごろに15~16グラム程度にまで大きくなったんです。

──1.5倍から2倍ぐらいにまで大粒化したんですね。

それにともなって、房重も最初は450グラム程度を目安にしていたんですが、今では600~700グラムになっています。やや晩成型の品種なので、どうか長い目で見てあげて欲しいですね。

新品種「紅緋」はどんなブドウ?

──では、次は紅緋についてお聞きします。これも命名はどなたかが?

いや、紅緋は我々でつけました。色が赤くて、昔の「紅緋(べにひ)色」に近いということで。

飯塚果樹園が育成した「紅緋」

──黄妃とよく似た名前ではありますが、由来はまったく違うんですね。紅緋はどんな品種ですか?

さわやかな香りがあるのが特徴で、果肉は柔らかくて、少しジュレっぽい食感のブドウです。バランスのいい酸味と、食感が特徴的な品種ですね。

粒はやや小さいですが、元長野県果樹試験場の柴先生に見てもらった際に「この赤はきれいだね」と褒めていただいたので、選抜で残しました。仕上がったときの色は本当に素晴らしいですよ。

──栽培特性はどうですか?

樹勢が弱いというわけじゃないんですが、葉が小さいです。それから枝が細くて、副梢が出やすい。でも副梢は細いので、慌てて副梢整理をしなくても大丈夫です。

摘粒自体は楽ですね。1車に10粒ぐらいつくんですが、ハサミは入りやすいし、自然に粒が埋まってきます。

──摘粒が楽なのは嬉しいですね。

基本的には晩生の品種なんですが、あまり放っておくと房がガチガチになるので、摘粒が大変になってしまいます。摘粒は適期にやるようにしてください。

晩生なので水回りが遅く、時期によっては石ブドウ(未熟粒)のように見える時期がありますが、待てば大丈夫です。

飯塚果樹園の紅緋(撮影時はまだ完全に着色していない)

──赤系品種ということで、着色管理はいかがですか?

後半、着色管理する時期には棚を明るくしてあげる必要がありますね。反射シートはかけたほうがいいと思いますが、他の赤系と同じようにしていれば問題ありません。

大房になると着色には苦労するので、房重でいうと500~600グラムを目指したほうがいいですね。段数でいうと5段ぐらいが目安です。大きくなりすぎちゃうので。

──5段というと、かなりコンパクトな房になりますね。

この品種も7年目までは小さかったんですが、8年目になって急に大きくなったんですよ。小さい房を作ろうと思っても大房になるので、年数に応じて房の作り方は気を付けたほうがいいかもしれません。

──紅緋も化けるんですね。栽培上の課題や問題点はありますか?

少し縮果症が出るのと、裂果は収穫が遅れると首根っこに出る場合があります。ただ、裂果は若木のころはよく出ましたが、枝が強くなるにしたがって徐々に少なくなる傾向にあります。

あとは、ウチでは黄妃・紅緋ともに露地では作っていないので、露地栽培に関しては未知数です。紅緋に関しては短梢栽培も試していないので、欠点というか未知の部分が多いかもしれません。

──ありがとうございます。

紅緋は、うちでは「気を遣わなくてもいい赤品種」という位置づけで栽培しているので、比較的栽培はしやすいと思います。可愛がっていただけたら嬉しいですね。

飯塚さんが育種を志したきっかけとは

──では、ここで高橋さんの義父で、飯塚果樹園会長の飯塚芳幸(いいづか・よしゆき)さんにもお話をうかがってみたいと思います。飯塚さんは元々栽培技術の高さに定評のある農家さんですが、なぜ育種を志したんですか?

50歳ぐらいの頃、ブドウを作って生きていくなら、自分の作った品種を世の中に出したいと思ったんですよ。

私も栽培している「アウローラ21」は大粒の素晴らしい赤系品種なんだけど、欠点も多くてね。渋みや着色、裂果、晩腐に弱いとか……その中でも、特に渋みと着色をなんとかしたいという気持ちがあって。

──アウローラ21は、高い栽培技術を持った方だけが入れる「AAA(アリサ・アウローラ・アソシエーション)」というグループのメンバーだけが栽培を許されていますが、確かに皆さま苦労されている印象があります。

90年代当時、あれだけ粒が大きくて食感のいい品種が出たのは驚きでね。何とかしてみんなで作りこなそうと思ったんですよ。いまだに大変だけどね。

だから、何とかして色付きのいい、渋みのないアウローラ21を作ろうという気持ちで育種したのが、最初に世に出た「真沙果(まさか)」という品種なんですよ。

──「まさかこんなブドウができるとは……!」という一言で名前が決まったという真沙果ですね。

そうそう。30グラムぐらいになる大粒でね、あれは最初からデカかったねぇ。

──裂果と渋みはどうでした?

裂果はね、アウローラ21以上だった(笑)。しかも乾燥させると渋みが入るから、裂果を怖がって水を切ると渋くなるという。困ったもんだね。

飯塚果樹園が育成した「真沙果」

──真沙果の苗木は、飯塚果樹園さんで販売しているんですよね。

裂果するから、正直おすすめはしませんよ。でも、もし作りたいという方がいれば、飯塚果樹園まで連絡をいただければ、お話はさせていただきますよ。

──真沙果の栽培のポイントについても、少しだけ聞かせていただけますか?

ウチでは少量多灌水(少量多頻度灌水)で作ってるけど、樹勢が弱い木が裂果する傾向にあるね。だから、樹勢が強いほうが裂果しづらい可能性がある。

長梢よりは短梢に向いている品種で、慌てて着色管理に入らないのがポイントかなぁと思うね。

──少し脱線してしまいましたが、今回苗木が販売された黄妃と紅緋は真沙果の子どもなんですよね。

そうだね。真沙果を育成した時にちょうどシャインマスカットが世に出てきたので、じゃあ真沙果とシャインを交配すれば、裂果の少ないマスカット香を持つ品種を作れるんじゃないかなと思って。

交配して、種はいくつまいたかな。60~100粒ぐらいだったと思うけどね、そこから芽が出たのが38個体。一次選抜で残したのが8つ、二次選抜で残したのが、「ゴールドナイト」、「美夕果(みゆか)」、そして今回の黄妃と紅緋の4品種かな。

──100粒から4つも品種が出たんですね。かなり打率が高いような気がします。

一次選抜で残した「姫華」と「ほののか」という品種もあって、その2つは欠点があるけど、見どころもあるので試作中だね。

今後の新品種育成について

──では、再び高橋さんにお聞きします。先ほど話に出た、ゴールドナイトと美夕果は、高級果専店に並ぶ、飯塚果樹園のオリジナル品種ですよね。これらの苗木の販売については予定がありますか?

この2品種は海外での品種登録を申請中です。少なくとも、いま申請を出しているすべての国で取れるまでは出す予定がないですね。

ゴールドナイトにも課題はありますが、美夕果に関してはあまりにも栽培が難しすぎます。1回目のジベ処理の際にサビだらけになるし、気温が一定を超えると数時間のうちに縮果症が出るし……。

──そんなに難しいんですか!

困ったことに味がいいので切れないんですが、正直うちでも割に合わない品種だと思っています。ロスの出る量が半端じゃなくて……。経営的に考えるとハイリスク・ノーリターンなので、親しい農家さんからも「栽培してみたい」という声も聞きますが、美夕果に関しては世には出せないと思います。

──今後、新品種を育成して世に出していくという予定はありますか?

先ほど名前が出たほののかは、粒が大きくてきれいな品種です。樹勢が強いと1粒あたり30グラムぐらいになるんですが、葉に点々が入るのが難点です。光合成能力が低いのかもしれないですね。

今後苗木を販売するとしたら……候補ではありますが、もうちょっと自分たちで試作する必要があるなとも感じています。

──高橋さんが育種した品種もありますよね。

僕のオリジナル品種として、「ノクターン」という黒品種があります。味わい深い品種ですが、落雷症(らくらいしょう)があることや、1回目のジベレリンの反応がよすぎる、房型がなかなかうまく決まらないという欠点があります。

──苗木の販売をする前に、栽培上の欠点を潰していくことが大事ということでしょうか。

世に出すということには大きな責任があるので、やはりある程度の試作を重ねていかないと自信を持って出せないと思います。

まだ発表していない新品種もいくつかありますが、自分たちである程度ちゃんと作って、納得できるようになってから果実や苗木の販売に進んでいく予定です。

──今後も育種は続けていくつもりですか?

そうですね。いまは自分の育成品種とシャインではない品種の交配をしています。ウチでは研修生にも必ず交配をさせているので、研修生が作ったものの中からもいい品種が出てくるかもしれません。

──期待しています。ありがとうございました!

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